2022年6月15日水曜日

永濱利廣「減税が効果的」 20220615

日本病 なぜ給料と物価は安いままなのか (講談社現代新書) Kindle版 

永濱利廣  (著)   形式: Kindle版
2022/05/18





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出典:


岸田政権の物価高対策に対する評価①

~需要喚起を優先すれば、補助金や給付金よりも減税の方が効果的~

永濱利廣




要旨
  • 政府はウクライナ戦争に伴う物価高に対する支援などを掲げた緊急経済対策を決めたが、政策効果が未知数の事業や不公平感が強い支援も混じったものになっている印象。
  • エコノミストコンセンサス通りにGDPが推移した場合のGDPギャップを試算すると、2024年1-3月期時点でのGDPギャップは▲1兆円まで縮小することになる。しかし、内閣府のGDPギャップと消費者物価の関係によれば、2%インフレ目標を達成するためには、GDPギャップは+15兆円の需要超過になることが必要と推定される。したがって、インフレ目標達成のために必要な需要額は、GDPギャップを埋めるため必要な1兆円に加え、+2%の超過需要を発生させるための+15兆円を加えた16兆円以上が必要となる。
  • 内閣府の最新マクロ計量モデルを基に、各種財政政策の乗数を比較した結果から純粋に考えれば、もらえる人とそうではない人との不公平感が高い給付金や補助金よりも、使った人が恩恵を受ける減税の方が需要喚起の効果が高いことになる。このため、特に物価高対策という意味では、ウクライナ戦争で物価高を余儀なくされる生活必需品の価格を抑制する消費税の軽減税率引き下げが効果的。
  • 原油価格高騰への対応では1㍑当たり最大25円の石油元売りへの補助金について上限を引き上げ、4月末の期限も延長することになったが、この対策も給付金同様に需要喚起の効果は未知数。消費者ではなく元売りに補助金を出す仕組みになるため、ガソリンの小売価格がそのまま下がるとは限らない。
  • 小売価格値下げ=需要喚起効果をより高めるには、現在凍結されている減税措置「トリガー条項」を活用した方が効果的。トリガー条項発動の効果を考えると、地方経済活性化策としても期待される。今年度の経済対策は2段階での実施が見込まれ、今回の物価高に伴う総合緊急対策はその第1弾に当たることを考えれば、引き続き凍結解除を検討すべき。
目次 
(注)本稿はダイヤモンドオンライン(2022年5月9日)への寄稿を基に作成。

補正予算額は2.7兆円

政府はウクライナ戦争に伴う物価高に対する支援などを掲げた緊急経済対策を決めた。岸田政権後2回目の経済対策となるが、今年度補正予算案を編成し、補正予算額は2.7兆円規模になる見通しである。

今年度の予備費を積み増すほか、石油元売りへの補助金増額、低所得の子育て世帯に対する子供一人当たり5万円の給付等が盛り込まれたことで、補正予算編成が必要となったわけだが、政策効果が未知数の事業や不公平感が強い支援も混じったものになっている印象である。

物価目標達成見込める需要規模は16兆円

経済対策の規模を評価する際に一般的に参考にされるのが、潜在GDPと実際の実質GDPのかい離を示すGDPギャップ率だ。直近の2021年10-12月期のGDPギャップ率は、内閣府の推計によれば▲3.1%。マイナス幅を縮小してきているとはいえ、年換算で▲17兆円の需要不足が存在していることになる。

4月12日に公表されたESPフォーキャスト調査に基づいてエコノミストコンセンサス通りにGDPが推移した場合のGDPギャップを試算すると、2024年1-3月期時点でのGDPギャップは▲1兆円まで縮小することになる。従って、GDPがエコノミストコンセンサス通りに推移した場合の将来的なGDPギャップを解消するのには、1兆円規模の追加の需要喚起策で済むことになる。

しかし、内閣府のGDPギャップと消費者物価の関係によれば、2%インフレ目標を達成するためには、GDPギャップは+15兆円の需要超過になることが必要と推定される。実際、過去のインフレ率とGDPギャップに基づけば、内閣府のGDPギャップに2四半期遅れてコアCPIインフレ率が連動していることがわかる。

したがって、インフレ目標達成のために必要な需要額は、GDPギャップを埋めるため必要な1兆円に加え、+2%の超過需要を発生させるための+15兆円を加えた16兆円以上が必要となる。

