![]() | Ryouji Ishizuka (@ISHIZUKA_R) |
階層化システムは「中央銀行貨幣と私的債務証書とが共存する混成的なものであり、「階層化されたピラミッド形態をとった差異のシステム」である。」(アグリエッタ、1982、訳107,179頁)高、1994、207頁。 | |
https://twitter.com/ishizuka_r/status/1317381659340107776?s=21
https://www.kinokuniya.co.jp/f/dsg-01-9784588003417
叢書・ウニベルシタス
貨幣の暴力―金融危機のレギュラシオン・アプローチ
アグリエッタ,ミシェル〈Aglietta,Michel〉/オルレアン,アンドレ【著】〈Orl´ean,Andr´e〉/井上 泰夫/斉藤 日出治【訳】
法政大学出版局(1991/09発売
現代のインフレと金融危機をレギュラシオン概念に依拠し貨幣制度の発生という原理的視座から解き明かす。ジラールやプリゴジンを援用しつつ通貨・金融問題に挑む。
内容説明
〈レギュラシオン〉概念に依拠し、現代のインフレと金融危機を貨幣制度の発生という原理的視座から解き明かす野心的な試み、ドイツのハイパー・インフレやアメリカの金融危機の分析を踏まえ、あるいはルネ・ジラールの暴力論やプリゴジンの散逸構造論を積極的に援用しつつ、現代の通貨・金融問題に挑む。
目次
第1部 貨幣制度の一般理論(貨幣と社会秩序の創成過程;集権化と分裂化;通貨危機)
第2部 貨幣―その起源から20世紀の通貨危機に至るまで(貨幣・暴力・主権の歴史;ハイパー・インフレーション;アメリカ合衆国の金融政策の変遷)
ポランニー経済の文明史
377:
377 第十章制度化された通程としての経済
他方公仁
山会的に意味のある互配作
と予想した。彼自身によるト
を確証した。筆者は、
ちくま学芸会文庫
性を、統合を与えるいくつかのパターンの一つにすぎないと考くue*
は、さらに統合のほかの形態として再分配と交換を互酬に加えた。そ て、目
、中心性と市場を制度的支持のほかの例として対称性に加えた。こうして、われわれ
の統合形態とそれを支持する構造のパターンができ上がったのである。
これは、なぜ経済の領域では、多くの場合、特定の制度的な前提条件のないところでは、
個人間の行為が期待された社会的効果を上げないのかという点を説明する助けとなるはず
である。対称的に組織された環境においてのみ、互酬的行為は何らかの重要性をもった経
済制度を生む。配分の中心が確立している場合にのみ、個人の分有行為から再分配的経済
が生じる。そして、価格決定市場というシステムが存在する場合にのみ、個人の交換行為
が経済を統合する変動価格を生じさせる。さもなければ、このような物々交換の行為は有
効性を発揮せず、未発生のままであろう。なおかつ、ばらばらな形で物々交換が起こると
したら、下品な行為や裏切行為に対するのと同様な、激しい感情的な反動がはじまるであ
ろう。なぜなら、交易行為はけっして感情的に中立的な行為ではありえず、したがって
認められている筋道以外では、世論の許容するところとはならないからである。
さて、話をわれわれの統合形態に戻そう。
経済関係を意識的に互酬的基盤の上に組織しようとする集団は、その目的をとげるため
には、下位集団に分かれなければならなかったであろう。そして、その下位集団の呼応す
貨幣:暴力と信頼の間
Ⅰ.『貨幣:暴力と信頼の間』の性格(まえがきより)
1.出版の背景について
①本書の源泉は『貨幣の暴力』(初版1982年,改訂版1984年);貨幣・金融における模倣衝動 (mimetisme)についてのテーゼ→今日でも妥当,重要性増してすらいる。
②金融についてはともかく,貨幣についての議論は旧態依然(道具的観念の支配);ユーロ→ 「貨幣とは何か」「それが持続的に受領される条件は何か」改めて問う。
③『主権貨幣』(1998年)→負債・信認・主権について新たな省察;新アプローチ(信認論) と旧テーゼ(模倣仮説による貨幣分析)の関係が問われる。
④当初は,『貨幣の暴力』の改訂版に向けて作業→計画の非現実性明らかに→全くオリジナルな 本を構想;模倣仮説への新しい表現,信認と主権の関係,近年の通貨進化の分析,を提示。
2.本書の目標
①理論……「信認(or信頼)的紐帯」という特殊な紐帯の分析を企てる;「信認なしに貨幣なし」。
②歴史……貨幣史の新しい読み方を提示:(1)抽象化(abstraction)の進行(金属との断絶→貨幣 =自己言及的コンベンション),(2)調整(regulation)の諸形態は2形態(集権化centralisation と分裂化fractionnement)の間を揺れ動く。
③金融政策の目標……目標=信認の維持;しかし,名目アンカー・インフレ阻止だけが要求される のではない。
Ⅱ.貨幣と商品に関する模倣仮説(第Ⅰ・Ⅱ章より)
1.価値論批判のモチーフ
・交換に先立って主体=主権を仮定(効用価値説)……完全な序列もった個人的選好表, 最適化求める欲望の同質性。
・価値論における社会性……交換関係を基礎づける社会的実体(個人の選択の同質性,経済物 に含まれる労働時間)が実際の交換に先立って存在;社会性は「他者に対する関係」としては定義 されない。
・価値論は制度(その最初のもの=貨幣)をとらえられない……「貨幣は,特殊な経済主体たちを 生成させる。なぜなら,彼らにおいて貨幣は根本的に差異あるものであるからだ。貨幣の媒介 (mediation)を通じて,諸主体は,彼らではないものとの関係,制度という社会的なものとの関係を 保つ」(p19)。
・求められる方法の転換……市場(marchand)社会の社会化プロセスに注意を払う;ie.交換を 社会化プロセスとして把握する;これにより貨幣の理論的定義が可能になる。
