増えつづける国の借金、増大する税の負担、円安に伴うインフレ懸念。
「日本は財政破綻してしまうのではないか?」
そんな声に明確なNOを突きつけるのが、経済アナリストの森永康平氏。
「国の借金は問題ない」「ハイパーインフレが起こる可能性も低い」との主張を展開する同氏は、大学4年生の中村くんとの対話形式で経済のしくみをレクチャーする新著『「国の借金は問題ない」って本当ですか?~森永先生! 経済ど素人の私に、MMTの基本を教えてください。』の中でその理由を解説している。
今回は同書より、なぜ日本では"国の借金"を心配する必要がないのか、その理由を解説した一節をご紹介したい。
※本稿は、森永康平著『「国の借金は問題ない」って本当ですか?~森永先生!経済ど素人の私に、MMTの基本を教えてください。』(技術評論社)を一部抜粋・編集したものです。
“国の借金”はどのように返済される?
【中村】先生、国の借金は問題ないってどういうことでしょうか。たとえば国債発行は主に民間銀行からの借金とのことですが、やっぱりこれは返さなければいけないのではないでしょうか?
【森永】少し勘違いしていますね。私は「国の借金は問題ない」と述べていますが、「国債は返さなくてよい」とは言っていませんよ。
【中村】ええっ!? 国債を返す必要があるなら、やっぱり税金が必要なんじゃ...。
【森永】いえいえ、国債の償還、つまり"国の借金"の返済に、税金は必要ありません。しかし国債は毎年償還されています。現実には償還の一部に税金が使われていますが、本来は必要ないものです。
ではどのように償還しているかというと、「借換債」です。財務省が発表している2021年の国債の内訳で、「令和3年度当初」の「借換債」を見てみましょう。
【中村】147兆円。一般人からは想像もできない額ですね...でも「借換債」ってなんですか?
【森永】簡単に言うと、借金を返すための新たな借金です。
【中村】.........は?
【森永】過去に国債発行によって負った借金を返済するために、新しく国債を発行して借金をして、返済をします。
【中村】そんなことできるんですか?
【森永】すでにある借金を新たな借金に置き換えることは、民間でも行われています。例えば、
住宅ローンをより低金利な方に切り替える場合ですね。これを「借換」といいます。同じように、借換のための国債を「借換債」と言うのです。
【中村】知らなかったです。でも国債を借り換えて、何の意味があるんですか? 結局借金が残るだけなんじゃ......。
【森永】そうですね。ただ、返済までの猶予ができることになります。日本の国債には60年償還ルールがあるんです。国債を発行してから60年後に償還、つまり返済しなければいけないというルールです。借換債を発行していったん償還すると、また60年の償還猶予ができる、というわけです。
【中村】あれ? でも国債って「10年国債」とか「国庫短期証券」とか、60年より短そうな名前に聞こえますよ。
【森永】「10年国債」とは、「10年後から償還が始まる国債」という意味で、借りたお金をすべて返済するのは60年後なんです。
先進国は“国の借金”を増やし続ける
【中村】政府がこんなに国債を発行したり、中央銀行がそれを買い取ったりして、なんだかものすごくよくないことをしているような気がするのですが...世界の他の国も同じような状況なのでしょうか?
【森永】いい質問ですね。経済や国家財政は、世界の国々と比較することで見えてくるものがあります。結論から言うと、「同じように借金を増やしている国はあるが、多くはない」ですね。
これは国によって経済規模や、モノやサービスの生産能力が違うからです。しかし、日本のような先進国では、"国の借金"を増やし続けるのは普通のことです。
これらの2つのグラフは、アメリカ、中国、インド、イギリスの"国の借金"を表したものです。この4カ国は、経済規模がそれぞれ世界1位、2位、5位、6位の国々です。ちなみに日本は3位。どこの国も"国の借金"が増え続けているのがわかりますね。
【中村】本当だ。これらの国々の"国の借金"は、日本と同じ仕組みなんですか?