給付金や補助金よりも減税

このため、重要なのは補正予算の規模よりも、需要創出によってGDPがどれだけ新たに増えるかだ。そこで、内閣府の最新マクロ計量モデルを基に、各種財政政策の乗数を比較した。財政政策シミュレーションは公共投資拡大、所得減税、法人減税、消費減税の4種類あるが、まず財政支出額の多くが公的固定資本形成に計上される公共投資拡大は、乗数効果も相まって、1兆円支出当たり1年目に1.09兆円GDPを押し上げることになっており、賢い支出をすれば非常に需要喚起の効果が高いことになる。

一方、支出を伴わなくても家計に恩恵が受けられる所得減税は、多くが貯蓄に回ってしまうため▲1兆円当たりの減税規模でその年のGDPは+2300億円程度しか増えないことになる。今回給付対象となる低所得子育て世帯向けの給付金は平均よりも限界消費性向が高いことでもう少し需要喚起の効果は大きいかもしれないが、需要喚起という意味での大きな効果は期待できないだろう。

同様に支出を伴わなくても企業に恩恵が受けられる法人減税は、支出性向が企業>家計であることから▲1兆円当たりの減税規模でその年のGDPが+4100億円程度増えることになるが、こちらも需要喚起の効果は限定的である。

対して、支出しないと減税効果を享受することができない消費減税は▲1兆円の減税によりその年に減税規模の半分以上となる+5600億円程度のGDP押上げが期待できることになる。

こうした結果から純粋に考えれば、もらえる人とそうではない人との不公平感が高い給付金や補助金よりも、使った人が恩恵を受ける減税の方が需要喚起の効果が高いことになる。このため、特に物価高対策という意味では、ウクライナ戦争で物価高を余儀なくされる生活必需品の価格を抑制する消費税の軽減税率引き下げが効果的だといえよう。

消費税というと、社会保障と紐づいているため下げられないという意見が必ず出てくる。しかし、消費税率を5%→10%に引き上げたことで得られた恒久財源13.2兆円のうち社会保障に紐づいているのは8.2兆円であり、残りの5.1兆円は債務返済に回っている。一方で、軽減税率は年間1兆円の財源があれば▲2%分引き下げられる。

こう考えると、消費増税分の債務返済に回っているうちの4兆円分を使えば、消費税率の軽減税率を1年限定で0%に引き下げることが十分可能ということになる。

原油高対策の効果は未知数

一方、原油価格高騰への対応では1㍑当たり最大25円の石油元売りへの補助金について上限を引き上げ、4月末の期限も延長することになったが、この対策も給付金同様に需要喚起の効果は未知数と言わざるを得ない。というのも、消費者ではなく元売りに補助金を出す仕組みになるため、ガソリンの小売価格がそのまま下がるとは限らないからだ。このため、やはり小売価格値下げ=需要喚起効果をより高めるには、現在凍結されている減税措置「トリガー条項」を活用した方が効果的だろう。

トリガー条項というのは、総務省が発表する小売物価統計調査でガソリンの平均価格が3か月連続で 160 円/ℓ を超えた場合、揮発油税の上乗せ税率分である 25.1円の課税を停止するものだ。そして、停止後に3か月連続でガソリンの平均価格が130円/ℓを下回った場合に、課税停止が解除される仕組みになっている。

また、トリガー条項の発動は、ガソリンに課せられる揮発油税や地方揮発油税以外にも、軽油引取税17.1円/ℓの引き下げを通じて家計や企業の税負担軽減となる。

そして、仮にトリガー条項が1年間発動された場合、筆者の試算では、これらの減税効果を通じて年間の家計と企業の税負担をそれぞれ▲0.7兆円、▲0.8兆円以上軽減する。世帯あたりに換算すれば、平均的な負担減は▲1.3万円に達する。特に北陸や東北、四国、東海地方では自動車関連支出が高いことから負担減は▲2.0~▲1.6万円前後になる。

さらに、発動に伴う実質GDP押し上げ効果は、1年間継続された場合には、1年目に+0.5兆円、2年目に+0.8兆円、3年目に+0.6兆円の押し上げ効果となる。令和3年度予算を基にすれば、国と地方で年間▲1.5兆円以上の税収を減少させるが、自然増収効果もあり、財政赤字は1年目▲1.4兆円の拡大にとどまる。そして2年目は0.2兆円、3年目は0.1兆円の、財政赤字縮小要因になる。