2.正統派経済学の交換表象について
・3つの仮定:
①ノマンクラチュール(nomenclature)の仮定(=交換される財のリストを事前に 定義しうる可能性)……理論的機能:使用価値生産の調整的役割(新しい生活様式をともなう 新商品の創発)を無視(社会的世界の外に放逐)し,価格決定のみに焦点を当てる。
②安定した,他の個人から独立した選好の序列を公準化……社会的承認を渇望する ことのない,他人に無関心な「ホモ・エコノミクス(ワルラス的個人)」;商品を独りで消費す ることだけが彼には重要。
③効用逓減の原理……慎ましやかな禁欲的個人のユートピア(→個人主義が勝利を収 めた世界);「他者との絆が不確実な中で生きる,競争的闘争を演じる現代人」(p22)ではない。
・一般均衡の安定:
・以上の仮定が描き出す世界=「社会的紐帯が既にしっかりと織り上げられている 世界:商品は与えられており,プレーヤー全員に完全に知られており,彼らのいずれもが「ど れだけに値するか」を知っており,それを過度には欲せず,これを増やしあれを減らすという 合理的裁定を行う旨を表明している」
・一般均衡とは,このような世界で「かくあるべし」が起きただけのこと(3仮説 からの自動的帰結)。
・制度的枠組の構造化が必要だが,それは無視される(cf.集権的計画もレッセ・ フェ―ルもアナーキーをもたらす)。
・貨幣的諸現象の理解との関係:
・交換のロジックには貨幣の需要入らない;貨幣の役割は交換容易化に限定される。
・本書の視角……主体の独立性・主権性をもたらすのは社会の貨幣化:「個人が他者との関係 に入るのは,貨幣の仲介による商品売買の機会のみである」(p24);∴新古典派が公準として いるものは,説明を要する:
ex.「使用価値が生産される仕方,個人の欲望,経済主体の独立性」
・本書の議論→市場社会形成の中心プロセスをなすところの貨幣の出現のみ を問題にする。
3.商品関係(rapport marchand)と商品の性質
・交換=商品交換とは限らない ……3つの交換のロジックあり:互酬(=贈与交換),再分配,商品交換(K.Polanyi); 商品交換に向かう自明の傾向はなし。
・商品関係の特異性:
| 交換される物は,元の所有者との結びつきを離れることがない(∴客体ではな い)。物の授受は魂の授受である。 | 商品は,売買する個人から根本的に解き放 たれているから,匿名的であり自由に移転可能である。 |
| 交換の特性は,「贈与に対する贈与」であり,与えられた物には義務(返済の 義務)が付着している。 | ひとたび交換が実行されてしまえば,諸個人は借りを 負わなくなる:いかなる義務も維持されることはない。 |
| 交換物は,人格の社会的アイデンティティ(出自,地位)を定義する役割を果た す。その保有は集団の尊敬を得させてくれる。 | 交換は,関与する諸個人の効用 を増加させることを目指して行われる。 |
・「純粋な物」への転換が前提……「商品」の生成:商品とはすなわち,「不活性で匿名的,効用 に捧げられた,自由に移転可能な(固有の属性を与えられているので),それを扱う諸個人および 彼らの社会的地位から独立な物」
・商品への関係……「厳密に私的な関係,商品と当該個人の間の純粋な差し向かい」(p43);他 者の選択は価格を通じてのみ関与;他者との関係は消滅し,物との関係に席を譲る。
・人間同士の関係……「交換者は互いには決して語り合わず,互いに接触することすらしない: 人間の間の唯一の媒介は商品であり,この媒介がすべての社会的実体を吸収している。人間の間の 直接的関係は完全に表面的なものになる」(p44)。
・商品関係の諸限界:
・社会関係の緊密なネットワークから「交換されるもの」を引き出す暴力的プロセス(p46-47):
ex.囲い込み運動→多様な人格的従属の紐帯である土地という媒体を破壊。
ex.新商品(自動車,電話)も旧社会関係を再定義する;人の胚の自由処分→心理的アイデンティティ,家族的帰属の問題を提起。 ・商品化がその人為的性質によって成功しないケース……①外部性,②「擬制商品」(p47-49)。
・商品的個人主義(p49-51):
・商品経済と個人主義的諸価値との特別な結びつき(前者が後者を媒介)→商品的ロジックの拡張力 を説明。
・対物関係(relation aux objets)の優位……個人主義イデオロギーの最も本質的な特性;社会 が課してきた義務からの解放への意志の表われ(個人主義的自由);対他者関係への警戒と対物 関係の選好(隣人に頼るよりも貯蔵物に頼る);こうした思想は,経済学が体系的に述べてきた もの。
・分離(separation)(p51-53):
・パラドクス的な社会関係……「他者との分離」へと専ら向かう傾向→他者アレルギー(社会生 活ないし連帯を隷属とみなす)へ。
・この商品的個人主義を理解するために→経済的債務の個人主義的レジームを考察……自発的に 契約された以外の債務は存在せず,手段さえあればいつでもそれから解放されうるという債務観 →「社会は個人に影響をもたず,どんな特殊な権力ももたない」ことになる。
・「生の負債」仮説(←全体論的社会の研究)における社会……「社会は,個人の存在に基礎を与 えるところの権利と義務のネットワークのうちに,個人を把捉している」;債務(本源的債務) は「良き生活」を定義し,返済の終わりがないことは「共同体の永続性」を表現している;返済 の免除は,社会的紐帯からの断絶を意味。
・本源的債務から経済的債務への移行……貨幣(→市場的個人を債務から解放させる)が媒介と なる;人格的紐帯を除去された個人は,全能の夢へ駆り立てられる→技術のみが限界とみなされ るようになる。
