アテネ 最期の輝き
内容説明
紀元前4世紀,アレクサンドロス大王の華々しい遠征の蔭で,マケドニアに敗れたアテネはどのように生きていたのか.民主政が終焉しギリシアの時代が幕を閉じるまでのアテネの最後の姿を,政治家・弁論家デモステネスを軸に生き生きと描く.一次史料にもとづいて従来の通説を再検討し,新しい見方を提示する.
■著者からのメッセージ
前5世紀初頭から前338年までのギリシアを,後世の範たるべき一流の時代である「古典期」として捉える見方がすでにローマ時代に成立していたことは,しばしば指摘されている.最盛期である「古典期」のギリシアとは,実は,同時代史料が圧倒的に集中しているアテネの姿であり,「古典期」をギリシアの最盛期とする見方において,ギリシアの栄光とはすなわちアテネの栄光なのである.カイロネイアでの敗北を時期区分の区切りとする捉え方も,ギリシア連合軍の中心となって戦ったアテネがこの敗北をもってマケドニアの覇権下に置かれ「自由」を失った,という認識に大きく影響されている.
しかし,そもそも前338年の敗戦は,「古典期」という栄光の時代に終止符を打つ重要な画期だったのか.そして,その「古典期」を体現するポリスであるアテネにおいて,前338年をもって何かが決定的に変わったのだろうか.
アテネというポリスは,アレクサンドロスの華々しい遠征によって生まれたヘレニズム世界の片隅で,いったいどのように生きていたのか.本書では,2300年以上経てもなお人々をひきつけてやまない不世出の英雄アレクサンドロスという巨大な存在の陰で注目を浴びることが少ない,アレクサンドロス時代のアテネの実相に迫ってみることにしたい.
――「はじめに」より
目次
はじめに
序章――「黄昏のアテネ」に迫る
1 「黄昏のアテネ」とデモステネス
2 「政治家」と「政治グループ」
第1章 決戦へ
1 デモステネスの生きた時代
2 デモステネスの前半生
3 反マケドニアの政治家として
4 「宿敵」アイスキネスとの対立
第2章 敗戦――マケドニアの覇権
1 戦後処理
2 デモステネスの活躍
3 アレクサンドロスの時代の幕開け
4 マケドニアの傘の下で
第3章 対決――「冠の裁判」
1 裁判が始まるまで
2 「弁論家の戦い」
第4章 平穏――嵐の前の静けさ
1 デモステネスの隣人たち
2 アテネ民主政の姿
3 動乱の前ぶれ
第5章 擾乱――ハルパロス事件
1 ハルパロス事件とは
2 事件当時のアテネの情勢
3 ハルパロス裁判
4 裁判の背後の人間模様
第6章 終幕――デモステネスとアテネ民主政の最期
1 民主政アテネの最後の闘い
2 愛国者たちのそれぞれの最期
終 章
1 デモステネスの遺したもの
2 「黄昏」の民主政
史料について/主要参考文献/関連年表
あとがき
著者略歴
澤田典子(さわだ のりこ)
1967年富山県生まれ
東京大学大学院人文社会系研究科博士課程修了
博士(文学)
静岡大学人文学部准教授
専攻,古代ギリシア・マケドニア史
『新版世界各国史17 ギリシア史』(共著,山川出版社)
『古代オリンピック』(共著,岩波新書)
ハリー・サイドボトム『1冊でわかる ギリシャ・ローマの戦争』(共訳,岩波書店)
書評情報
史学雑誌 第119編第7号(2010年7月)
歴史学研究 第853号(2009年5月)
毎日新聞(朝刊) 2008年9月7日
週刊エコノミスト 2008年7月1日号
諸君! 2008年7月号
朝日新聞(朝刊) 2008年5月11日
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