2022年7月24日日曜日

MMT(現代貨幣理論)とエコロジカル経済学に関して。

 
 
むらしん
⁦‪@murashinn‬⁩
MMT(現代貨幣理論)とエコロジカル経済学に関して。海外のMMTerを見ると、環境保全に対しての問題意識もあるように見えます。そこで質問があります。1… - Yahoo!知恵袋 detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_de…
 
2022/07/23 23:11
 
 

MMT(現代貨幣理論)とエコロジカル経済学に関して。
海外のMMTerを見ると、環境保全に対しての問題意識もあるように見えます。
そこで質問があります。

1.MMTerは気候変動などの環境問題に対してどのようなアプローチや制度設計を考えているのでしょうか。

2.また、環境経済学(エコロジカル経済学とは違う)には批判的なのでしょうか?

3.環境経済学で示されるような、経済的手法を使った環境保全には肯定的なのでしょうか?それとも規制的手法の方が好まれてるのでしょうか?

ric********さん
2022/7/23 19:25
海外のMMTには環境問題に対しては大量の論文・W.P.が出版されていますけれど(W.P.を「出版」というか言わないかはともかくとして)、おいらの知る範囲ではほとんどすべてJGPがらみですね。
勿論、環境保全などは技術的に高度な課題も含まれている一方、JGPで提供される労働力の多くは直接現場における労務提供等が中心となる。ところがそうするとJGP以外にも環境保全のためにしばしば大きな政府支出が必要となるケースもある。そしてその結果、民間・海外部門と資源をめぐる対立が生じる(インフレが発生する)ことも想定できる。この場合にはJGPはインフレ調整機能を果たせないわけで、こうした場合にどのような手法がとられるべきか、というのも課題になる。その場合、増税というのも一つの手法ですけれど、MMT派特にP.チェルヌバやレイ&ネルシジャンなどが重視するのはケインズが『戦費調達論』で展開した戦時公債型国債発行です。ただしその場合でもJGPが不要になるわけではなく(というのは、こうした政府の固定支出によってはどのみちMMTの言う「真の完全雇用」は実現できない)、重要な役割を果たすことは変わりありません。ただインフレ抑制策としては不十分なので、戦時公債型国債などが必要になる、ということです。

プロジェクトに必要な政府支出(民間からの資源徴用)やJGPで調達可能な労働資源は、事前に慎重に定量的に計算されなければならないわけですけれど、こうした試みはSFCやレイ・フェアーモデルなどの大掛かりなコンピューターシミュレーションを通じて行われる。こうしたモデルの一例(簡素な試論レベルですが)はAntoine Godin の"Green Job for Full Employment, a Stock=Flow Consistent Analysis" なんて論文で見ることができます(これはたぶんネット上でW.P. 段階のものが入手可能だったと思う)。SFCモデルの欠点として、ほんの小さなモデルでも扱わなければならない変数の数が莫大になる、という点が挙げられますが、まあ、この論文でもその欠陥はいかんなく発揮されており、おいらのような数学嫌いの年寄りにはとてもついていける内容ではありませんね。若い人に期待します。

このGodinの論文を所収している 'Employment Guarantee Schemes' のサブタイトルは 'Job Creation and Policy in Developing Countries and Emerging Markets' です。当然、本書では発展途上国の課題・事例が中心に扱われているのですが、ここでは資本制経済が発展するに伴い、いわゆる「限界地域」へと押し込められてゆく層をどのように「発展・成長」させるか、というのが中心論点の一つになっています。というのはこうした限界地域こそ、環境悪化が最もひどく、それが直接に地域住民の生命を脅かしているからです。環境問題というと地球温暖化のような問題も当然あるのですが、本書では環境悪化によって実際に目先の生命生活が脅かされている状態をどのように回避するか、ということが主要な論点となっています。
MMTというのは、基本的には地に足が付いた話を好むんですよね。勿論、地球温暖化のような問題も重要なんですが、現に足元で生命を脅かされている人たちが自分たちの力でどのようにその状況を脱してゆくのか、それを地域住民参加型の意思決定プロセスを通じてどのように実現してゆくのか、そのために「カネ」が必要なら、それは政府がいくらでも発行できる。けどカネは発行できても、必要な労働力以外の資源をどのように調達できるのか、そのためには専門的な分析が必要であり、そのために経済学(SFCのような)モデル分析が役に立ちうる、と、そういう考え方なですよね。ここには確かに社会主義・設計主義的なアプローチが見え隠れするんですが、しかし同時に現地における具体的な意思決定プロセスに地域住民がどのように参加するのかが非常に重視されている。また資源の調達(インフレ抑制)も、増税よりは戦時公債型国債発行という、一応はマーケットを通じた方法が望ましいとされている。まあこれは、増税による反発を避けるために提唱されているわけですが。

また先進国においても、JGPの多くが環境保全プロジェクトに結びつけられるています。先進国についていうと、従来型の公共投資の問題点を指摘する際に、これが環境資源問題を悪化させることにつながる点がしばしば言及されます。資本制経済の特徴は、過剰投資・過剰債務化によって物的生産性と同時に成長速度を高めるわけですが、しかしこれらが「過剰」だと分かったとたんに(それは短期の利潤を通じて認知される)景気後退に陥る。そして失業が増えると政府が赤字支出を増やすことで景気を刺激しようとするわけですが、これは結局、過剰投資・過剰債務発行を正当化する試みに他ならない。そして雇用が増えるには、こうした政府の「呼び水」支出を通じて、民間部門が再び過剰投資・過剰債務発行をすることが必要になる――これが大きければ大きいほど「乗数効果」が発揮された、と言って喜ばれるわけです(そうはいったって経営者だってバカじゃないんだから、そうそう過剰投資を繰り返そうとはしなくなるでしょう)。しかしこのシステムで雇用を維持するためには、大量のスクラップ・アンド・ビルドを繰り返すことが必要になる。これは重大な資源ロスであり環境破壊要因だ、とする指摘は、たまに見かけます。この点でもMMT派はJGPの優位性を説く。(ただまあ個人的には、この点ではもう少し言いたいこともあるんですけれどもね。。。むしろ「政府は金銭的財源調達にこだわる必要がない」なら、公共事業施工行者決定に際して金銭的コストを重視する必要性はなくなるわけなんだから、その点、環境を配慮した事業を実行できるように業者側・行政側、双方の、それこそ「人的資本」をもっと分厚くし、公共事業プロジェクトの在り方そのものを変えてゆくことで、もっと違うものも出て来るんじゃないかなあ、、、みたいな。。いや、これはおいらの個人的なアレですけれど。)


「環境経済学」というものとしてどのようなものがイメージされているのかわかりませんけれど、マーケットメカニズムを通じた環境問題の解決、あるいは「最適な環境保全」といった考え方は、MMTは全く賛同しないです。排出権取引なんてのは、地域住民の犠牲の上に金融資本の利益を拡大するだけだ、という見方ですね。彼らの見方では、基本的にマーケットメカニズムを通じた解決策、というものは、実物と貨幣や金融商品の区別をつけないんですよね。土地の権利証のやり取りによって土地そのものがやり取りされる、といったイメージです。MMTがずっと言っているのは、経済金融的な実態と、法的な外観・擬制と、実物資源の区別をつけなければならず、実物資源の問題を解決するには実物資源が実際にどうなるかを検討しなければならない、ということで、それはここにも当てはまります。「排出権」なる架空の法的権利を金融商品にして、それを、現在価値の最大化を基準にして取引することと環境保全とは、全く異なる、という考えですね。

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