| ||||||||||||||||||||||||
https://gendai.media/articles/-/98149
"非正規の高齢者"にヤバすぎる影響 安倍元首相が遺した「アベノミクス」は日本社会に何をもたらしたのか
目標は達成できなかった
安倍晋三元首相が凶弾に倒れてからはや3週間が経った。
政府が国葬を執り行うことを決定したこともあり、生前の安倍元首相の「功罪」が盛んに議論されているが、やはり安倍元首相を正しく評価する上で、「アベノミクス」の検証は避けて通れない。そこで、アベノミクスが経済面でどのような効果を上げたのかを、一から振り返って、分析していきたい。
photo by gettyimages12年12月26日、2度目の政権の座についた安倍元首相は、「大胆な金融政策」、「機動的な財政政策」、「民間投資を喚起する成長戦略」を"3本の矢"とし、経済成長のための政策の柱として、「アベノミクス」を打ち出した。
アベノミクスは安倍首相の「アベ」と「エコノミクス」を合わせた造語だ。
3本の矢の中で、もっとも早く始動したのは「大胆な金融政策」だった。翌13年には財務省財務官を経て、当時、アジア開発銀行総裁だった黒田東彦を日本銀行総裁に起用、3月に就任した黒田総裁は4月から大規模な金融緩和策を開始した。この結果、アベノミクス前の12年12月に0.8%だった長期金利(10年物国債利回り)は、19年8月には一時マイナス0.275%まで低下した。
黒田総裁は就任時に大規模金融緩和の目標をデフレ経済からの脱却による「消費者物価指数2%」を掲げたが、安倍元首相任期中に消費者物価指数(生鮮食品を除く総合)の前年比は12年のマイナス0.1%から19年の0.6%と成果を上げることは出来ず、目標は達成できなかった。
"非正規の高齢者"にヤバすぎる影響 安倍元首相が遺した「アベノミクス」は日本社会に何をもたらしたのか
アベノミクスに対する期待がもっとも顕著に現れたのは日経平均株価だ。12年末に1万395円程度だった株価は、18年10月には一時2万4448円まで上昇した。日経平均株価は1万4053円も上昇し、2.35倍になった。
背景には、長期金利の低下とともに、為替円安の進展が関係している。12年末に1ドル=86円だった為替相場は、15年6月には125円まで円安が進んだ。36円も円安が進んだことになる。
これが円高に苦しむ製造業・輸出産業の業績を改善した。企業の経常利益は12年度の48.4兆円から18年度には83.9兆円と35.5兆円(73.3%)も増加した。アベノミクスによる長期金利の低下と円安の進行は、企業業績の増加には大きく貢献した。実質GDP(国民総生産)も12年10-12月期の兆円から515兆円から19年7-9月期には557兆円と、42兆円(8.1%)も増加した。
個人レベルでの生活環境の変化は?
では、アベノミクスは個人の生活改善には、どの程度の効果をあげたのか。
完全失業率(季節調整値)は、12年12月の4.3%から最大で2.1%低下し、18年5月と19年12月には2.2%まで改善した。
それは就業者数、雇用者数の増加にも顕著に表れている。就業者数(季節調整値)は12年12月の6307万人から19年10月には6786万人まで479万人(7.5%)増加した。雇用者数(季節調整値)も12年12月の5495万人から20年3月には6065万人まで570万人(10.3%)増加した。こうして見ると、アベノミクスは少なくとも個人についても、雇用面では大きな成果をあげているように見える。
"非正規の高齢者"にヤバすぎる影響 安倍元首相が遺した「アベノミクス」は日本社会に何をもたらしたのか
だが、雇用者数増加の内訳は、非正規雇用者の大幅な増加によるもので、大きな歪みを生み出したと言わざるを得ない。
13年1月に3362万人だった正規雇用者は、20年4月には3579万人に217万人(6.4%)増加したが、その一方で非正規雇用者も13年1月の1824万人から19年9月には2199万人に375万人(20.5%)も増加している。
正規雇用者の増加は6.4%だったのに対して、非正規雇用者は20.5%も増加しており、アベノミクスにより増加した雇用者の60%以上が非正規雇用者だったことになる。必ずしも非正規雇用が良くないとは言わないが、著しく雇用の非正規化が進んだことは確かだ。
非正規の高齢者の大幅な増大
さらに、この非正規雇用者の増加は、女性と高齢者の非正規雇用者の増加、特に高齢者の大幅な増加に偏っている。13年から20年の間に、15~64歳の男性正規雇用者は49万人(2.2%)増加し、非正規雇用者は33万人(0.6%)減少した。一方で、15~64歳の女性正規雇用者は175万人(16.5%)増加し、非正規雇用者は35万人(2.9%)増加している。
男性は非正規雇用から正規雇用に振り替わった姿が、女性は雇用が増加するともに、非正規雇用者も増加した姿が見える。ところが65歳以上の高齢者は13年から20年の間に就業者数が266万人(41.7%)増加した。ただ、正規雇用者の38万人(46.9%)増に対して、非正規雇用者は185万人(90.6%)も増加している。増加した非正規雇用者の約75%が65歳以上の高齢者ということになる。
"非正規の高齢者"にヤバすぎる影響 安倍元首相が遺した「アベノミクス」は日本社会に何をもたらしたのか
65歳以上の高齢男性の就業率を見ると、日本が57.2%、米国は36.4%、英国は26.6%と日本が突出して高い。高齢者の活用という名の下に、「低賃金の非正規雇用でも働かないと生活できない高齢者」の姿が浮き彫りになっている。
アベノミクスが企業業績の改善に大きく貢献したことは前述した。では、個人の所得は増加したのか。平均年収額は12年の408.0万円から19年には436.4万円と28.4万円(6.9%)増加している。だが、これはアベノミクスによって企業収益が72.8%も増加したことに比べれば、微々たるものでしかない。
第2次安倍政権は20年9月26日まで続いた。連続在職日数は2822日、通算在職日数は3188日と、いずれも歴代最長となった。8年に及ぶ長期政権の中心的な政策「アベノミクス」は果たして十分な成果をあげたのだろうか。
アベノミクスを踏襲する自民党政権
だが、現時点でアベノミクスを総括するのは早計だろう。
安倍政権後の自民党政権は基本的にアベノミクスを踏襲している。日銀は7月20~21日の金融政策決定会合で、大規模な金融緩和策の維持を決めた。財政支出が拡大することを「ワニの口が開く」という。歳出の推移をワニの「上あご」、税収の推移をワニの「下あご」と見立て、ワニが口を開いたように見える姿から来ている。
歳出(上あご)を税収(下あご)で埋めることができない場合、「開いたワニの口」の部分は国債発行で賄う。アベノミクスの「機動的な財政政策」を受け、12年度に705兆円だった国債残高は、安倍政権の終わりの20年度には241兆円(34.2%)増加し、946兆円に膨らんだ。赤字国債残高は12年度の418兆円から20年度には214兆円(51.3%)増加し、632兆円になった。
"非正規の高齢者"にヤバすぎる影響 安倍元首相が遺した「アベノミクス」は日本社会に何をもたらしたのか
金融緩和が終わったそのとき
もちろん、新型コロナの感染拡大があり、その対策費が嵩んだというもの確かだ。だが、財政健全化は一向に進まず、ワニの口は開いたままだ。
大規模な金融緩和が終わり、金融政策が正常化するとともに、財政の健全化が進んだ時、その時の経済や国民生活の姿によって、アベノミクスの正当な評価が下されることになるだろう。
アベノミクスの成果一覧表
0 件のコメント:
コメントを投稿