4.貨幣についての論理的仮説
・分離(という社会的事実)の諸特性(p59-63):
・分離の基本的次元=社会の根本的不透明性と予見不可能性→「不確実性」という言葉に集約。
・不確実性の破壊的効果……伝統社会においては親・隣人・近所の連帯があったので,不運な場合に は他人の支援を動員することが誰にもできた。このようなリスクに対する保証(assurance)のメカ ニズムがない市場社会では,不確実性の破壊的効果が大:
・個人には稀少性の法則が課される……稀少性は自然的条件ではなく,特殊な組織化(organisation) 形態(→各人の生存を物獲得の能力のみに依存させる)。
・経済学における「確率主義仮説」(不確実性を確率計算可能な「リスク」に還元)……そこでは, 「各個人が他者の行動に気を配る必要がなくなる:潜在的なランダム性の知識だけで十分である」。 個人の間を分離させるロジックである点,ノマンクラチュールの仮説と同じ機能。
・保護の要求(社会的欲求としての)(p64-66)
・不確実性の破壊的効果→保護の要求:
分離→不確実性・不透明性→排除の脅威を(一時的に)払い除けようとする要求 [=保護(protection),保証(assurance),安全(securite)の要求]
・保護の要求は何に訴えられるか?……特殊な商品の購入・蓄積では満たされない要求;要求は 市場集団そのものie.市場社会に向けられる。ここで社会とは,「諸個人の保護要求に対応する ことのできる特殊な力をもった,自律した機関(entite)」。この社会の機能は,(すべてが商品 で満たされる)新ワルラス理論にはない。
・貨幣の必然性について……保護要求に応える社会の積極的プレゼンスは多様な形態(法,伝統的 連帯,国家)をとる。市場社会におけるその特殊な形態が貨幣。商品的分離は貨幣なしには存在し えない(商品関係=貨幣的関係)。ただし,その解明に際しては,「物の(objectal)関係を離れ ること」が必要(D.Patinkinとの違い);ie.主権の機能を考慮。
・富と流動性(p66-74)
・富(richesse)とは?……「富」=保護の要求がとる「物の欲望の特殊形態」。匿名性・移転可 能性のロジックが尊重される。しかし,単なる物の関係の延長ではない;出現するであろう多様な 状況に応じて,不特定多数の要求(保有者が必要だと判断するもの)を満たさねばならない。
・流動性(liquidite)とは?……富の機能は自然的実体によっては果たされない。富に必要な属性 は,「集団の全成員によって受領される能力」,or「集団の満場一致欲望の焦点に位置する能力」。 貨幣=「社会的に承認され正統化された富」。
・富の両義性……自由・独立である半面,孤独・排除でもある(分離そのものにも当てはまる)。 どちらが強調されるかは,望まれる(vouloue)か,耐え忍ばれる(subie)かによる;予測は不可 能。
・物々交換(troc)の問題(p69-74)
・正統理論の交換観……「消費から得られる効用を求めてなされる物の交換」,「主権的で節度あ る諸個人,他者について不安を抱かず,他者に打ち勝とうとしない諸個人の間で結ばれる完全に平穏 な社会関係」。貨幣は,「欲望の二重の一致」という技術的困難に対処する容易化の手段(貨幣的 交換,道具的貨幣);受領可能性の問題は提起されない。
・批判……物々交換の可能性は否定しない(市場社会;価格に依拠した物々交換,原始社会;多様 な社会的参照基準に依拠した物々交換)が,参照基準なしの物々交換が安定的とは考えない(物々 交換≠安定的交換形態)。
・本書の交換観……物々交換の動機には,効用(商品)だけでなく流動性(取引手段)もある。 物々交換は,経済主体が「どんな仮面の下に富が隠れているか」を執拗に探索するプロセス(情報 収集を伴う)でもある。
・市場の原初状態(la situation marchande originelle)……危機の時期:効用の追求が消滅し, 流動性の差し迫った探索のみがなされる(F1が描き出す状況)。
・貨幣はどこからくるか?:模倣衝動プロセスのモデル化(p75-86)
*議論の枠組……「市場社会の貨幣的理論」(ie.歴史的移行を扱うのではない)。
*問い:「信念と利害の極端な分裂化から出発するとき,経済諸主体に共通な参照基準はどのように 構築されるのか」(p74)→ジラール仮説によって解明:
*R.ジラールの思考……「ロマン主義の虚偽」に対置される「ロマネスクの真実」:存在の欠乏に 苦しむ人間を想定,存在の不完全性の表現である模倣衝動(mimetisme)を人間の第一次的心理的 与件として重視。「主体―手本―対象」の3項関係から出発:主体と手本の距離から媒体 (mediation)を,①外的媒介(ドン・キ・ホーテ),②内的媒介[『こころ』の三角関係] に区別。
*市場的秩序への適用:
①ジラール的個人が妥当性もつ……富の探索を通じた自己の保護という要求は,ジラール 的な欲望。非市場的秩序には,正統理論の仮説が妥当。
②模倣衝動という概念は,富の自己言及的性質に適用される。
③存在の欠乏は,心理的要因(ジラール)ではなく,商品的分離による。
*F1(本質的暴力):
①F1の状況……「個人A・Bが,他者の欲望するものを所有しようとして,互いに観察し合 っている」状態。富という一個同一の物を求めているという点で,諸個人の差異は消滅 している。F1が全面化した状態:「明白な公的表現を課すところの社会的に通用する貨 幣が登場していない下で,社会の全成員の行動が完全に富へと向かっている」。
②F1の諸特性:
(1)分裂化(fractionnement)……F1は全面的な分裂化の状況→最も絶対的な不確実性 をもたらす:∵物の価値を決めることができない。