【森永】中央政府の国債や、中央銀行の当座預金、民間銀行の国債購入など、基本的な仕組みは同じです。議会の時期やプロセスは違いますが、ほぼ同じものと考えて問題ないでしょう。
これらの国々の共通点の1つは、自国通貨を持ち、自国通貨建ての国債を発行していることです。
自国通貨建て国債は、先ほど説明した日本政府と日本銀行の関係のように、中央銀行が国債を買い取ってしまえば返済の必要が実質的になくなります。そのため、"国の借金"の額自体は気にする必要がないし、中央銀行が通貨を発行できるため、財政破綻は起こり得ないのです。
「国の借金」を返している国
【森永】一方で、"国の借金"を税金で返済している国もあります。例えばドイツです。ドイツは世界第4位の経済大国ですが、このグラフにもあるように、2013年ごろから2019年にかけて、地道に"国の借金"を返済しています。2020年と2021年は、新型コロナウイルスの影響による特殊な年ですね。
【中村】本当だ。世界4位ということは、日本よりほんの少し経済規模が小さいってことですよね。数字だけ見れば同じような国なのに、なぜドイツは"国の借金"を返しているのでしょうか?
【森永】ドイツでは自国通貨ではなく、「ユーロ(€)」という共通通貨が流通しているためです。ユーロとは、ヨーロッパで国境を超えて同じ通貨を使用する経済同盟のことで、その中で使われている通貨単位を指します。
【中村】それは知ってます! 僕もドイツとスペインを旅行した時、同じお金が使えて便利だなと思いました。
【森永】外国人にとっては便利ですよね。私の知人も仕事でヨーロッパ各国を回った時は、両替の必要がないので楽だったと言っていました。
しかしこのユーロ、ドイツは自国で発行することができません。ユーロの発行は「欧州中央銀行(ECB)」が管理しており、ユーロ加盟国各国が会議を行うことで、加盟国へのユーロ国債発行額が決まります。
つまりドイツの"国の借金"は、文字通りドイツ政府がECBから借りているお金であり、税金で返済する必要があるということです。
【中村】便利さの裏にはそんな制約があったんですね......。
【森永】ドイツ政府は財政を黒字にする必要があるため、ユーロ圏内の国々に自国のモノやサービスを輸出することで、財政黒字を維持してきたのです。
森永康平(株式会社マネネCEO / 経済アナリスト)
https://www.amazon.co.jp/「国の借金は問題ない」って本当ですか?〜森永先生!経済ど素人の私に、MMTの基本を教えてください%E3%80%82-森永-康平-ebook/dp/B0BGGM49J6/ref=sr_1_1?adgrpid=141415196323&hvadid=627612691111&hvdev=c&hvqmt=e&hvtargid=kwd-1875978138203&hydadcr=4079_13276452&jp-ad-ap=0&keywords=国の借金は問題ない+って本当ですか&qid=1673467023&qu=eyJxc2MiOiIwLjgxIiwicXNhIjoiMC42NyIsInFzcCI6IjAuNjYifQ%3D%3D&s=books&sr=1-1
#2
02 / 人類最古のお金はメソポタミア文明期 「お金とは何か?」を考察するために、人類史上もっとも古いお金を考えることから始めてみましょうか。お金の本質は、お金が生まれた時から現在まで変わっていません。中村くん、人類最古のお金は、いつどこで生まれたか知っていますか? 富本銭とか和同開珎とかじゃないですよね? それは“日本”最古のお金たちですね。人類最古のお金は、紀元前3500年ごろのメソポタミアで使われていた粘土板です。神殿と国民の間における貸し借りの関係が粘土板に記録され、それが貨幣として扱われていたと言われています。 メソポタミアって、それこそ人類最古の文明ですよね? 世界史で一番最初に習ったのをよく覚えています。 そう、そのメソポタミア文明です。そんなに昔からお金があったなんて驚きですよね。 あれ? でもどうして「貸し借りを記録した粘土板」がお金になるんですか? 「お金は借金をすることで生まれる」という信用創造と関係あるのかな? ここで「信用創造と関係あるのかな?」と疑問が沸くのは、中村くんが順調にMMTの理解を深めている証拠です。で、もとの疑問に戻ると、「なぜ貸し借りの記録がお金になるの…