トリガー条項発動のこうした効果を考えると、地方経済活性化策としても期待されるといえよう。今年度の経済対策は2段階での実施が見込まれ、今回の物価高に伴う総合緊急対策はその第1弾に当たることを考えれば、引き続き凍結解除を検討すべきだろう。


(注)本稿はダイヤモンドオンライン(2022年5月9日)への寄稿を基に作成。

補正予算額は2.7兆円

政府はウクライナ戦争に伴う物価高に対する支援などを掲げた緊急経済対策を決めた。岸田政権後2回目の経済対策となるが、今年度補正予算案を編成し、補正予算額は2.7兆円規模になる見通しである。

今年度の予備費を積み増すほか、石油元売りへの補助金増額、低所得の子育て世帯に対する子供一人当たり5万円の給付等が盛り込まれたことで、補正予算編成が必要となったわけだが、政策効果が未知数の事業や不公平感が強い支援も混じったものになっている印象である。

物価目標達成見込める需要規模は16兆円

経済対策の規模を評価する際に一般的に参考にされるのが、潜在GDPと実際の実質GDPのかい離を示すGDPギャップ率だ。直近の2021年10-12月期のGDPギャップ率は、内閣府の推計によれば▲3.1%。マイナス幅を縮小してきているとはいえ、年換算で▲17兆円の需要不足が存在していることになる。

4月12日に公表されたESPフォーキャスト調査に基づいてエコノミストコンセンサス通りにGDPが推移した場合のGDPギャップを試算すると、2024年1-3月期時点でのGDPギャップは▲1兆円まで縮小することになる。従って、GDPがエコノミストコンセンサス通りに推移した場合の将来的なGDPギャップを解消するのには、1兆円規模の追加の需要喚起策で済むことになる。





しかし、内閣府のGDPギャップと消費者物価の関係によれば、2%インフレ目標を達成するためには、GDPギャップは+15兆円の需要超過になることが必要と推定される。実際、過去のインフレ率とGDPギャップに基づけば、内閣府のGDPギャップに2四半期遅れてコアCPIインフレ率が連動していることがわかる。

したがって、インフレ目標達成のために必要な需要額は、GDPギャップを埋めるため必要な1兆円に加え、+2%の超過需要を発生させるための+15兆円を加えた16兆円以上が必要となる。

給付金や補助金よりも減税

このため、重要なのは補正予算の規模よりも、需要創出によってGDPがどれだけ新たに増えるかだ。そこで、内閣府の最新マクロ計量モデルを基に、各種財政政策の乗数を比較した。財政政策シミュレーションは公共投資拡大、所得減税、法人減税、消費減税の4種類あるが、まず財政支出額の多くが公的固定資本形成に計上される公共投資拡大は、乗数効果も相まって、1兆円支出当たり1年目に1.09兆円GDPを押し上げることになっており、賢い支出をすれば非常に需要喚起の効果が高いことになる。



一方、支出を伴わなくても家計に恩恵が受けられる所得減税は、多くが貯蓄に回ってしまうため▲1兆円当たりの減税規模でその年のGDPは+2300億円程度しか増えないことになる。今回給付対象となる低所得子育て世帯向けの給付金は平均よりも限界消費性向が高いことでもう少し需要喚起の効果は大きいかもしれないが、需要喚起という意味での大きな効果は期待できないだろう。

同様に支出を伴わなくても企業に恩恵が受けられる法人減税は、支出性向が企業>家計であることから▲1兆円当たりの減税規模でその年のGDPが+4100億円程度増えることになるが、こちらも需要喚起の効果は限定的である。

対して、支出しないと減税効果を享受することができない消費減税は▲1兆円の減税によりその年に減税規模の半分以上となる+5600億円程度のGDP押上げが期待できることになる。

こうした結果から純粋に考えれば、もらえる人とそうではない人との不公平感が高い給付金や補助金よりも、使った人が恩恵を受ける減税の方が需要喚起の効果が高いことになる。このため、特に物価高対策という意味では、ウクライナ戦争で物価高を余儀なくされる生活必需品の価格を抑制する消費税の軽減税率引き下げが効果的だといえよう。