(2)差異消滅(indifferenciation)……旧来の差異化資源が役に立たない状況の下で, 財産価値保全の要求から誰もが模倣的探索を強いられる。
③批判的含意……市場的個人や物々交換に関する正統的な表象に対して,それらの不完全性, 暴力性,矛盾(敵対関係と紐帯の両義性)を対置。
*F3(創始的暴力):
①ジラール基本定理……「ルネ・ジラールの根本的に重要な発見は,本質的暴力がそれ自体 の内に自らの超克の諸資源を見いだすことを解明したことにある」。含意:行き着く先が,物理的 暴力の回帰でも,社会の終焉でもない点で,意外な結果;これは,模倣のダイナミクス(純粋に認 知的なプロセス)による。
②模倣的選出(election)プロセスの諸属性:
| ・プレイヤーの差異消滅・信念の一点集中(polarisation) ・選別された物の非決定(indetermination) ・最終状態の自己実現(満場一致の自動的再生産) |
・満場一致は極端な暴力状況である……F!においては,差異消滅はまだ隠されてい た;見いだされる多様な敵対性は富の欲望の偏った表現にすぎず,差異はいずれ消滅する二次的・ 従属的なものにすぎなかった。
・秩序と暴力の差異は些細なもの……「個人Aは個人Bに対して,そして相互に恨みを 抱くのを止める。なぜなら,2人とも,個人的敵対関係の唯一の原因が,知らぬ間に生贄が行使し ていた不吉な影響力にあることを突然に発見するからである」
④世界の変容:
・主体の認知的転換(模倣プロセスの内生的帰結として共通の参照基準が生み出さ れる→コンフリクトは消えないが,何についてのコンフリクトか分かるようになる);社会的転換 (内的媒介から外的媒介への移行が生じるため,模倣は不用になり,物に根を下ろした信念が行動 の基礎になる;「選別された物は,社会的に承認された制度の地位を獲得する」;これは排除 (exclution)と呼ばれる)。
・貨幣の生成……「市場社会は,差異消滅から抜け出し,満場一致で承認された媒介 (mediation)――制度としての貨幣またはF3――を獲得する」。
・貨幣の正統性(legitimite)(p84-86)
・「排除」は正統性を要求……「しかしこれらの理論[自己言及性に言及した理論]は,信念の 満場一致に至るプロセスについて何も語っていない。ところが,この満場一致が持続的媒介の地 位を獲得するためには,単なる偶然事として(すなわち模倣衝動の一時的所産として)認められ るのではなく,誰もがそれ以降頼りにすることができるであろう実在として,社会成員の眼に映る のでなければならない。選別―排除が社会によって正統的なものと認められねばならない。これを われわれは先に「排除」と呼んだ」
・効率性要因としての正統性……模倣衝動を導いてきた選択からそれるような「偏倚した意見」 が存在するとき,満場一致は必ずしも獲得・再生産されなくなる。このとき,貨幣経済を非効率に する不安定性が生じる。正統性は,同意の感情を生み,偏倚した意見を公にするのを阻止する働 きをもつ。
・模倣的競争のモデル(p86-89)
・F2(相互的暴力)……貨幣の論理的分析を構成する諸プロセス:「F1においては,富の追 求,模倣的差異消滅,本質的暴力;F3においては,選別―排除,そして最後にF2においては, 通貨間競争」。F2は,「私的諸勢力が新しい萌芽的通貨を通じて通貨制度[F3]を問い直そう としている」状態を意味。F2のプロセスは,F3が生み出すもの。
・模倣的競争モデル:「慣習的になされているように事前的に定義された商品を対象とするのでな く,富を対象とするときに明らかになる競争諸力のダイナミクス」……その意義:投機のダイナミ クスや通貨間競争(F2)を考えるとき有用。その基本的特性:「プレイヤーの差異消滅,信念の 伝染,均衡の複数性,満場一致の自己実現」。
Ⅲ.信認の役割(第Ⅲ章より)
1.貨幣の全体論的(holiste)次元(p98-102)
・根源的な理論的問い ……「個人的利害のみを追求する諸個人から成る社会は,どのようにして,万人の万人に対する 全面的戦争,およびカオスに至らずにすむのか?」→答え:「貨幣によって」:
・貨幣の能力……「貨幣は外在性(exteriorite)の位置を占めるこ とによって,このことに成功している。……貨幣は,「私的」と呼ばれるものを構成するところ の敵対的諸主体の総体よりも階層的に上位にある,無比の力としての社会を代表している。社会 的総体性を表現または代表する貨幣のこうした能力は,満場一致の模倣的一点集中の作用によって 獲得される。このことによって,生産者―交換者の全員に対して,貨幣は,集団を構造化する創始 的規範として現れる」。
・テーゼ:貨幣=社会的総体性の表現:
・正統理論の考え方……①「貨幣の中立性」命題の役割:(1)貨幣と発行機関の存在を認識,(2)商品 関係は経済行為者の私的意志によって専ら支配される,という2つの要求を調停。②貨幣を廃止し私 的支払手段間の競争を導入する提案:貨幣的現実を個人主義的価値と折り合わせる(需給法則の作用 を交換手段の生産に拡張する)試み。
・原始社会の研究(Mauss,Simian)はテーゼ確認;しかし,現代貨幣との間に距離あり;現代におい て重要な問い:
「個人主義的諸価値の影響力の下で現代の社会的総体性が形成されるときの非常に特殊な仕方」は?
2.信認の役割とは?(p102-104)
・ジンメルの議論……貨幣の抽象化(シンボル媒体からの分離)を 考慮(→価値論否定を含意);貨幣=社会的抽象に対する主観的態度を信頼(信認)(confiance )と呼ぶ;「信頼,すなわち,交換において,貨幣が各人の知らない第三者によって受領されるで あろうということを公準化すること」[=一般的受領信頼]
・信認の問題とは?