#3:
#3
05 / モズラーの名刺
MMTの提唱者の1人に、ウォーレン・モズラーという人がいます。経済学者であると同時に、著名な投資家でもある人です。モズラーが租税貨幣論を説明するために用いた、「モズラーの名刺」という例え話があります。 名刺? お金の説明をするのに名刺ですか? そうです。なかなか興味深い例え話ですよ。まず、モズラー家という家庭があります。裕福な家庭で、それなりに広い家に両親と子どもたちが住んでいます。
[父親は仕事をすることで身体を張って外敵から子供を守っているので単なる児童虐待ではない]
モズラー家の自宅は広いので、掃除や手入れが大変です。そこで、モズラーは子どもたちに家事を手伝ってもらいたいと考えました。しかしなんの褒美もなしに子どもたちは手伝ってくれないので、「家事を手伝ってくれたら私の名刺をあげよう」と伝えます。 名刺って、子どもたちがほしがるものなんでしょうか? お察しの通り、別にほしがりません。子どもたちにとって名刺はなんの価値もないもので、手伝いをさせられてほしくもない名刺をもらうよりも、手伝いをせずに遊んでいた方がずっと楽しいでしょう。
モズラーは、子どもたちに家事を手伝わせる方法を考えます。そこでモズラーは、「月末までに名刺を30枚集めて私の元に持ってきなさい。名刺は家の手伝いをしたら渡してあげよう」と子どもたちに告げました。「名刺を集められなかったら家を出て行ってもらう」という厳しい条件をつけて。 それは厳しい。でもそうなると、たしかに子どもたちも家のお手伝いをやらざるを得なくなりますね。 その通りです。家から追い出されてはたまりませんから、子どもたちは必死でお手伝いをして名刺を集めるようになりました。モズラー家の中で、名刺が価値を持った瞬間です。 しばらくすると、興味深い現象が起こります。最初はお手伝いをしてモズラーから直接名刺をもらっていた子どもたちですが、次第にお互いが持っている名刺を使って取引をするようになりました。例えば、兄が弟の代わりに宿題をやってあげるので名刺を5枚譲る、弟がお風呂掃除をするので兄が名刺を5枚譲る、といった具合です。 労働とお金の取引みたいですね! 宿題の代行や風呂掃除という労働の代わりに、名刺を支払う。まさしく「名刺がお金としての価値を持っている」と言えるでしょう。
月末になると、モズラーは子どもたちから名刺を集めます。名刺はモズラーの判断でどうしようと自由です。翌月に配布する名刺として使うこともできますし、捨ててしまってもいい。翌月に配る名刺は、足りなければ新しく印刷すればいいわけですから、印刷費が尽きない限りモズラーが発行する名刺に上限はないということです。国家財政と税金の話に置き換えると、名刺の回収は、モズラーの子ども2人の手元には名刺がなくなり、名刺による労働取引をできなくすることですから、税金として回収した貨幣を政府預金に積み、実体経済から貨幣を消す行為と同じです。積み上げた政府預金は、次の支出に使ってもいいし、名刺がボロボロになっていれば廃棄してもいいわけです。名刺の廃棄は、国債を償還して世の中からお金を消す行為と同じです。重要なことは、「当年の支出(名刺の配布)に前年の税収(回収した名刺の数)は影響を受けない」ということですね。
なるほど……ということは、国家も無限の財政出動ができるということに?
