2020年9月12日土曜日

bancor1941

ケインズ初期バンコール案
B2.5
C3が技術的に重要

#25
37~45頁

37
第1章 清算同盟の起源

 読者は間もなく気がつくであろうが、この案は以下のような理由で、また反対にさらされることになる。本案はま
た複雑であり、 新奇であり、そしてある意味ではユートピア的であって、おそらくはそれが実行不可能だからという
理由からではなく、それが通常期待できる以上に、高度の理解、大胆なイノベーションの精神、国際的協力と信頼を
必要としているという理由のためである。
 それにもかかわらず、わたくしがアメリカと交渉しようとしているのは、まさにこの計画についてである。なぜな
らば、これはかれらの基本的要求を満足させる試みだからである。これによってわれわれイギリス人が「差別」とい
うあのいまわしい言葉に賛成できるようにもなるであろう。従ってこれは、かれらが一層積極的に熱心に協力してく
れる制度なのである。そのうえ、これは、それにょって問題の本質を分析し、満足な解決に不可欠の要素をはっきり
と見せてくれるすぐれた体系である。われわれは問いた い。もしこれがよくないとしたら、ほかにどんなものがある
のか。今やあなた方アメリカ人は、問題の本質的要素を把握しているのであるから、これに代わるどんな解決策をわ
れわれに提供してくれるのかと。
J・M・ケインズ

 

一九四一年九月八日
        国際通貨同盟の提案

 A・1 いかなる加盟国内または通貨地域においても、外国為替準備は普通銀行を経由して公衆と取引する中央銀
行*の手に集中されるべきこと。すなわち、ここイギリスにおいては、特定の目的のためにドルを入手したいと考える
人は ほとんど現在と同じことであるがーーイングランド銀行に申請するよう自分の取引銀行に指図するというこ
とである。☆
 A・2 あらゆる国際取引は、中央銀行が国際清算銀行に開設する自己の勘定を通して中央銀行間で清算されるべきこ
と。中央銀行は相互の間で、清算銀行における自己の勘定、すなわち指定清算勘定への仕向、被仕向に対してのみ、
自国通貨を売買する。許可を得ている自国民の対外勘定以外のいかなる外貨も、自行自体では保有しない。ただし政
府が経常的な目的で外国貿易勘定をもつことが必要な場合、政府の代行機関として保有するときは別である。
 A・3 それぞれの中央銀行はその国民の対外取引に関しては、すなわち国民の外国為替購入に対しては、無制限の統
制力(特に資本勘定の送金に関する統制を含む)をもつべきこと。ただし中央銀行は、その清算勘定に対する貸方に
対しては、他の中央銀行に対して自国通貨を常に売却する用意がなければならない。
 A・4 各国民通貨は、通貨同盟が設立されたときは、清算銀行の銀行貨幣で固定価値(ただし変更の規定については
後述に従うものとする)を決定すべきこと。中央銀行の貨幣は金の単位で表示される。
 A・5 中央銀行は清算銀行が金を払い込むことによって自己の清算勘定を補填する権限をもつべきこと。ただし、勘
定の残高は他の清算勘定へ振替を行う目的でのみ用いられるものであり、従って勘定から金を引き出すことはできな
い。
 A・6 各年末において清算銀行が保有する金のうち、その準備基金の金額を超過している部分は、その清算勘定の貸
方残高が貸越となり、従って、清算勘定の借方残高が借越となっている中央銀行の清算残高に比例して、それら中央
銀行に配分される。その結果それらの清算勘定は配分金額だけ引き落とされるものとする。清算銀行は、自国民(そ
の連邦または属領の人々も含む) から、あるいは工業目的の場合を除き、右以外の方法により金を取得する権限をも
たない。

