2022年6月1日水曜日

贈与の歴史学 桜井英治 2011/Alla Semenova 2011/MMT講義ノート 島倉原 2022

MMT講義ノート: 2022/6/1 島倉 原/贈与の歴史学 儀礼と経済のあいだ (中公新書) Kindle版


以下感想箇条書き。

・「自己雇用」という概念に繋がるので「完全雇用」は訳語として残すべき。

(Jobでなくemploymentを採用する場合もある。2014フランス)

・「与信」など「信用」という言葉の活用は捨てるべきではない。

・島倉氏のJGPへの懐疑は地域主体性を無視している。JGPの訳語は雇用保証プログラムでもいい。就業、就労は一般的ではない。

・少数が多数を支配する=マネタリーベースがマネーストックを支配する。

債務ピラミッドは量的には正しいが質を表現していない。結果、日銀当座預金を市民が使っていると思わせてしまう。

・「債権貨幣」も債券と混同されると危惧される。「債務貨幣」の方がまだ良い。

・そもそもMoneyがローマの女神の名前なので貨幣、通貨と語感がズレる。

・ポトラッチ=呪術は国家、宗教に先立つ(ただしニーチェ的懐疑より国家は自由のためにあるというスピノザ的肯定がMMTに相応しい)。




ウェーバーのクナップ論

インガム Geoffry Ingham 2004(1942~)
https://nam-students.blogspot.com/2019/05/ingham.html 

Money is a social relation of credit and debt denominated in a money of account.
Geoffry Ingham 2004

《貨幣とは計算貨幣の単位によって示された信用と負債の社会関係である。》
ジェフリー ・インガム 2004

グレーバーがインガム2004に言及
邦訳負債論88,649
~~~
34,68頁
イネス(What is money?★)及び上のインガムの言葉を参考にしたであろう島倉はcreditは信用ではなく債権と訳すべきだから、MMTは信用貨幣論ではなく(公益的)債権貨幣論と形容すべきだと言う。
商品貨幣論と対比されるいわゆるシステムとしての信用貨幣論は上部に信用-負債(credit-debt)、下部に黒字-赤字あるいは債権-債務(surplus-deficit)の二層があり、債権という日本語はsurplus-deficitの下層のみに対応しており島倉の訳語は適当ではない。
債権貨幣だと商品貨幣に内包したイメージを抱かせてしまう。
グレーバーの負債論が債務論にならないのと同じ理屈。
債務ピラミッドは底辺を強調した用語。
前著における日本の事例を引き継いだ第5章が重要だ。原理的な第1,2章は興味深いが厳密ではない。

参考:

島倉さんの本、読み始めたばかりだが、興味深い指摘が多々ある。credit money を信用貨幣と訳すのは後語訳で、債権貨幣だと。


《「信用貨幣論」という訳語は、私自身も『MMTとは何か』で用いました。しかしながら、

「貨幣とは何か (What is Money?)」というイネスの論文では、「クレジット (credit)」 という英単

語は明らかに「債権」の意味で用いられており、「信用」は誤訳と言わざるを得ません。したがっ

て、本講義では、「債権貨幣論」という訳語に訂正したいと思います。》


139頁
ソーヤーを参照したJGP批判には錯誤がある。JPGの肝は地方運営主体であることである。

31頁

インガム1996が以下を参照 

ハーン 貨幣理論の基礎 1987

 

ハーン(Frank Horace Hahn) 1925-2013
https://love-and-theft-2014.blogspot.com/2021/06/wikipedia.html
 

Hahn1982

https://www.dropbox.com/s/lqw0z6hfft8j8s6/hahn1982.pdf?dl=0

https://www.dropbox.com/s/ibyu5b0udx67cw8/hahn1987-1984.pdf?dl=0


43頁

中国古代の貨幣: お金をめぐる人びとと暮らし (歴史文化ライブラリー) 単行本 – 2015/1/20 


60頁

社会的事実としての貨幣 Kindle版 

235頁

カルロタ・ペレス(マッツカートの師)

https://love-and-theft-2014.blogspot.com/2022/06/13saassaasnote.html?m=1


歴史からみた現代貨幣理論の適用可能性:日本の事例を中心に(未定稿)*    
2020年1月 早稲田大学 鎮目 雅人 


中国古代の貨幣: お金をめぐる人びとと暮らし (歴史文化ライブラリー) 単行本 – 2015/1/20 



産める国フランスの子育て事情 単行本 – 2008/1/31 

~~~

57頁

贈与の歴史学 儀礼と経済のあいだ

(中公新書) Kindle版

2011
桜井英治

#4:3

 そのようななか、中世の贈与に関する数少ない法理として知られているものに他人和与法とか和与物不悔還の法理とよばれているものがある。「他人和与の物、悔い返(還)すべからず」というのがその主旨だが、「和与」とは(他人に)贈与することをいい、「悔い返す」とはいったん譲渡した物をとりもどすことをいう。たとえば親は子に譲った財産をいつでも悔い返せるのが中世法の原則であったが、それとは対照的に、他人に贈与したものは悔い返すことができないとするのが他人和与法である。『御成敗式目』第一九条は、所領を贈与された者がその恩顧を忘れて贈与者の子孫に敵対したばあいには、その所領は贈与者の子孫に与えるとして、他人和与法に一定の制限を加えたが、全面的に否定したわけではないところにこの法の社会的定着度の高さがみてとれるという(笠松宏至『徳政令』)。
 近代に目を移すと、ドイツ民法は『御成敗式目』と同様、忘恩による贈与の撤回や贈与物の返還を認めているのにたいし、日本民法はいかなる理由によっても贈与の撤回を認めておらず、また、贈与契約に定まった方式を要求していないなど、西欧諸国にくらべて贈与の保護が厚いことが知られている。そしてその理由を、来栖三郎は、   