いえ、そうはなりません。名刺を配りすぎて、家事の手伝いをしなくても月末に十分な枚数の名刺が手に入ってしまうような状況では、兄弟に家の手伝いをさせることができません。現実に例えると、好景気すぎて実体経済にお金が流通しすぎている状態ですね。その場合は配る名刺の量を減らしたり、回収する名刺の数を多くしたりします。財政支出の抑制や増税ということです。 ああ、そういうことになるのか。 一方で、子どもたちが勉学に励みなかなか家の手伝いができないという状況で、「お前は家の手伝いをしなかったから名刺が揃わなかった。この家から出て行け」というのはかわいそうですよね? 家事以外にやらなければいけないことがあり、そっちをがんばったのだから、そのぶん回収する名刺の量を減らしたり、勉強も名刺配布の対象にすればいいわけです。これは減税や財政支出の拡大にあたります。つまり、兄弟の状況に合わせて適切な名刺の量になるように、足りなければ配る、配りすぎたら多く回収する、というように、機動的に判断すればいいということです。これは国家財政でも同じで、好景気には増税や緊縮財政、不景気には減税や積極財政を行えばいいということです。 この例え話は、経済の仕組みをいくつも含蓄させている大変優れた話です。まず「労働をして名刺を集めなければ家から追い出す」と強制力を持たせたことで、名刺に価値を持たせたこと。子どもたちにとって名刺は本来なんの価値もありませんが、強制力を持たせることで価値を作り出しました。現実の世界でも、税金の支払いを滞納すれば私財の差し押さえや逮捕といった強烈な罰が待っています。 たしかに……最近は大学生でもドルを持っている人がいるみたいですけど、結局は日本円で買い物しますからね。 もう1つは、「税を回収する前に先に支出している」という点です。家事手伝いの代わりに名刺を渡し、月末に回収する制度は、まず最初に名刺を配らないとモズラー家の中に名刺が出回りません。国家財政も同様で、まず政府からお金を支出しなければ、国内にそもそも回収するお金が存在しません。1章の『創立1年目の国家の予算』で述べた、創立1年目の国家の例も同様ですね。 逆に言うと、税金を財源として考えてしまうと、「じゃあ税金として支払うお金は、そもそもどうやって生まれるのか」という問いに答えられない、ということでしょうか? その通りです。 ちなみに、世界でもっとも新しい国家は南スーダンです。2011年に独立を果たしましたが、すでに南スーダンポンドが流通しています。これも、国家が「まず支出」をしないと成り立たない現象です。 そんなに新しい国でも、自国通貨が出回っているんですね。 そして回収後の名刺の処理。回収すれば兄弟は名刺を持っていませんから、お互いの労働取引には使えません。現実で言えば実体経済からお金が消えたことになります。消えたお金は、政府預金として政府(モズラー)の口座に積まれています。これは手元に置いておいて翌月の支出に使ってもいいし、捨ててしまってもいい。国家財政でも同様です。 あれ? それなら回収した税金が財源になっているんじゃ……。 ところが、現実にはモズラーでも国家財政でも、回収した名刺だけでは支出には到底足りないので、新たに名刺を印刷する(国債を発行する)必要があります。そして支出に使う名刺や政府預金が、回収した税金なのか国債発行で新たに調達した政府預金なのかは、わからないのです。 うーん……どういうことでしょうか? 例え話で考えてみましょう。中村くんの銀行口座に10万円が入っていて、そこから3万円を引き出してお財布に入れたとします。その3万円は、先月のアルバイト代ですか? 先々月のアルバイト代ですか? う~ん。どうなんでしょう? すいません、わからないです。 正解です。 はい? 「わからない」が正解です。私だってわかりません。 ええ??? ATMから引き出したお金がいつのアルバイト代なのかはわかりません。よく思い出してください。銀行預金というのは、銀行が打ち込むただの数字データです。2章『01/貸し出しによって預金が生まれる』から解説した信用創造のプロセスで詳しく記載しています。アルバイト代として入金されたお金も、「ただの数字データ」という本質は変わりません。その口座から現金を引き出しても、預金から現金紙幣への両替をしただけ。銀行預金という数字データに「いつもらったお金か」という区別はないんです。これが、2章の『04/貨幣の4条件』で述べた「お金に色はない」という言葉のもう1つの面です。 なるほど、たしかに……。 