C. A. Phillips, Bank Credit, 1920
以前に引用した古川さんの本に「銀行システムにとっては、預金は主に貸出の結果であるが、個々の銀行にとっては貸出は預金の結果である」というフィリップスの命題が「有名」と書いてある。知らなかった。有名なのか。そもそもフィリップスの本そのものが簡単に入手できない。
テキストブック 現代の金融(第3版)
著者: 古川 顕2014
幣量の乗数倍の変化を引き起こすという意味で、それは非常に "強力な貨幣"
とみなされるのである。
(8) 式に示される貨幣乗数公式は、 先の信用乗数理論における (2) 式と
まったく同一であることが容易に確認できる。 信用創造の仕組みを説明するた
めに用いた図表 8-9からわかるように
α =⊿C/AD=(1-k)/k(ただし、 ⊿C/AD=C/D)
であるから、kをαについて表すと、
k=1/(1+α)
となる。 この式を先の (2) 式に代入すると、 (8) 式の貨幣乗数公式と (2)
式が一致し、(5) 式の関係を考慮すると、 信用創造理論と貨幣乗数理論は
まったく同一であることが理解できる。
かつて信用創造理論の創始者フィリップスは、 「銀行システムにとっては、
預金は主に貸出しの結果であるが、個々の銀行にとっては貸出しは預金の結果
である」 (C. A. Phillips, Bank Credit, 1920, p.64、 圏点は原文ではイタリック)
for the banking system deposits are chiefly the offspring of loans. For an individual bank loans are the offspring of deposits.
という有名な命題を提起した。 それは、以上のような信用乗数理論、 あるいは
それと同じ貨幣乗数理論の核心を突いている。 フィリップスは、銀行組織全体
としてみると、預金の大部分は貸出しによって創造されるけれども、個々の銀
行についてみれば、受け入れた預金こそが貸出しの源泉だと主張する。 こうし
て彼は、信用乗数理論 (貨幣乗数理論) は、いわゆる総合の誤謬(fallacy of
composition) の一例とみなすのである。
以上の信用乗数理論あるいは貨幣乗数理論は、 現在においても最も有力な貨
幣供給の理論として必ずと言ってもよいほどマクロ経済学や金融論で取り扱わ
れている。けれども、 それは一種の理論的な"虚構" であり、大きな問題があ
るように思われる。
[第8章注]
1) 日本銀行の最高意思決定機関である政策委員会は、合計9名 (総裁1名、副総
裁2名、 審議委員6名) から構成される。 このほか、政府代表2名(財務省と内
閣府) が必要に応じて政策委員会に出席して意見を述べ、また議案提出と議決延
期請求が可能とされている。 総裁と副総裁は、両議院の同意を得て内閣が任命、
232
審議委員は、「経済又は金融に関して高い識見を有する者その他の学識経験のある
者」のうちから、 両議院の同意を得て内閣が任命することとなっている。 以上の
任期は5年である。 政策委員会の構成メンバー (総裁、 副総裁、 審議委員)に加
えて、日本銀行の役員として理事6名以内、 監事3名以内および若干名の参与が
置かれる。 理事は総裁および副総裁を補佐して、 日本銀行の業務を掌理するとさ
れ、監事は日本銀行の業務を監査し、 参与は、日本銀行の業務運営に関する重要
事項について、政策委員会の諮問に応じ、 または必要と認めるときは、政策委員
会に意見を述べることができる、とされている。 理事および監事の任期は4年、
参与は2年である。
2) 大量の国債の日銀引受けがハイパー・インフレをもたらした典型的な事例とし
て、1930年代の高橋是清蔵相のもとでの財政政策運営、いわゆる高橋財政(1931
年12月~1936年1月) が挙げられる。 少し長くなるが、 是非とも説明しておきた
い。
1930年代前半には、 世界恐慌の影響や金解禁 (1930年1月) による不況という
二重の打撃によって日本経済は深刻な不況 (昭和恐慌) に陥った。 だが、 高橋蔵
相のもとでの財政支出の大幅な増加を主因に、財政の大幅な国債依存が続く中で
景気が順調に回復し出した。 しかし、 35年に入って、景気の拡大につれ財閥系銀
行を中心として銀行貸出が増加すると、 これまで大量に国債を買っていた銀行は、
それを買わなくなり、 銀行の国債保有額の増加率が急低下した。 こうした状況の
もと、高橋蔵相は35年7月に声明を発表し、「公債の消化は行き詰まり、 結局印刷
機械の働きに依り財源の調達を図らざるを得ず所謂悪性インフレーションの勢を
生ずるであろう」と警告した。
いわゆる
いきおい
けれども、2・26事件以後、 軍事費を中心に財政支出は膨張を続け、 財政支出は
37年7月の日中戦争の勃発によって著しく増大した。 その一方、景気の拡大が続
く中で、 銀行が貸出しの増加に対応して国債の日本銀行からの購入を大幅に減ら
したため、国債の市中消化は次第に困難となった。 こうして、膨大な軍事費調達
のために大量の国債の日銀引受け発行を余儀なくされ、それによる通貨量の膨張
が悪性インフレーションをもたらした。 インフレ率は36年の4.2%から、翌年には
実に21.4%に達した。 日本の財政史に残るこの一事は、 高橋是清が警告したように
「印刷機械の働き」の恐ろしさをわれわれに教えてくれる (以上は、岡崎哲二氏の
233
64
BANK CREDIT
of any given bank, (bank A in the diagram, for exam-
ple,) also result in derivative deposits for that bank of
such magnitude that, if added to the primary deposits
made in bank or group of banks B, as a result of the
loans made by bank A, will equal the loans made by
bank A. It follows that for the banking system deposits are chiefly the offspring of loans. For an individual bank loans are the offspring of deposits.