消費税というと、社会保障と紐づいているため下げられないという意見が必ず出てくる。しかし、消費税率を5%→10%に引き上げたことで得られた恒久財源13.2兆円のうち社会保障に紐づいているのは8.2兆円であり、残りの5.1兆円は債務返済に回っている。一方で、軽減税率は年間1兆円の財源があれば▲2%分引き下げられる。

こう考えると、消費増税分の債務返済に回っているうちの4兆円分を使えば、消費税率の軽減税率を1年限定で0%に引き下げることが十分可能ということになる。



原油高対策の効果は未知数

一方、原油価格高騰への対応では1㍑当たり最大25円の石油元売りへの補助金について上限を引き上げ、4月末の期限も延長することになったが、この対策も給付金同様に需要喚起の効果は未知数と言わざるを得ない。というのも、消費者ではなく元売りに補助金を出す仕組みになるため、ガソリンの小売価格がそのまま下がるとは限らないからだ。このため、やはり小売価格値下げ=需要喚起効果をより高めるには、現在凍結されている減税措置「トリガー条項」を活用した方が効果的だろう。

トリガー条項というのは、総務省が発表する小売物価統計調査でガソリンの平均価格が3か月連続で 160 円/ℓ を超えた場合、揮発油税の上乗せ税率分である 25.1円の課税を停止するものだ。そして、停止後に3か月連続でガソリンの平均価格が130円/ℓを下回った場合に、課税停止が解除される仕組みになっている。

また、トリガー条項の発動は、ガソリンに課せられる揮発油税や地方揮発油税以外にも、軽油引取税17.1円/ℓの引き下げを通じて家計や企業の税負担軽減となる。

そして、仮にトリガー条項が1年間発動された場合、筆者の試算では、これらの減税効果を通じて年間の家計と企業の税負担をそれぞれ▲0.7兆円、▲0.8兆円以上軽減する。世帯あたりに換算すれば、平均的な負担減は▲1.3万円に達する。特に北陸や東北、四国、東海地方では自動車関連支出が高いことから負担減は▲2.0~▲1.6万円前後になる。

さらに、発動に伴う実質GDP押し上げ効果は、1年間継続された場合には、1年目に+0.5兆円、2年目に+0.8兆円、3年目に+0.6兆円の押し上げ効果となる。令和3年度予算を基にすれば、国と地方で年間▲1.5兆円以上の税収を減少させるが、自然増収効果もあり、財政赤字は1年目▲1.4兆円の拡大にとどまる。そして2年目は0.2兆円、3年目は0.1兆円の、財政赤字縮小要因になる。

トリガー条項発動のこうした効果を考えると、地方経済活性化策としても期待されるといえよう。今年度の経済対策は2段階での実施が見込まれ、今回の物価高に伴う総合緊急対策はその第1弾に当たることを考えれば、引き続き凍結解除を検討すべきだろう。













岸田政権の物価高対策に対する評価②

~食料やエネルギーの国内自給率をいかに高めるかが最優先の課題~

永濱 利廣

要旨
  • 需要喚起の側面では「GoToトラベル」の再開も期待される。しかし、コロナショック前に比べて依然としてサービス消費が年換算で12兆円も低い水準にとどまっていることからすれば、GoTo再開に加えて国民の新型コロナに対する恐怖心を新型インフルエンザ並みに下げる措置が必要になろう。そのためには、新型インフルエンザの経口薬並みに新型コロナの経口薬を普及させ、指定感染症を見直すことが必要になってこよう。
  • 政府は「水際対策」の緩和を表明しており、来月にも1日あたりの入国者の上限を2万人に引き上げる方向で検討している。しかし、コロナショック前には月平均で200万人を大きく超える入国者数があったことからすれば、2万人程度では効果は限定的。むしろ、行楽シーズンとなる今年の夏休みの時期にいかに行動制限の発出を回避できるかが重要。
  • 政府が参院選後に予定している大型経済対策では、より省エネ耐久財の更なる普及や省エネ向けの設備投資等を更に促す攻めの政策をとるべき。具体的には、家計や企業に省エネ関連の支出を促す減税や補助等により、需要喚起とエネルギー消費抑制の両立を目指す政策である。
  • 特に、グリーン社会に関する政府計画を海外の取り組みと比べると、日本はこの点で出遅れていることからすれば、海外の対策に倣った企業や医療・教育現場、住宅や公共施設等への省エネ設備、電気自動車の充電インフラ整備の更なる拡充等が必要。
  • 岸田政権は前回の衆院選でも食料自給率を上げ、農産品食料品の輸出を2030年までに5兆円とする施策を打ち出している。現状の円安も良いチャンスなのでもっと本腰を入れてやるべき。国家戦略特区で2016年から兵庫県養父市で一般企業の農地取得を認めて、耕作放棄地の有効活用など成果が出ていることからすれば、一刻も早く全国解禁すべき。
  • 効果的に財政出動をするためには、需要喚起が見込める省エネや生活必需品の国内自給率向上を思い切って加速させ、将来やらなければならないことをこの際前倒しすることも必要。これらの政策により、環境関連や第一次産業を更に伸張させることに加え、食料やエネルギーの国内自給率をいかに高めるかが今の日本経済にとっては最優先の課題。
目次 
(注)本稿はダイヤモンドオンライン(2022年5月9日)への寄稿を基に作成。