 B・1 各国中央銀行は、輸出入合計金額(共に再輸出金額は含まない)の過去五年間の平均(戦前の五年間から
出発し、平均の中で最も古い戦前の年は、毎年入手可能な最新の戦後の年と置き替えられる)の半額に等しい指標割
当額を割り当てられる。その指標割当額に等しい金額を最大限として、各中央銀行は清算勘定を当座借越にすること
を許可されるべきこと。ただし、いかなる年にも当座借越額を指標割当額の四分の一以上増加してはならないものと
する。
 B・2 その清算勘定が一年以上にわたり指標割当額の四分の一を超えて赤字の中央銀行は、赤字銀行と呼ばれる。赤
字銀行はいかなる年にも五%を超えない限度で、その国民通貨の交換価値を引き下げることを許可される。赤字銀行
は相互に合意されるいかなる条件によっても、黒字銀行(以下を見よ)の清算勘定から借り入れることができる。
 B・3 その清算勘定が一年以上にわたり指標割当額の半額を超える金額につき借方の中央銀行は、被管理銀行と呼ば
れる。被管理銀行はいかなる年にも、五%を超えない限度でその国の通貨の交換価値を引き下げるよう、またその赤
字を削減するため、中央銀行、またはその政府が保有する自由金を引き渡し、清算銀行理事会の承認がある場合を除
き、資本流出を禁止するよう清算銀行の理事会により要求される場合がある。また理事会は、自らの裁量により、外
国為替に対する他のいかなる要求をも拒否することができる。被管理銀行は、本制度から脱退するよう理事会から要
求される場合がある。その場合、赤字残高は清算銀行の準備基金(以下を見よ)に振替えられる。
 B・4 その清算勘定が一年以上にわたり指標割当額の四分の一を超える金額につき黒字である中央銀行は、黒字銀行
と呼ばれる。黒字銀行はいかなる年においても、五%を超えない限度で、その国の通貨の交換価値を引き上げること
ができる。
黒字銀行はその管轄内にある外国人保有の残高および投資の引上げに対し、包括ライセンスを与えるもの
とする。黒字銀行は赤字銀行の清算勘定に対して貸付を実施することができる
 B・5 その清算勘定が一年以上にわたってその指標割当額の半分を超える金額につき貸方である中央銀行は、その国
の通貨の交換価値を五%引き上げるよう清算銀行の理事会により要求される。この要求は、前回の引上げ調整以後、
平均貸方残高が、さらにその指標割当額の一〇%を増加するときは、その後にも反復される。
 B・6 任意の中央銀行の清算勘定の年末貸方残高が、その指標割当額の全額を超える場合は、その超過額は清算銀行の
準備基金に振替えられる。
 B・7 清算勘定に貸方残高を持つ中央銀行は、一年前の予告により本制度から脱退することができる。ただし、その
貸方残高は清算銀行の準備基金に引き渡される。
 B・8 借入国中央銀行の要請に基づき、国際清算銀行はいかなる対外借款供与の受託者としても行動することが で
き、それが中央銀行間の借敷である場合には、債務国が被管理銀行ではないかぎり、追加的な特別の指示なしに、借
款の利子を貸付国の中央銀行の清算勘定向けに借記する。ただし、債務国が被管理銀行である場合には、その後の振
替は清算銀行の理事会の裁量にゆだねられる。

 C・1 国際清算銀行は準備基金を開設する。
 C・2 準備基金は、さきに規定したB・3、6および7に従って使用される。
 C・3 その指標割当額の四分の一を超える黒字銀行の清算勘定の年平均超過額の五%、およびその指標割当額の半額
を超える金額の一〇%は、清算銀行の準備基金に振替えられる。
 C・4 清算銀行は貸方残高に対する利子支払いは許可されない。ただし、借方残高に対しては、理事会の定めるとこ
ろにより、その指標割当額に対する中央銀行の赤字額の割合が増加するに従って、一層高率の利子を徴求する。その
支出を超える清算銀行の利子収入の支出に対する超過分は、準備基金に振替えられる。
 C・5 準備基金は、自ら管理しえない特別の原因により困難に陥った中央銀行の救済またはその他の目的のために、
理事会の裁量によって使用することができる。