・信認および制度的次元に力点を置く考え方→表券主義ないし制度主義アプローチに属する(cf. 金属主義・リアリスト)
・信認は契約ではない……「信認は個人間関係ではなく,集団(collectivite)総体に対する各私的 主体の関係である。この関係は制度主義アプローチにおいて重視される。なぜなら,そこでは貨幣と は,支払共同体という交換者の集団を代表するものだからである。信認は,貨幣の無条件な受領性と なって表明される」
・信認維持という調整(regulation)問題……受領性は「自然的に」維持されるものではなく,通貨 危機の中では攪乱,さらには破壊される。「信認の維持は,最高度に重要な調整問題と見なされねば ならない」
3.信認の3形態(p104-106)
①首尾一貫性(methodique)信認……規則性(regularite)の所産: 「交換を上首尾に遂行し私的債務を返済するという行為が繰り返されることに由来する」。これを 支える実際の市場での実践(ルーティンと伝統):「金融取引の中で発せられる言葉(parole)の 尊重,相互保証を生み出すクラブ的心性,組織的市場における健全性規範の受け入れ」
②ヒエラルキー(hierarchique)信認……「貨幣のパワー(pouvoir de l'argent)」による敵対的関係が吹き荒れるとき(ex.金融革新,健全な行動の軽視),①は 重要でなくなる。ヒエラルキー信認の対象:(1)国家の経済活動(主権的ロジックに由来):「公的 権力による社会成員の保護という名目でなされる,移転・徴収・支出に関する正統的な権力」,(2) 主権性の刻印を押すところの「帰属のシンボル」。
③倫理(ethique)信認……②は①よりも上位にある(政策当局はルール 変更の権限をもつ);だが当局による通貨的調整は任意なものではなく,国際化の盛衰とともに変化 する。さらに,当局の通貨への影響行使を制約するもの:(1)個人主義の諸価値(合理的人格,自 発的取引以外の社会的紐帯からの解放),(2)倫理的態度(個人的理性のうちに内面化された義務と しての,人格の満足感)。こうして,貨幣をめぐる政策は,「貨幣的秩序(ordre monetaire)」に 順応せねばならなくなっている;20世紀の貨幣的秩序には,賃労働の全面化,社会権の展開,が含ま れる。
貨幣:暴力と信頼の間
Ⅳ.貨幣諸機能の基本原理(第Ⅲ章より)
1.考察視角(p106-107)
・F3についての問い……F3のロジック(選別―排除による,社会的承認の集権的原理の形成) →隠される(←正統性を主張するため)。理論的分析は回帰的解読でなければならない。
・F3の基本機能=計算単位……(1)富を表す物は一定程度まで準備・流通の手段になる,(2)貨幣 として社会的に承認された富だけが計算単位になる。
・価値は社会に由来すると考える(「流通→価値」のアプローチ);他方,F3形態へのアクセスが 準備・流通の機能を変化させる。
2.計算単位と抽象化(p107-108)
・社会の次元……計算単位の規範的作用→通貨空間(市場的共同体)の構築。この中でF1の「差 異消滅」は,私的なものと社会的なものの「分離」へ転換される(貨幣創造が重要になる)。計算 単位の確立は「抽象化プロセスの永続性」を保証する。
・暴力の痕跡が消滅……計算単位は「観念貨幣」,純粋な慣行として現れる→「人間の巧智による 自然的な所産」であるように見える。
・しかし,等価性のロジックは暴力の論理;∵私的/社会的以外の差異をなくす。このロジックは 集権的規範への従属を含意し,統合/排除のプロセスが存在することを必要とする。その形態が残 高支払制約(規範No)。
3.流通手段と集権化(p109-112)
・F3からF1への回帰(F1は商品流通の基本形態に転換)……F1の分離は,(1)維持される(売りと 買いの分離)と同時に,(2)転換を遂げている(逆向きの反対称的な2つの関係の暴力的中立化); 本質的暴力は貨幣制約に転換している。
・金銭の欲望は,「社会的に承認された効用をもつ商品を低コストで供給すること」によって追求 される→「旧来の社会関係の再定義―破壊の複雑なプロセス」進行(→個人主義的関係の拡張に間 接的に寄与)。
・流通手段の社会的重要性……多産性(fecondite)ゆえに,「商品の共同体にとって本質的な重要 性をもつ」;他方,「中断の可能性なしの運動」という幻想(実際には,計算単位機能が維持されて いる中で,取引手段が探索されることある)から,「シンボル的貨幣」(交換を容易化する純粋な 慣行)が語られるようになる→貨幣の脱物質化のプロセスが進行し,生産の首尾一貫性のみが研究 対象になる;銀行支払手段の集権化はこのプロセスをもたらす。
・交換についての物神崇拝的見方……①商品流通を広大な辞書に喩える「記号の経済学」;② 貨幣記号(章標)の中立性を指摘する「純粋経済学者」。これらは,流通の形態のみに関心を寄せ ているか,結果だけを強調する議論。
4.準備手段と調整(p112-115)
・上の2つの見方は誤り;∵「商品流通は閉じられることがない」。売りが買いの理由にならない 以上,W―G―Wの中断,∴「実在の貨幣」の蓄積(準備手段)は必然的。
・準備手段=「私的権力(貨幣のパワー)の源泉」(前2機能が集合財であるから,貨幣の両義性 見いだされる)……理由:流通におけるイニシアチブ→このイニシアチブが「商品交換の規則性を 攪乱することによって,市場の安定を脅かす」。∴通貨供給について調整(regulation)が必要 (退蔵抑える必要あるが,通貨供給をタイトにしすぎると「通貨飢饉」招く)。
・別のルートにおける準備手段の重要性……基本的債務関係(生産者と商人)において,生産者 (債務者)は一時的に規範N0を遠ざけることができるが,市場の不確実性の下で商人(債権者)は 流動性リスクに直面する→帰結:債権者は小額しか貸さなくなる(予備現金を増やす);信用拡 張への事前的障害の出現。「債権者/債務者関係総体の調整において,すなわち制約N0の強さが 調節される仕方において,準備通貨は重要な役割を演じる」。
5.中央銀行(p115-119)
・「抽象的計算単位」のシステムにおいて,流動性の制約を緩めるように貨幣発行できる主体は, 中央銀行……決定的な問題は「発行ルール」:「ここにあるのは,単なる技術的な問題ではない。 どんな債務およびどんな権利が発行機関によって貨幣化されうるのか,またそれがどんな目標に対 応してなされるのか,についての決定は,……市場共同体の諸価値を表している」。ex.賃労働者 の全面化,株主層の発展→通貨のルールに影響。
・社会的総体性と通貨のルール……仮説:「貨幣は社会的総体性の表現」→その具体的形態:通貨の ルール。通貨のルールは全社会的なプロジェクトを表現。このプロジェクトに対する同意が倫理信 認。倫理信認が中央銀行の行動を基礎づけている:「貨幣は,価値を共有するシステムとして交換 者共同体を代表する能力から,その調整能力を引き出す」:
・現代社会では……異質な債務V(i,j)の2形態(経済的債務,社会的債務)に示されるよう に,資本主義は2つのロジック(私的債務を妥当化validerすることによって社会が承認する私的 富,社会的債務の基礎をなす社会的凝集性)に分割されている;「通貨制度は2つの異質なロジッ クを結合する位置にある;というのも,社会的債務と経済的債務は,1つの通貨空間の内部で同じ 計算単位によって,互いに表現し合っているからである。この点で,貨幣は社会の統一を生み出す のに寄与している。発行ルールの主要な側面とは,この2タイプの債務における差異ある貨幣アク セスが組織化される仕方である」
・貨幣的調整のまとめ……①狙い:「過度に排他的な準備通貨の追求が生み出す緊張に対して,経 済を感応的でなくさせること」,②通貨が享受する正統性が調整の自由度を決定する。