税金にも同じことが言えます。税金として回収し、政府預金に振り替えられた時点で、それはただの数字です。税金で回収したものなのか、国債発行で調達したものなのか、区別はできません。区別ができないということは、政府支出の一部に税金が使われている可能性もあります。これが、3章の『01/教科書で習う税金の役割』で述べた「税金が財源としてまったく機能しないとは言い切れない」と述べた意味です。 よくわかりました。 だいぶ遠回りをして解説しましたが、そもそも「税金が財源かどうか」は考える意味がないんです。実際に税金がなくても支出できるわけですから。政府預金に入金されているお金は、どのように作られたお金かわかりませんし、税金がなくても政府が支出できることは、実際に行われている業務からも明らかです。少なくとも今の日本では、「財源としての税金」を考える意味も必要もないのです。
#4
01
世界の平均年間賃金(購買力平価)の推移を見ていきましょう。
先生、日本だけが地を這っているように見えるのですが……。 現実を見ましょう。先進国どころか、発展途上国を含めても、ここまで実質賃金が上がっていない国は日本だけ、むしろ下がっています。もちろん、基準年に対してどれだけ上がっているかというグラフなので、より長期のグラフにすれば日本より低い数字の国もあるかもしれませんが、こと先進国においては給料が上がり続けるのが普通です。下がっている時点で異常です。
…
#4
01:03
有効需要が増えれば、多少の値上げをしてもチケットやグッズは売れるでしょうから値上げする。需要が高まり続けるようなら値上げを継続してインフレになる。このように、需要(demand)が牽引(pull)することで起こるインフレ(Inflation)を、「ディマンドプルインフレ」と呼びます。
…
2022年に起きた値上げは、ロシアのウクライナ侵攻や、世界的なコロナ禍からの経済回復、急速に進行した円安などを背景に、原油などのエネルギー価格や食料や資源などの輸入物価が上がっていったことが原因です。こうしたインフレを「コストプッシュインフレ」と呼びます。
…
02 / 日本経済停滞の理由は政府支出の不足 先生、日本経済はどうしてこんなに長い間停滞しているんでしょうか? 「世界第3位の経済大国」と聞いていたのに、こんなにずっと成長していないなんて……。 簡単です。政府による支出が足りないからです。 ええっ!? でも日本政府って毎年税収以上に支出していますよね? たしか税収60兆円前後に対して、歳出100兆円とか。それでも足りないんですか? はい、全然足りません。たしかに日本政府の歳出は税収よりはるかに多く毎年赤字ですが、それでも全然足りないんです。 何をもって「足りない」というんでしょうか? GDPが伸びているかどうかです。6章の『02/国内総生産=GDP』で記した通り、GDPの計算式の中には「政府支出」が含まれているので、政府支出がそのままGDPに加算されます。で、実はものすごくわかりやすいデータがすでにあるんです。
次のグラフは、世界各国の政府支出の伸び率と、名目GDPの成長率を表した散布図です。
横軸が政府支出伸び率、縦軸が名目GDP成長率です。右に行くほど政府支出の伸び率が高く、上に行くほど名目GDPが成長しています。この散布図を見ると、政府支出を伸ばしている国が名目GDPを伸ばしていることが明らかです。日本は一番左下、政府支出も名目GDPも、もっとも伸び率が低い位置にいます。
第1章の『03/先進国は“国の借金”を増やし続ける』のグラフで見せた通り、世界中の“国の借金”の残高は増え続けるのが普通です。加えて、単年の“国の借金”が前年比で増えるのも当たり前。今年100兆円を支出したなら、翌年は103兆円、という具合ですね。ところが、日本は前年比で“国の借金”を減らそうとしています。それが次のグラフです。
日本政府予算は基本的に前年以下。補正予算が組まれて、最終的に前年比で微増になることがほとんどですが、それでも他国に比べれば伸び率は低い。2000年代は前年比でまったくと言っていいほど増えていませんし、2009年と2011年は、リーマンショックと東日本大震災により止むを得ず増やしたに過ぎません。2020年はコロナ禍により過去最大の伸び率となっていますが、2021年と2022年(当初予算)では大幅に減らしています。これでは経済成長など見込めるはずもありません。
…
#5
「消費税は預かり金である」って本当ですか?