 D・1 国際清算銀行の設立時に、一中央銀行の管轄内にある外国人保有の残高および投資は凍結される。それ以
後は当該中央銀行の許可がないかぎり、または上記B.4のもとで与えられる包括ライセンスによらないかぎり引き
出すことはできないという主旨により凍結される。同じことは、引出しに伴う資本勘定の送金にも適用されるが、こ
のような残高及び投資に関する権利は、外国人の間で自由に譲渡し合うことができる。
 D・2 中央銀行は、本計画の開始時に、自行の管轄内 に現金、または銀行預金、または政府証券の形で保有されている外
国人資産を、当該外国人の中央銀行に等額の金の払い込みにより返済する権限を有する。後者の中央銀行は、前者の中
央銀行およびその政府がその指標割当額を超える金準備を保有している場合には、上記返済を請求する権限を有する。
 D・3 もしアメリカが当初におけるその金準備の再分配を認める用意があるならば、D.2に規定されている調整を
行った後、なおその指標割当額を超える金準備を保有する国があるときは、その超過額は最初に清算銀行に振替えら
れ、戦後の
復興評議会(下記を見よ)の信用供与に充当されるべきであることを提案する。この措置は、他の債権
国に比較して、アメリカに特別に実質的負担を負わせることなく、戦後の復興を促進するであろう。なぜならば、これ
は予算に組まれることなく、また実質負担は、特別にアメリカによってではなく、この取決めの結果、そうでなかっ
た場合よりも大きな貸方残高を清算銀行にもつこととなるすべての債権国によって担われることになるからである。

 E・1 国際清算銀行における清算勘定は、通貨同盟に賛同する国の中央銀行および以下に規定するような一定の
国際機関に対してのみ開設されるべきこと。
 E・2 すなわち清算銀行は平和を維持し、国際的秩序を維持する役割を負う超国家的な政策機関のための勘定を開設
すべきこと。もしいずれかの国が正当に認められた秩序を侵害した場合、政策機関は清算銀行の理事会に対して秩序
違反国の中央銀行の清算勘定を差し押え、当局が実施する取引を除き、右期定による今後の取引は許可しないことを 
要請する権限を有する。
 E・3 清算銀行は、戦後の救済と復興の役割を担う国際機関のための勘定を開設する。この機関はそれが取扱うすべ
ての物資およびサービスの供給に対して妥当な価格を支払うべきことを提案する。その出資は以下のような方法で賄
う。すなわち、出費のうち、受益国から回収する金額を上回る部分および一定の国に贈与の方法で実施するための部
分は、その清算勘定に当初に開設された貸方残高により、一部は(もしこのような案が推薦されるならば)上記D
3に基づいてそれが実現するならば受け入れる資金によって賄われる。また一部は合意された最大限度まで、その清
算勘定に当座借越の記帳が許されるという方法によって賄われる。本当座借越は、清算銀行の理事会の裁量により
後にその準備基金または(C3に基づく通常の寄付金に加えて)黒字銀行の各年の黒字額の五%を超えない額に対
する過剰貸方残高に課せられる特別賦課金により返済される。なお返済されない残高は、通貨同盟の保証発行通貨と
しての性質をもつものである。この方法によれば、いかなる国も救済と復興のために煩雑な仕事を引き受けなければ
ならないことはなくなる。なぜならば、必要な資金は当面は、その清算勘定に差当りは必要がなく、従って寝かせて
おかざるをえない貸方残高をもつ国によって賄われ、長期的には、ほかに有益な利用方法のない慢性的対外黒字をも
つ国によって賄われるからである
 E・4 清算銀行は国際商品統制の運営の責任を負う国際機関のために清算勘定を開設し、このような機関に対して合
意された最高限度までその勘定の当座借越を許可することによって、本機関の保有する商品在庫に融資する責任を負
う。これにより国際商品プールを確保するための金融問題は充分に解決される。

 F・1 国際清算銀行は八名の理事および一名の理事長より成る理事会によって運営されるべきものとする。理事
会はその手続規定を作成し、すべての事項は単純多数決で決定すべきものとする。ただし、清算銀行の計算貨幣の金
価値の変更を含む清算銀行の基本協定の諸条項を変更する場合には三分の二の多数決を必要とする。
 F・2 協定のいかなる条項も、それを個々の中央銀行に適用する場合、その銀行と清算銀行の理事会の過半数との間
に合意が成立するときは修正することができるものとする。
 F・3 理事会の無所属の理事長は、毎年理事会により選挙され、被選出者がそれまで理事の一人であったときは、そ
の理事としての席は空席となる。理事長は決定票決権以外に票決権をもたないものとする。
 F・4 八名の理事は次のように選出される。イギリス一名、イギリスを除くイギリス連邦一名、アメリカ一名、ロシ
ア一名、ヨーロッパ諸国中央銀行から二名、南アメリカ中央銀行から一名、その他の中央銀行から一名。最後に挙げ
た四名の代表を選出するに当たり、関係中央銀行はその指標割当額に比例した票決権をもつものとする。
J・M・ケインズ
一九四一年九月八日