Ⅴ.通貨システムを解明するための諸概念(第Ⅴ章より)
1.流動性選好(p169-177)
・準備通貨は経済全体の進行に影響を与える←「生産水準の決定において≪流動性選好」が果たす 役割」から明らか。
・流動性選好の考察から分かること:①「貨幣は,経済活動を行う者に対して≪適当な距離」を とらないといけない,すなわち遠すぎても近すぎてもいけない」(貨幣の両義性の新たな表現), ②流動性選好(PPL)が同水準のとき経済への影響を左右するのは,通貨的組織化がとる諸形態:
| 流動性選好が生産水準に与える効果のパラメータをkと するとき,kは流動性選好(PPL)および通貨組織化の諸形態(w)によって決まる: |
2.通貨システムの抽象的構造(p177-192)
・流動性の両義性と通貨システム
| 貨幣の…が支配 | 信用条件の… | |
| 分裂的(fractionne)システム | 「少なすぎ」 | 分裂化 |
| 同質的(homogene)システム | 「多すぎ」 | 集権化 |
・貨幣アクセスの条件における差異(格差)大。
・債権者は,①債務者の経営に対して支配力を行使する点,優位,しかし②流動性リスクに直面。
・PPLの高まったとき……その影響は最大;∵V(i,j)が非流動的,債務者におけるリスク・テ ークの危険が高まる。
・私的経済から離れすぎ……①欠点:通貨飢饉の恐れ,②私的敵対関係(rivalite)に巻き込まれ ずにすむので,貨幣の正統性は守られる。
・債務者サイドから発行(発券)独占を問い直す動きが生ずる……多様な手段があるが,いずれも 制約N0を回避しようとする動き。結果:「F2の回帰」or「通貨間競争」すなわち新しい支払手段が 局所的にであれ広く流通するようになる。
・同質的システムの特徴:
・「私的金融が専らそして直接的に中央銀行によって確保される」通貨組織……中央銀行(X)の 評価が直接に社会的妥当性をもち,債権U(i)が貨幣に転換されている。
・選別―排除の特殊条件(暴力プロセス)は後景化。しかし,発行貨幣がすべて流通現金に転換さ れることはなく,2つの債務回路には残高(退蔵)が発生→金融需要と残高需要の両者に応えると いう困難な調整問題。
・この上なく流動的な預金形態を提供するため,kは非常に小さくなる。
・「中立性」の外観にもかかわらず,新たな暴力が発生する可能性あり……コンフリクトは「退蔵 主体と赤字主体の分極化」へ転換,その対象は「貨幣そのものおよび発行ルール,つまり貨幣の正統 性」→ハイパーインフレの分析によって示されるもの。
3.私的流動性:金融と銀行(p192-208)
・債権の二元性と調整問題
*貨幣の両義性(公共財/私的専有権力)に対応して,債権には二元性(固定化/流動的)あり。
*2つの抽象的システムにおける流動性の問題:
・分裂的システム……流動性の絶対的不在;債権者の管理権大。金融的流動性の問題(「債権V (i,j)の社会的に承認された評価を出現させることによって,債権者間でそれを容易に流通させる ようにする」)を提起。
・同質的システム……絶対的な流動性;債権者は債務者の状態に関与せず。債権の流動性と債務 者の状態との間の大きすぎる隔たりという問題に対処するために,銀行流動性の組織化(「発行機 関が定めたルールに従い中央貨幣に転換可能な私的貨幣を発行する権限を与えられた私的機関へと, 貸付の意思決定を分権化する」)に取り組まなければならなくなる。
・金融流動性
*組織された金融市場という制度的創発を伴う……資産を譲渡可能にするための基準評価が形成さ れねばならない(集団的評価の形成)。
*証券流動性の支配する市場において,投資家は「自己言及的合理性」に従って行動する。ここに は,流動性を求める競争の最も抽象的な形態であるF1に見いだされた諸属性が見いだされる:「主 体の差異消滅,均衡の複数性,信念の自己実現,模倣の一点集中」。このプロセスの中で,模倣は 満場一致で一定の信念へと一点集中する;これが「金融的コンベンション」であり,その効果を媒 介にすることによって,投資家は流動性を追求することができる。
*中央銀行の役割……大規模な予見されざるショックによって,「支配的なコンベンションの正 統性」が問い直されたとき,中央銀行が危機を抑制するための行動をとる。ie.流動性選好が最終 資産である貨幣に集中して,証券価格が急落していくとき,中央銀行は買い手として介入する→ 「底値がある」というメッセージを伝えることにより,待機している買いを誘発する。
*金融を支配する階層システム……「中央銀行が演じるこうした最後の貸手の役割は,金融流動性 と貨幣とが同一平面にないこと,後者が前者を支配していることを明白に示している」。この金融 組織を「金融支配の(a dominant financiere)階層システム」と呼ぶ。
・銀行流動性
*支払手段の集権化[準備の集中]によって債権者への流動性サービスが可能になる→「固定 /流動」のジレンマが回避される。
*預金取付の問題……債権者の選択は銀行の存在によって(内生的に)変化するとはいえ,債権 者は他者の意見への関心をもちながら行動する。模倣プロセスを考慮したとき,債権者の合理的な 行動の結果は複数の均衡(①最適均衡,②パニック均衡(銀行取付))をもつ。
*中央銀行の役割……中央銀行は②を阻止すべく,多様な方法(預金保険,LLR)で行動する。銀 行の行動に対する信頼は,パニックの原因を事前に除去する。
*銀行を支配する階層システム……「銀行流動性は通貨原理に従属している」。これを「銀行支 配の(a dominant bancaire)階層システム」と呼ぶ。
・まとめ
①私的流動性の2形態の効果……固定/流動のジレンマ(金融収益の最終的源泉である投資の固 定化/債権者の要求である投下資本の流動性)を乗り越える。
②通貨システムの効率性とは?……「市場諸主体の流動性選好によりよく対処する,かと言って 経済発展を絶えず危うくするようなことは避ける」
③通貨上の革新(組織的市場,中央銀行制度)は,債権者の相互作用の構造を変化させた→模倣の 諸属性が妥当。
④中央銀行の役割……流動性の諸形態の導入は新しい均衡(ファンダメンタルから切り離された 投機,銀行パニック)=コストもたらす。各流動性を性格づける特殊な媒介(mediation)(金融コ ンベンション,銀行規範)は,安定化は達成できない。そこで「ゲーム外の行為者にして貨幣的正 統性の保持者」である中央銀行が調整的役割を果たす。
・現実のシステム=「複合的階層システム」 →銀行・集権化のロジックが支配的な「銀行ロジックに従う複合的階層システム」と,金融・ 分裂化のロジックが支配的な「金融ロジックに従う複合的階層システム」とに区別される (→第Ⅶ章)。
Ⅵ.貨幣信認の諸源泉(第Ⅵ章より)
1.シンボル的源泉(p209-211)
*シンボルの作用……共同信念の一点集中を強める。「シンボルの論理とは,模倣の収斂プロセス に支えを与える一点集中の論理である」。
*「社会総体の代表としての貨幣をもたらす選別と排除という理論的ロジック」は:
・「国家の主権性を祝福する式典や,宗教的・世俗的な儀式によって上演される」。
・「主権のイメージである紋章や肖像によって繰り返し記憶に喚起される」。
*平穏な時期には,安全性についての信念が「首尾一貫性信認」をもたらす。この信念の作用は, 帰属の様式。
2.倫理的源泉(p211-214)
・金融政策の行使条件を定義するには,シンボル的源泉だけでは不十分。
・通貨主権への異議申し立て (私的通貨の創出,金融グローバリゼーション):その背景:
・商品関係が,集団的なものから私的なものを分離させてきた→貨幣的調整の特定のレジームは 私的諸利益を侵害するものとみなされる。
