https://www.amazon.co.jp/格差と不安定のグローバル経済学――ガルブレイスの現代資本主義論-ジェームス・K・ガルブレイス/dp/4750340847/ref=mp_s_a_1_3?dchild=1&qid=1619697866&refinements=p_27%3Aジェームス・K・ガルブレイス&s=books&sr=1-3&text=ジェームス・K・ガルブレイス
2014
ピケティ『21世紀の資本』とは対照的なアプローチだが、得られた結論は同じである
2015年1月29日に日本でレビュー済み
著者は有名な経済学者ジョン・K・ガルブレイスの子息であり、著者紹介によれば「ポスト・ケインズ派」とされている。本書は、最近話題のトマ・ピケティ『21世紀の資本』(みすず書房)とは対照的なアプローチではあるが、世界的に格差が増大しつつあるという同じ結論を導き出している。異なる手法で同じ結論が得られたことにより、格差拡大の信憑性は一層高くなった。経済的格差研究において最大の障害は、長期間かつ国際的に比較可能なデータ源が極めて限られていることである。著者は早くからこのことを認識し、勤務しているテキサス大学でUTIP(テキサス大学不平等プロジェクト)を立ち上げ、格差に関するデータベースを整備してきた。本書では、このデータベースを活用し、また格差の定量的指標としてタイル指標を用いている。タイル指標とは、サブグループ毎に重みづけを行なった不平等の合計値であるが、著者はこの指標の長所として、取り扱いが容易であること、この指標向きの経済データが多く、時系列分析や国際比較に適していることなどを挙げている。
ピケティ『21世紀の資本』と比較すると、ピケティが、税務データを精査し、格差(不平等)指標として超富裕層の所得や資産比率を用いているのに対して、本書では、上述のように通常の経済データを加工してタイル指標を算出することで格差を分析している。また、対象期間はピケティが最大3世紀に及ぶのに対して、本書の対象期間は戦後に限定される。
本書は、多くの章が学術雑誌に掲載された論文を単行本用に編集したものである。このため、分析内容は、家計所得の不平等、経済的不平等と政治体制の関係、アメリカの産業・地域・州間の不平等とその推移、ヨーロッパにおける不平等と失業の関係、中国・アルゼンチン・ブラジル・キューバの不平等など、極めて多岐にわたる。また、統計学的な説明も各章に含まれている。
本書の中で評者が興味を持ったのは、政治体制との関連で、共産主義やイスラム教体制においては、不平等さが比較的小さいと指摘している点である。また、ヨーロッパ諸国の格差に関する分析で、賃金を柔軟にする政策は失業率を下げるのに役立っていないという指摘は重要である。このことは、ヨーロッパ諸国の高い失業率は相対賃金が高いためである、という言説に対して強く疑念を投げかけ、ヨーロッパだけでなく日本を含む世界各国の政策に対しても警告を発している。
冒頭に述べたように、本書の結論は、経済的格差がグローバルな規模で進展している、ということに尽きる。1980年以降の格差の進展には、金融部門による超高額所得の影響が大きいことも示唆している。本書では具体的な政策的提言については抑制的である。しかし、ピケティ『21世紀の資本』と本書が同じ結論を導き出していることから、今世界で顕著になっている「不安定化」への根本的な対策として、各国が協調して格差是正の政策をとるべきだとする考え方が今後強まる可能性も考えられる。
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