はじめに

政府はウクライナ戦争に伴う物価高に対する支援などを掲げた緊急経済対策を決めた。岸田政権後2回目の経済対策となるが、今年度補正予算案を編成し、補正予算額は2.7兆円規模になった。

今年度の予備費を積み増すほか、石油元売りへの補助金増額、低所得の子育て世帯に対する子供一人当たり5万円の給付等が盛り込まれたことで、補正予算編成が必要となったわけだが、5月9日付で公表したEconomic Trends「岸田政権の物価高対策に対する評価①」でも指摘した通り、政策効果が未知数の事業や不公平感が強い支援も混じったものになっている印象である。

GoTo再開に加えて経口薬普及、指定感染症見直しが課題

こうした中、需要喚起の側面では「GoToトラベル」の再開も期待される。政府は、一昨年度補正予算で1.7兆円の予算を計上してGoTo事業を実施し、実質的にその効果で2020年10-12月期を中心に宿泊・飲食・旅行などのサービス消費が年換算で+3.7兆円程度押し上げられたと推測される。こうした実績からすれば、今回のGoTo事業もある程度の需要喚起は期待できるだろう。

しかし、それでもコロナショック前に比べて依然としてサービス消費が年換算で12兆円も低い水準にとどまっている。こうしたことから、GoTo再開に加えて国民の新型コロナに対する恐怖心を新型インフルエンザ並みに下げる措置が必要になろう。そのためには、新型インフルエンザの経口薬並みに新型コロナの経口薬を普及させ、指定感染症を見直すことが必要になってこよう。

なお、政府は「水際対策」の緩和を表明しており、来月にも1日あたりの入国者の上限を1万人から2万人に引き上げる方向で検討している。しかし、コロナショック前には月平均で200万人を大きく超える入国者数があったことからすれば、2万人程度では効果は限定的といえよう。

むしろ、今年3年ぶりの行動制限なしのGWにより観光地にそれなりに恩恵が及んだことからすれば、行楽シーズンとなる今年の夏休みの時期にいかに行動制限の発出を回避できるかが、経済の観点からは重要といえよう。

早急に求められる省エネ対策の加速

このように、岸田首相はウクライナ情勢に伴う物価高などを踏まえた新たな経済対策について既に補正予算を編成しているが、さらなる深刻化が予想される化石燃料や穀物の価格上昇への応急処置が中心となっている。そして、具体的なメニューとしては、現在実施されている石油元売り業者への補助金の拡充や、家計向けの給付金等が中心である。

しかし、旧来型の補助金や給付金のような需要喚起の乏しい政策のみでは、国民全体からの合意を得られにくいだろう。こうした政策では、一時的なエネルギーや食料支出の負担軽減にしかならないため、政府が参院選後に予定している大型経済対策では、今回のような補助金や給付金ではなく、より省エネ耐久財の更なる普及や省エネ向けの設備投資等を更に促す攻めの政策をとるべきだろう。