 ◆ケインズの提案は、内部で回覧されていたときは、大蔵省内部で戦後の通貨政策に関して回覧されているワンセットの個人的
な文書のうちの一つにすぎなかった。これらのほかに、戦後の貿易および金融政策に関する大蔵省の草案文書があり、これは大蔵
省における討議の現状を反映していただけでなく、そこにはそれらに関連した注釈や、D・H・ロバートソン、H・D・ヘンダー
ソンおよびイングランド銀行の間で交わされた見解が添付されていた。当初、ケインズ の提案は大蔵省の討議において注目された


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様子はまったくなく、主要な論評はリチャード·カーン、ジェームズ.ミード、R.G.ホートレ
日.ロ
タムソンおよびイ
ングランド銀行のH.A
シープマンからのものであっ
 カーンは理論的な点からケインズを取り上げ、債国による調整は交易条件にも影響を与えるということに注目し、ケインズの
例は英米関係のケースを標準とする考え方を基調としていると指摘した。かれはまた、関税引下げに関するケインズの暗い見通し
を疑問視し、それは提案を損なうことになるのではないかという疑間を投げかけた。その理由は、もしアメリカが関税を引き下げ
るならば、この計画は崩壊することになると、かれには考えられたからである。
 ジェームズ・ミードは、一連の提言を行った。かれは、ケインズは経常勘定の交換性に関し、当該国の清算勘定が一年以上にわ
たって割当額の四分の一を超える金額が赤字である場合を除いて、上記の交換性を要求することにより、A.3において規範とし
ての明確な規定を設けるよう提言した。さらに倒限は強制的なものであってはならないであろうと主張した。ケインズはこの提案
ての明確な規定を設けるよう提言した。さらに制限は強制的なも
は長所をもっているという理由で、またそれはアメリカ人が賞賛するであろうというミ1ドの主張を受け入れた。またミードは
非加盟園銀行との取引に関する規定を設けるよう提言した。なぜならば、対外取引規制が、A.1項が要求しているほど強いもの
ならば、アメリカはこの計画に参加しようとしないかもしれないからである。ケィンズはこの考えも受け入れた。しかしこれがア
メリカに適用できるか否かについては確信をもてなかった。この規定は「その他の残り」の国に対してのみ有用であると考えたか
らである。
 R・G・ホートレーは、以下の点について批判を加えた。原因はその国が弱体のためか、無謀のためか、判断を誤ったためか、

___
(6)ラルフ・ジョージ.・ホートレー(Ralph George Hawtrey)(一八七九~一九七五年)。一九五六年、勲爵士。1RO~
四五年、大蔵省勤務。一九一九~四九年、大蔵省財務調査局長。
(7) 後のタムソン-マッコースランド(Thompson-MaCausland)?
(8)ハリー・アーサー・シープマン (Harry Arthur Siepmann)(一 八八九~一九六三年)。第一次大戦中はヶインズ と共に
大蔵省勤務。一九二六年、
大蔵省動務。一九二六年、イン グランド銀行総裁顕問。一九四五~五四年、イングランド銀行常任理事。


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それとも腐敗していたからかは別として、慢性的債務国のためのセーフ・ガードが欠けている点、計算単位の購買力の変化に対す
る防止措置が欠けている点、為替相場の変更に対する年率五%までとする限度が低すぎる可能性、およびこの計画の割当額が不充
分である可能性についてである。
 L・P・タムソンからのケインズに対する論評、シープマンからの一連の質問、戦後の国際通貨政策に関する大蔵省の討議にお
いて提出されたその他の論評は、ケインズにはもっと時間をかけてかれの提案を説明し擁護することを決心させた。その結果、ジ
ェームズ・ミードの提案や、戦後の国際経済関係の形態に関するそのときの大蔵省やイングランド銀行が抱いていた考え方を考慮
に入れて第二草案を作成した。またこの草案は、その提案者たちが一九四一年秋、ロンドンを訪れた際吹聴していた戦後の完全雇
用維持のためのハンセン-ガリックの提案にも考慮を加えた。

