錬金術の終わり 貨幣、銀行、世界経済の未来 (日本経済新聞出版) eBook: マーヴィン・キング, 遠藤真美: 本
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Reviewed in Japan on July 12, 2017
世界経済は真の不確実性から脱出出来るのか???
2003年から10年間イングランド銀行の総裁であった著者は、2008年の世界金融危機後、主要中央銀行の金融政策は「最後の貸し手」として流動性を供給するため、貨幣を創造して、量的金融緩和を行ってきたが、そうした錬金術を終わらせなければいけないと主張する。そして中央銀行は充分な担保を差し出させる「頼りになる質屋」に換わるべきだと述べている。世界経済は今、貿易黒字の国と貿易赤字の国に見られる「不均衡」、統計確率で表せないためマクロ経済学で言う最適化モデルが役に立たない「真の不確実性」、国際的な協調を阻む「囚人のジレンマ」、そして貨幣と銀行に対する「信頼の揺らぎ」に直面している結果、短期の需要や支出を刺激するが長期の均衡から逆に遠ざかる、低金利政策の「政策パラドックス」に陥っている。
これを抜け出すためには「大胆な悲観主義」に基づいて、
1.生産効率を高めてイノベーションの新規投資を行う
2.自由貿易促進
3.通貨の変動相場制を守る
等を提案しているが、今の世界の情勢を見ると言うは易し行うは難しであろう。
中国、ロシアはドル基軸通貨に換わるSDRや金準備制を考えている。
「真の不確実性」に対処する方法として、
1.統計確率が応用できて期待効用に基づく最適化行動がとれるリスクあるいはそれが出来ない「真の不確実性」かどうかを分ける(カテゴライズ)
2.重要な情報が織り込まれているストーリーを見つける(ナラテイブ)
3.一つの情報を重要視することで他の情報の大部分は無視する近道の決定(ヒューリスティック)
の3つの行動を推奨している。
著者は行動経済学を、伝統的な最適化モデルが成り立たないときに何が合理的であるのかという深い疑問と向き合っていない、と批判的であるが、個人も政治家もそして中央銀行総裁も十分にエラーを起こしやすい生身の人間であると言いたい。
日本については、膨張する国家債務の負担を減らすにはインフレを起こすしかないと述べている。
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Reviewed in Japan on March 25, 2018
過去の金融危機の歴史が面白く描けています
マービン・キング「錬金術の終わり」を読みました。
著者は、2003年から10年間イングランド銀行の総裁でした。
在任中におきた2008年のリーマンショックで始まった世界金融危機に対処した経験を踏まえて、この本を書きました。
タイトルの「錬金術の終わり」は銀行の信用創造、各国の中央銀行による貨幣の増発による金融経済運営は、いずれ綻び、世界金融危機が起こるリスクを意味します。
この本の面白さは、過去の金融危機の歴史の語り口です。
歴史上、金融危機は何度も起り、経済・社会・国際関係・人々の暮らしに多大な影響を与えました。
原因、背景、利害関係者、大衆、銀行、政府、中央銀行などの狼狽ぶり、延々と続く会議、議論、交渉がヒリヒリする緊張感で描かれます。
経済学者、知識人、政治家などの思想、思考、行動も詳細されています。
勘違い、思い違い、トンチンカンぶりには驚かされますが、現代も、過去の教訓を生かしていると思えません。
次の金融恐慌時には同じような狼狽えぶりでしょう。
この本は、著者の豊富な実務経験、学識、知識が活かされています。
500ページもの本で、金融経済についての本ですが、数式を全く使わない筆力には感嘆です。
日銀の黒田総裁が、こんなにわかりやすく一般向けの金融についての本を書けるとは想像できませんね。
2008年の金融危機は、主要中央銀行が「最後の貸し手」となって貨幣創造して、量的金融緩和を行い流動性を供給して落ち着きました。
金融恐慌の原因となった不良債権処理は終わってませんし、内容は極秘扱いです。
新たなバブル崩壊に向かってリスクが増しているのが現状です。
著者は、巨大銀行が実質倒産した苦い経験から健全性確保のため担保能力の強化を訴えます。
これはBISのバーゼル規制の自己資本の強化・充実に反映されました。
現在、貿易黒字の国と貿易赤字の国に見られる「不均衡」、マクロ経済学の最適化モデルが役に立たない現実がある「真の不確実性」、国際協調の困難などから、金融危機リスクは大きいとの認識です。
この原因分析には、アメリカ、EU、日本などの経済大国の少子高齢化による社会コストの増大・生産性の低下、成長国(中国、ブラジル、ロシア、インド、韓国、トルコ、メキシコ、インドネシア)などの台頭はあまり述べられていません。
経済成長率2%の先進国のGDPが成長率5%の成長国に追いつかれ、逆転するのは目に見えています。
国際基軸通貨のドル体制の終焉を意味します。
新たな基軸通貨を巡って様々な動きがありましょうが、金(ゴールド)が中心になるでしょう。
著者の、金融危機を避け、健全な世界経済遠泳のための政策提言はオーソドックスなものです。
1.生産効率を高めてイノベーションの新規投資を行う
2.自由貿易促進
3.通貨の変動相場制を守る
いずれも言うは易く、行うは難しです。
著者の基本的な認識として経済学は、未来予測が出来ない、があります。
理由は、人間社会の歴史、文化、価値観、思考、行動の「多様性」を網羅して把握・理解できないからだと考えます。
それでも、その「不確実性」に対処する方法として、
1.統計確率が応用できて期待効用に基づく最適化行動がとれるリスクあるいはそれが出来ない「真の不確実性」かどうかを分ける(カテゴライズ)
2.重要な情報が織り込まれているストーリー(シナリオ)を見つける(ナラテイブ)
3.一つの情報を重要視することで他の情報の大部分は無視する近道の決定(ヒューリスティック)
の3つの行動を推奨している。