そこで参考になるのが、リーマンショック後に世界で実施されたグリーン・ニューディール政策である。具体的には、給付金で負担を軽減するというより、家計や企業に省エネ関連の支出を促す減税や補助等により、需要喚起とエネルギー消費抑制の両立を目指す政策である。実際、日本でもリーマンショック後にその一環としてエコカー補助金や家電エコポイントを実施し、エコカーや省エネ家電の買い替えを喚起したことは記憶に新しい。特に白物家電の買い替えサイクルが10年超であることからすれば、このタイミングで実施すれば、当時買い替えられた家電の買い替え需要が期待できよう。こうしたことから、エコカーや省エネ家電への買い替え促進策への支出を拡充すること等を提案したい。

特に、グリーン社会に関する政府計画を海外の取り組みと比べると、日本はこの点で出遅れていることからすれば、海外の対策に倣った企業や医療・教育現場、住宅や公共施設等への省エネ設備、電気自動車の充電インフラ整備の更なる拡充等が必要である。環境・省エネに関する投資が促進されれば、省エネに結び付くだけでなく、雇用や所得環境にも好影響が及ぶことが期待される。更に海外からの省エネ関連需要も加われば、日本の環境関連産業もさらに競争力を高めることができる。つまり、環境・省エネ消費や投資を起点として環境関連産業を活性化させることができれば、需要を創出して経済が成長することにもつながる期待が持てよう。

こうした視点からも、政府には給付金や補助金などによる一時的な痛み止めではなく、環境・省エネ投資に対する減税や補助等によって、投資を促すことなどが求められるといえる。

また、物価高対策で重要なもう一つの視点は国民生活の「安心」「安全」であり、食料・エネルギー安全保障がそのための基礎であることに異論の余地は無いだろう。すでに輸入食材が値上がりしていることからすれば、値上がりが少ない国内食材への需要シフトも見られよう。特に古くから日本人の主食とされ、自給率の高い米は値下がり傾向にある。日本ではこれまで食の欧米化が進んできたが、健康のためにも節約のためにも、米を中心とした和食にシフトする可能性があり、消費者の米や米商品に対する関心は高まろう。実際、穀物価格が高騰した2007~2008年にかけて、食料自給率は一時的に上昇に転じた。今回も価格が上昇する輸入小麦に代えて国産米粉が見直され、米粉などの加工品の需要が拡大すれば、国内農業ひいては地域産業の活性化にもつながることが考えられる。

岸田政権は前回の衆院選でも食料自給率を上げ、農産品食料品の輸出を30年までに5兆円とする施策を打ち出している。現状の円安も良いチャンスなのでもっと本腰を入れてやるべきだろう。特に日本の農地法では農業関係者が議決権の半分以上を持つ企業でないと農地取得できないが、国家戦略特区で2016年から兵庫県養父市で一般企業の取得を認めて、耕作放棄地の有効活用など成果が出た。にもかかわらず、与党からの慎重論を踏まえて特例が来年8月まで2年延長されていることからすれば、一刻も早く全国解禁すべきだろう。

なお、エネルギー安全保障面では、原発もエネルギーコストの収支だけで考えることではないが、こういう状況なので多方面から本格的に議論することが必要だろう。もちろん、経済が正常化すれば財政再建は必要である。しかし、効果的に財政出動をするためには、需要喚起が見込める省エネや生活必需品の国内自給率向上を思い切って加速させ、将来やらなければならないことをこの際前倒しすることも必要であろう。これらの政策により、環境関連や第一次産業を更に伸張させることに加え、食料やエネルギーの国内自給率をいかに高めるかが今の日本経済にとっては最優先の課題である。


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経団連が始めた構造改革を経団連が終わらせる「君たちはまだ長いトンネルの中」6月17日公開![三橋TV第560回]三橋貴明・高家望愛
7:00~


経団連のピボット(大転換) | 三橋貴明オフィシャルブログ


21世紀政策研究所 | The 21st Century Public Policy Institute

2022/6/2 提言【報告書】「中間層復活に向けた経済財政運営の大転換」






【第75回】岸田首相にも共有された日本経済復活プランとは⁉(永濱利廣 × 森永康平)
2022/06/20







1 件のコメント:




  1. slowslow2772
    ⁦‪@slowslow2772‬⁩


    twitter.com/rps38_00/statu…

    2022/11/15 20:36


    https://twitter.com/slowslow2772/status/1592481638080188417?s=61&t=XO4oGfm2P0QzjQtTEeVX5g

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