・あらゆる社会関係への商品の浸透が,個人主義を後押ししてきた→「個人的満足が主権のシンボル よりも支配的な価値となり,自律性への欲望が共同的帰属への信仰を掘り崩すようになった」。
・金融政策(ないしヒエラルキー信認)が直面している問題 ……「主権がなくて困っている中,金融政策は自らの正統性を証さなければならない」→正統性の 源泉は義務(devoir-etre)のうちに求められねばならない。
・「原理(principes)」の必要性 ……「個人の満足最大化に集合行為を従わせる」という要請は,原理――「金融政策のパフォー マンスを評価するのに適切なタームにおいて,貨幣の調整に関して判断することを可能にしてく れる」諸原理――として表現されねばならない。ただし,この原理は厳密に定義されるものでは ない(貨幣の両義性のゆえに)。
・3つの原理:
①保障(garantie)の原理(名目アンカー)
*この原理の本質……「時間の中での計算単位の統合性」,「時間を通じての計算単位の永続性 は,経済フローの連続性にとって必須である」。
*計算単位のパフォーマンスが不確実性であることの悪質な作用……①私的敵対関係が激化する (債権者が私的保障要求[金利負担への織り込み]→債務者の抵抗),②経済見通しの短縮化。名 目アンカーは,①に対しては公的保障の提供,②に対しては貨幣価値を予測する際の安定した参照 基準(購買力コンベンション)をもたらす。
*取引財における革新は購買力コンベンションを免れるようになる→そこで中央銀行は:
(1)保障原理について解釈を与えるとともに,
(2)公表されたインフレ目標を近い将来にわたって堅持しなければならない。
②成長の原理(完全雇用)
*この原理の公準……「金融政策は,社会が富を創出するために,全資源を動員することを可 能にしなければならない」or「繁栄の約束」。
*この原理は「完全雇用」の要求として表明される。
*個人主義の力と対応して,この原理の採否は国によって分かれる:
・第二次大戦後のヨーロッパ……この原理は公的移転(連帯)によって担われる。金融政 策は①のみ担う。
・米国……完全雇用を金融政策の目標に据える。
③公正(justice)の原理
*金融政策の正統性基準として定義はまだ不十分。
*背景……資本主義において,信用アクセスは非常に不平等。規制の変化は,信用アクセスの 拡大を促す方向で進められてきた(金融グローバリゼーション)。金融政策がこの動きに影響さ れるようになっている。例えば,信用のダイナミクスと結びつきをもって資産価格が上昇するよ うになり,健全性規制・監督が進められる;これは,私的リスク管理に,したがって「首尾一貫 性信認」に影響を与える動き。
3.分析から得られた金融政策についての一般的な知見(p214-216)
①正統性の再構築へ向かう動き
・ここ30年の転換を画した諸プロセス(「社会生活への商品関係のよりいっそうの浸透,個人主義 の興隆,金融グローバリゼーション」)の帰結……主権性の衰退(→既に70年に金融政策を弱体化 させていた),正統性への根本的な疑念(←打ち続く危機)。
・現在の動き……正統性は倫理的諸規範に基づいて再構築されつつある。「主権のシンボル的な源 泉の弱体化,倫理的基準に応えようという要求は,大きな制度的変化を引き起こしてきている」; ie.独立した中央銀行への,金融政策責任の委譲。
②3原理の間の裁定
・問題の本質……社会成員の信認を通じて社会的凝集性を図ろうとする「極度に政治的な問題」。 金融政策のスタイルも全くまちまちだろう(裁量によるか,緊張状態に対して静観する柔軟な態度 か,私的行動に対して予想が立てられるか事後的な反応か)。
・民主的討議の不可避性……「独立性」はオペレーショナルなレベルの問題。倫理的基準に照らし た評価は,社会が行わねばならない。この点で,欧州通貨は危険性を抱えている:「この媒介の不 在」(主権的な立法審級を明示的に代表していないこと)は「危険である。なぜなら,それは中央 銀行の責任を途方もなく大きなものにしてしまい,中央銀行を,組織された討議によりもむしろ世 論の拡散的な批判に従属させてしまうからである」。
Ⅶ.本書の特徴と活用
・特徴:
・貨幣についての模倣仮説と,信認論の関係がよくわかる。
・単なる貨幣生成論ではなく(価値形態論の詳細な展開はなし),市場社会の貨幣的分析がなされ ている;抽象化プロセス,商品経済と個人主義的諸価値の並行的発展,市場社会独特の保護の要求 とその満足の仕方。
・流動性の概念,模倣プロセスの諸属性の考察がもつ広範な射程が提示されている。
・(分裂的・同質的)という通貨システムの理念型的考察に,私的流動性(金融流動性,銀行 流動性)の考察を接続させて,現実の通貨システムにアプローチしようとする試み。
・貨幣信認の形態論だけでなく,その源泉論を提示した。
・活用の展望:
・今回の報告は,概念的な流れについてだけ。様々な事例についての考察は,これから消化して いきたい。
・現代の貨幣における信認の重要性は,うまく説明されているので,これを根本的な視座として 考えてみたい。
・私的流動性の諸概念に基づく自由化された金融の分析は,今日の通貨システムの問題(21世紀 型危機に対処する新アーキテクチュア)を理解する上で有益。
・信認の諸源泉(特に倫理的諸源泉)の考察は,ユーロとドル(および両者の関係)の現状と行 方を考える上で重要な論点を提供している。

カール・ポランニーの社会経済思想と「複合社会」像 同志社大学大学院 経済学研究科 博士課程(後期課程) 経済政策専攻 2012 年度1101 番 笠井 高人
返信削除https://doshisha.repo.nii.ac.jp/?action=repository_action_common_download&item_id=1197&item_no=1&attribute_id=21&file_no=2
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ピラミッド
a general typology. Benjamin Cohen (2004), for example, builds a ‘currency pyramid’ with seven categories of national currencies depending on their autonomy and power, and dedicates the last chapter of his book, The future of money, to ‘new frontiers’ in which he develops ‘local money’ and ‘electronic money’. Historical and anthropological work, when confronted with a different viewpoint, can more readily relativise the obvious facts about modern moneys. The scientific outlook does not only focus on the phenomena because of their magnitude, but also because of what their specific features signify. In the same way, paying attention to the burgeoning of nonbank and non-State moneys since the 1980s does not involve addressing the large-scale