消費税は誤解があまりにも多い税金です。最たる例が「消費税は社会保障に使われている」ですが、もう1つは「消費税は預かり金である」です。買い物のたびに消費者が事業者へ消費税を預け、事業者は預かった税金をそのまま納めている、という誤解ですね。1990年代に東京地裁と大阪地裁で、「私が預けた消費税を事業者が納めていない。これは違法だ」として、一般人が国を訴える裁判がありました。しかし、東京地裁と大阪地裁はいずれも訴えを棄却しています。この時の判決文の一部を抜粋します。
~先に述べたように、消費税の納税義務者が消費者、徴収義務者が事業者であるとは解されない。したがって、消費者が事業者に対して支払う消費税分はあくまで商品や役務の提供に対する対価の一部としての性格しか有しないから、事業者が、当該消費税分につき過不足なく国庫に納付する義務を、消費者に対する関係で負うものではない。もっとも、消費税の実質的負担者が消費者であることは争いのないところであるから、右義務がないとしても、消費税分として得た金員は、原則として国庫にすべて納付されることが望ましいことは否定できない。~中略~消費税の転嫁について、税制改革法一一条一項は「適正に転嫁するものとする」と抽象的に述べているだけであり、具体的な転嫁額については事業者の取引上の意思決定に任されている。
東京地方裁判所 平成元年(ワ)5194号 判決より引用
「消費税の納税義務者は消費者ではなく事業者である。消費税による価格の上昇はあるが、消費税分もすべて含めて『価格』であり、消費者に対して納税を約束するものではない。もちろん消費税によって価格が上昇した分はきちんと納税することが望ましいが、消費税を価格にどこまで転嫁するかは事業者の自由である」ということですね。 うーん、なんだかよくわからない……。 まぁ、ここでは「消費税によって値上げされた分も含めて、すべて商品の価格である」と覚えておきましょう。中村くんが110円の商品を買ったとしても、そのうち10円が消費税などという区別はなく、あくまで110円の商品ということです。 ふーむ……。 まだピンときていないようですが、次にいきましょう。国税庁のHPから、消費税の計算方法を引用します。
こっちもよくわかりません……。 これは具体的な金額を用いて計算するのが一番いいでしょう。現在の日本は複数税率を採用しており、食料品などの生活必需品が8%、それ以外の品目が10%の消費税となっています。仮に10%と8%の商品をそれぞれ100円で10個ずつ販売したとすると、計算式は以下のようになります。
税込110円の商品を10個販売したので、売上が1,100円です。そこに消費税額を求める計算式「10/110」をかけます。税込108円の商品も同様に計算します。そうすると、消費税納税額がそれぞれ100円と80円になるので、合算して180円、ということです。 ややこしい……こんな難しい式にする必要あるんですか? 110円で販売したら商品1個あたりの消費税分は10円、108円なら8円なんだから、それぞれ10個販売したら普通に「「(10円×10個)+(8円×10個)=180円」」でいいんじゃ……。 ところが消費税はそういう仕組みになっていません。もう1つ例を見ていきましょう。商品がなかなか売れないので、消費税分を減額してすべて100円で販売したとすると、計算式は下記のようになります。
あれ、消費税を受け取っていないのに税額計算するんですか? そうです。正確に言うと、消費税に「預かる」「受け取る」という概念は存在せず、受け取ったかどうかに関係なく、売上に対して10/110の税金が課されます。私たちが支払っていると思っている消費税は、企業が「税金で売上の10/110をとられてしまうので、その分販売価格を値上げします」というもの。CPIやGDPデフレーターに消費税の値上げ分が含まれるのも、これが要因です。もし本当に消費税が預かり金で、私たちが預けた消費税がそのまま納税されているなら、CPIやGDPデフレーターには反映されません。税収は実体経済から貨幣を消す行為なので、GDPのマイナス要因だからです。この仕組みの要点を説明したのが、先の東京地裁の判決だということです。 あー、あの判決はそういうことだったんですね。 仕入れ税額控除があるので、実際の納税額はもう少し下がりますけどね。そして、事業者が消費税分を価格に転嫁できないケースは山ほどあります。例えば、大企業が下請けの中小企業に「消費税分を値引きして」と交渉すれば、力関係から考えても、下請け側が受け入れざるを得ませんから。というわけで、消費税は預り金ではありません。
#5
これは、中国の経済成長率と、人口増減率を併記したグラフです。中国は意図的に人口増を抑える「一人っ子政策」を、1979年から2014年まで継続していました。しかし名目GDPは、程度に差はあれど成長を続けています。人口増減率と経済成長率には相関関係も因果関係も見られません。
0 件のコメント:
コメントを投稿