    国際通貨同盟の提案

 前回の論稿では、わたくしは自分の提案について説明したり擁護したりすることをせず、単に計画の骨子だけを述
べるにとどめた。今回はそれにいささか肉付けをしたほうが有益であろう。この論稿は、わたくしの前の提案に取
て代わるとみなされるべきものである。
   
     1

 戦後の英米経済協力の道程には、実際上いろいろな困難があるからといって、われわれはそれに至高の重要性をお
くことを思い止まってはならな」
われわれは経済協力を確保するために最善の努力を払わなければならず、
て、われわれの取組み方に多くがかかっている。
 単にわが国の戦後の困難の程度とその極端さを説明し、自国中心の利益を擁護するために有用であり、かつ必要で







戦後世界の形成 一清算同盟
-1940~44年の諸活動一
(ケインズ全集第25巻)
1992年5月28日 発行
むら の
たかし
訳 者村野 孝
発行者 中島資皓
発行所 〒103 東京都中央区日本橋本石町1-2-1 東洋経済新報社





__

 * この通貨同盟の目的の下における「国民」単位とは、共通の通貨と銀行制度を持つ全地域からなる。所属中央銀行を決定す
るのは、それぞれのケースにおける関係者達である。恐らく新しいスターリング地域は現在われわれがスターリング地域と呼
んでいるものほど大きい地域にはなりえないと思うが、可能なかぎり大きなものにする努力を払うべきである。われわれは、
オーストラリア、ニュージーランド、インド、そして南アフリカまでもその中にとどまるように説得できるであろうか。とも
かく十分試みるべきである。その中にとどまることはかれらにとっても、われわれにとっても大きな実質的利益であり、財政
的安定性も増進するはずであり、とどまらなければ、ある程度の威信と独立性の喪失を意味するはずである。いずれにせよ大
部分の直轄植民地、特にマレーとホンコンは恐らくイギリスのスターリング地域に残留するであろうが、もしインドが脱退す
れば、インドと共にセイロン(およびビルマ)も脱退するであろう。
 ☆ このことがロンドンの伝統的な国際的為替およびアクセプタンス・ビジネスにどの程度の妨害になるかという問題は主とし
て、他の国におけるそれらビジネスの規制の性質に依存する。イギリスに関するかぎり次のような想定のため、妨害は不必要
に大きくなることはない。その理由は以下の通りである。 ライセンスのない資本取引を排除するため、為替取引 は ある 段階
で、もし銀行が全面的に信頼できるならば、一件ごとに銀行によって審査されなければならないし、戦後はわが国は十分な流
動資金を保有していないゆえに、外国から仕向けられる外国為替の一億ポンドないし二億ポンド余の金額を常時ロンドンの融
資残高として残しておくことはできない(すでに、この金額は一億ボンドを下回っている)と考えられる からである。わが国
は海外に浮動残高を保有することを許されている公認取扱業者に関する現行制度を維持し発展させることがてきる。この点に
関しても、新しく規定されるスターリング地域はできる限り広くなければならないということは最も重要なことである。制限
的条件は当該中央銀行に単に認されているだけであるということを注意すべきである。イングランド銀行は、もしそうすべ
きだという確信を持った場合には、上述のいかなる取引にも包括一般ライセンスを発給することができる(ケインズの脚注)。