How the Withdrawal of Cash from an Individual Bank
Effects a Wide-Spread Contraction of Loans and
Deposits
The explanation given of the way in which an in-
crease in the cash holdings of a bank results in a general
expansion of loans also enables us to understand the
way in which the withdrawal of cash from a bank
tends to effect a general contraction of loans. A depos-
itor's withdrawal, for export, of cash of $1,000,000, let
us say, from bank A in the diagram would normally
require bank A to contract its loans, not by $1,000,000
but by $1,097,560.97; otherwise its cash-deposits ratio
would be distorted. Since the loans gave rise, during
the loan period, to a derivative deposit of 20 per cent,
the loan contraction of bank A, amounting to $1,097-,
560.07, would draw in cash of only $878,048.78 from
the other banks in the system,-in a fashion just the
reverse of the way in which that cash became distrib-
uted; and bank A, after losing the $1,000,000 in cash
would be in the same situation as before its receipt as a
deposit and the consequent loan expansion. The dif-
ference between $1,000,000 that the bank would lose
and $878,048.78 that would be drawn in through loan
64
銀行の与信
ある銀行(例えば図中のA銀行)のデリバティブ預金は、その銀行にとって
また、その銀行のデリバティブ預金は、主要な預金に加え、その大きさが
の主要な預金に加えれば、そのような大きさのデリバティブ預金となる。
銀行Aによる融資の結果、銀行Bまたは銀行群にもたらされた一次預金に加えれば
A銀行が行った融資の結果、B銀行またはB銀行グループの一次預金と合算すると、A銀行が行った融資と同じになる。
銀行システムにとって、預金は主に、A銀行が行った融資の子孫である。
は、主として融資の子孫である。個々の銀行にとって
銀行融資は、預金の子孫である。
個々の銀行からの現金引き出しが、どのように広範な収縮をもたらすか
貸出と預金の広範な収縮に影響を与える
預金
を説明した。
というのは、ある銀行の現金保有高が増加すると、その分貸出金が拡大するからである。
また、銀行から現金が引き出されることで、貸出が拡大することを理解することができる。
銀行から現金が引き出されることによって
の現金引き出しが融資の全般的な縮小をもたらす傾向があることを理解することができる。預金者
を引き出したとする。
図中のA銀行から100万ドルの現金を引き出したとすると、通常、A銀行は融資を縮小する必要があります。
A銀行は100万ドルではなく、109万7500ドルの融資を縮小しなければならない。
100万ドルではなく、109万7560.97ドルの貸し出しを縮小しなければならない。
そうでなければ、現預金比率が歪んでしまう。貸出金は、貸出期間中、デリバティブ預金を発生させるので
は,貸出期間中に20%のデリバティブ預金を生 じることになる。
A銀行の貸出縮小は、1,097-,
560.07ドルであるが,システム内の他の銀行からは878,048.78ドルの現金しか引き出されない。
の現金を引き出すことになります。
この現金が分配された方法とは逆の方法で、システム内の他の銀行から878,048.78ドルの現金を引き出すことになります。
そして、100万ドルの現金を失ったA銀行は、以前と同じ状況に陥る。
100万ドルの現金を失ったA銀行は、預金として受け取る前と同じ状況になり、その結果、融資が拡大することになります。
100万ドルの現金を失ったA銀行は、預金として受け取り、その結果、融資を拡大する前と同じ状況になる。このとき、100万ドルと100万ドルの差は
の差は、1,000,000ドルの損失と878,048.78ドルの損失との差である。
と、融資によって引き出される878,048.78ドルとの差は、1,000,000ドルである。




0 件のコメント:
コメントを投稿