phenomena (since for the most part they are still not quantitatively widespread) but in identifying schemes whose features raise questions about the social representation of money today and even about learned considerations on money. Examination of these moneys raises the need for categorisation so that some things can be distinguished and others put together. This is an especially active approach for scholars interested in the dynamics of monetary innovation over the past 30 years and also for the actors directly involved, who also need these insights. Drawing on the attempts to categorise complementary and community currencies that have developed since the 1990s, one can keep a few requirements in mind (DeMeleunaere and Blanc, 2007). First of all, with respect to community or complementary currencies, a distinction must be made between typology of items and typology of systems. The latter consists of identifying coherent systems combining a series of elementary items. Secondly, a general typology of monetary systems should be established prior to any specific typology of community or complementary currencies. Thirdly, the relevant typology must be flexible enough to have scope for innovation through the development of new systems. In previous works, I have tried to go beyond items and focus on p
返信削除一般的な類型論である。 例えば、ベンジャミン・コーエン(2004)は、各国通貨の自律性と権力に応じて 7 つのカテゴリーに分類した「通貨ピラミッド」を構築し、『貨幣の未来』(The future of money)の最終章では、「ローカル・マネー」と「電子マネー」を開発した「ニュー・フロンティア」に焦点を当てている。 歴史学や人類学の仕事は、異なる視点に直面したとき、現代の貨幣に関する明白な事実をより容易に相対化することができる。 科学的な視点は、現象の大きさだけではなく、その具体的な特徴が何を意味しているのかに注目する。 同様に、1980年代以降に急増したノンバンク貨幣や非国家貨幣に注目することは、大規模な現象に注目することではなく(ほとんどの場合、まだ定量的には普及していないため)、その特徴が今日の貨幣の社会的表象や、貨幣に関する学習的考察にさえ疑問を投げかけているスキームを特定することである。 これらの貨幣を検討することで、あるものは区別でき、あるものはまとめられるように分類する必要性が出てくる。 これは、過去30年間の貨幣イノベーションのダイナミクスに関心を持つ学者にとっては特に積極的なアプローチであり、また、これらの洞察を必要としている直接関与するアクターにとっても積極的なアプローチである。 1990 年代以降に開発された補完通貨とコミュニティ通貨を分類しようとする試みから、いくつかの要件を心に留めておくことができます(DeMeleunaere and Blanc, 2007)。 まず、コミュニティ通貨や補完通貨については、項目の類型化とシステムの類型化を区別しなければならない。 後者は、一連の基本的な項目を組み合わせた首尾一貫したシステムを特定することからなる。 第二に、共同体通貨や補完通貨の具体的な類型論に先立って、通貨システムの一般的な類型論を確立しなければならない。 第三に、この類型論は、新しいシステムの開発によるイノベーションを可能にする柔軟性を持っていなければなりません。 これまでの研究では、項目を超えて、通貨システムに焦点を当ててきました。
返信削除https://halshs.archives-ouvertes.fr/halshs-01555623/document
Making sense of the plurality of money: a Polanyian attempt Jérôme BlancTocite this version:
(2): 82–96. Polanyi, K. 1944. The Great transformation: the political and economic origins of our time. Boston: Beacon Press.
返信削除Polanyi, K. 1957. ‘The Economy as Instituted Process’. In Trade and Market in the Early Empires. Economies in History and Theory, edited by Karl Polanyi, Conrad M. Arensberg, and Harry W. Pearson, 243–70. New York, London: The Free Press, Collier-Macmillan Ltd.
Polanyi, K. 1968. Primitive, archaic, and modern economies: essays. Edited by George Dalton. Garden City, N.Y.: Anchor Books. Polanyi, K. 1977. The livelihood of man. Edited by Harry W. Pearson. New York, San Francisco, London: Academic Press. Rulau, R. 2000. Latin American Tokens: An Illustrated, Priced Catalog of the Unofficial Coinage of Latin America--Used in Plantation, Mine, Mill, and Dock--from 1700 to the 20th Century. Iola, WI: Krau
Cohen, B J. 2004. The future of money. Princeton, Etats-Unis d’Amérique.
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