ーー



 ◆ケインズの提案は、内部で回覧されていたときは、大蔵省内部で戦後の通貨政策に関して回覧されているワンセットの個人的

な文書のうちの一つにすぎなかった。これらのほかに、戦後の貿易および金融政策に関する大蔵省の草案文書があり、これは大蔵

省における討議の現状を反映していただけでなく、そこにはそれらに関連した注釈や、D・H・ロバートソン、H・D・ヘンダー

ソンおよびイングランド銀行の間で交わされた見解が添付されていた。当初、ケインズ の提案は大蔵省の討議において注目された

様子はまったくなく、主要な論評はリチャード・カーン、ジェームズ・ミード、R・G・ホートレ

ー(6)、L・P・タムソン(7)およびイ

ングランド銀行のH・A・シープマン(8)からのものであった。

 カーンは理論的な点からケインズを取り上げ、債国による調整は交易条件にも影響を与えるということに注目し、ケインズの

例は英米関係のケースを標準とする考え方を基調としていると指摘した。かれはまた、関税引下げに関するケインズの暗い見通し

を疑問視し、それは提案を損なうことになるのではないかという疑間を投げかけた。その理由は、もしアメリカが関税を引き下げ

るならば、この計画は崩壊することになると、かれには考えられたからである。

 ジェームズ・ミードは、一連の提言を行った。かれは、ケインズは経常勘定の交換性に関し、当該国の清算勘定が一年以上にわ

たって割当額の四分の一を超える金額が赤字である場合を除いて、上記の交換性を要求することにより、A・3において規範とし

ての明確な規定を設けるよう提言した。さらに制限は強制的なものであってはならないであろうと主張した。ケインズはこの提案

は長所をもっているという理由で、またそれはアメリカ人が賞賛するであろうというミードの主張を受け入れた。またミードは

非加盟園銀行との取引に関する規定を設けるよう提言した。なぜならば、対外取引規制が、A・1項が要求しているほど強いもの

ならば、アメリカはこの計画に参加しようとしないかもしれないからである。ケィンズはこの考えも受け入れた。しかしこれがア

メリカに適用できるか否かについては確信をもてなかった。この規定は「その他の残り」の国に対してのみ有用であると考えたか

らである。

 R・G・ホートレーは、以下の点について批判を加えた。原因はその国が弱体のためか、無謀のためか、判断を誤ったためか、

それとも腐敗していたからかは別として、慢性的債務国のためのセーフ・ガードが欠けている点、計算単位の購買力の変化に対す

る防止措置が欠けている点、為替相場の変更に対する年率五%までとする限度が低すぎる可能性、およびこの計画の割当額が不充

分である可能性についてである。

 L・P・タムソンからのケインズに対する論評、シープマンからの一連の質問、戦後の国際通貨政策に関する大蔵省の討議にお

いて提出されたその他の論評は、ケインズにはもっと時間をかけてかれの提案を説明し擁護することを決心させた。その結果、ジ

ェームズ・ミードの提案や、戦後の国際経済関係の形態に関するそのときの大蔵省やイングランド銀行が抱いていた考え方を考慮

に入れて第二草案を作成した。またこの草案は、その提案者たちが一九四一年秋、ロンドンを訪れた際吹聴していた戦後の完全雇

用維持のためのハンセン-ガリックの提案にも考慮を加えた。



___

(6)ラルフ・ジョージ.・ホートレー(Ralph George Hawtrey)(一八七九~一九七五年)。一九五六年、勲爵士。一九〇四~

四五年、大蔵省勤務。一九一九~四九年、大蔵省財務調査局長。

(7) 後のタムソン-マッコースランド(Thompson-MaCausland)。

(8)ハリー・アーサー・シープマン (Harry Arthur Siepmann)(一 八八九~一九六三年)。第一次大戦中はケインズ と共に

大蔵省勤務。一九二六年、イングランド銀行総裁顕問。一九四五~五四年、イングランド銀行常任理事。



    国際通貨同盟の提案


 前回の論稿では、わたくしは自分の提案について説明したり擁護したりすることをせず、単に計画の骨子だけを述

べるにとどめた。今回はそれにいささか肉付けをしたほうが有益であろう。この論稿は、わたくしの前の提案に取

て代わるとみなされるべきものである。

   

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 戦後の英米経済協力の道程には、実際上いろいろな困難があるからといって、われわれはそれに至高の重要性をお

くことを思い止まってはならない。われわれは経済協力を確保するために最善の努力を払わなければならず、従っ

て、われわれの取組み方に多くがかかっている。

 単にわが国の戦後の困難の程度とその極端さを説明し、自国中心の利益を擁護するために有用であり、かつ必要で…


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