 欧大陸諸国の贈与法の基礎を為している贈与観は贈与を好意とみている。これに対して日本の贈与法の基礎を為している贈与観は贈与を義務義理乃至恩より生ずる義務とみたが故に、贈与はしようとしまいと自由だ、それをしてくれたから贈与を受けた者は贈与者に感謝すべきだということにはならない。むしろ、義務からにせよ恩からにせよ、贈与者側で贈与しなければならない義務があると意識しているからこそ贈与するのである。贈与するしないはどうでもいいのではない。だから贈与は無償だとて軽視すべきではないのである。(「日本の贈与法」)

と日欧の贈与観の違いから説明している。
 これにたいし、笠松宏至は、近世以降の社会ではこうした「なさねばならない贈与」が一般的であったことを認めつつも、中世の和与はそうではなく、やはり自発的な「好意」を出発点にしていたとみている。鎌倉幕府法や『法曹至要抄』『沙石集』など、当時の法や法書、説話集等が純粋な「志」や「芳心」を和与の法的条件として重視していることに注目しての見解だが、その一方で他人和与法を成立させていたものはモースの「第三の義務」、すなわち返礼の義務であったとも述べている。つまり受贈者は贈与がおこなわれたときから、その恩に報いるべく、贈与者にたいしてさまざまな返礼をしつづけるのだから、そのあげくに悔い返されては、それまでの報恩行為は裏切られたことになってしまう。そこに他人和与法の根拠があったのではないかと笠松は推測している。


2021/09/13 Prof. Alla Semenova - On the Nature and Origins of Money :MMT








The Foundations of Non-Equilibrium Economics
The principle of circular and cumulative causation
Edited by Sebastian Berger


12 Veblen’s cumulative causation and the origins of money
in Mesopotamia 178 ALLA SEMENOVA



32,55頁
アッラ・セメノヴァ
Semenova, A. (2011a) "The Origins of Money: Evaluating Chartalist and Metallist
Theories in the Context of Ancient Greece and Mesopotamia," A dissertation
in economics and social science, presented to the Faculty of the University of
Missouri-Kansas City.
[全228頁]
Semenova, A. (2011b) "Would You Barter with God? Why Holy Debts and Not
Profane Markets Created Money," American Journal of Economics and Sociology,
Vol. 70, Issue 2, pp. 376-400.


Would You Barter with God? Why Holy Debts and Not Profane Markets Created Money pp. 376-400
Alla Semenova


136頁
マルコム・ソーヤー 
Sawyer, M. (2005) "Employer of Last Resort: A Response to My Critics," Journal of
Economic Issues, Vol. 39, Issue 1, pp. 256-264.
有料?
…
Summers, L. H. (2019) "The Left's Embrace of Modern Monetary Theory is a
Recipe for Disaster," The Washington Post, 3/4/2019.
Tcherneva, P. R. (2007) "What Are the Relative Macroeconomic Merits and
Environmental Impacts of Direct Job Creation and Basic Income Guarantees?"
Levy Economics Institute Working Paper No. 517.


上は以下で引用、

MMT講義ノート:貨幣の起源、主権国家の原点とは何か 単行本(ソフトカバー) – 2022/6/1
島倉 原 (著)


長期停滞を解明する、新たな経済学へ

経済学において「異端派」とされるMMT(現代貨幣理論)が、現実を説明する新たな理論として幅広く受け入れられつつある。
「財政赤字や国債残高を気にするのは無意味である」というMMTの主張をめぐって、もはや「極論」や「暴論」と片付けられる段階ではない。
経済学におけるパラダイム・シフトをしっかりと見定める時期が来ているといえよう。
とりわけ、「失われた30年」とも言われる長期停滞にあえぐ日本経済を分析する「武器」として、MMTはなくてはならない道具立てである。
本書は、ランダル・レイ『MMT現代貨幣理論入門』(東洋経済新報社)を監訳し、『MMTとは何か』(角川新書)を執筆して、この新たな経済学を日本に紹介した第一人者による人気講義を書籍化したものである。
MMTが多く人を惹きつけたのは、貨幣の起源をめぐる根源的問いと時事的な現代経済論を結び付ける、その理論の全体性にある。
制度化が進み、学説や理論がますます断片化していく状況下、歴史も視野に入れてトータルに現実を説明するMMTは、経済学というディシプリンを超えて、人文・社会科学に幅広く訴える。



目次(詳細は下記アマゾンのサイトを参照)。
https://amzn.to/3N9s8g9

第1章 イントロダクション——なぜ、今MMTなのか

第2章 貨幣とは何か——MMTの貨幣論
1 商品貨幣論と債権貨幣論——貨幣の本質をめぐる論争
2 表券主義——通貨の流通メカニズムとその起源
コラム 民間銀行はなぜ預金を集めるのか

第3章 政府はなぜ財政破綻しないのか——MMTの通貨主権論


第4章 政府は何をなすべきか——MMTの経済政策論
1 MMTの租税政策論
2 機能的財政論
3 就業保証プログラム

第5章 何が長期停滞の原因か——MMTで読み解く日本経済
コラム 終戦直後のハイパーインフレはなぜ起きたのか

第6章 日本経済をどう立て直すべきか——MMTの応用と発展
本章における2つのテーマ
1 経済政策の基本方針はどうあるべきか
2 経済の長期循環と投資の社会化




【古典派 】

スミス/リカード/セイ

【新古典派 】

ジェヴォンス/ワルラス

/メンガー/マーシャル

【マネタリスト】

フリードマン

【新しい古典派】

ルーカス/サージェント

【実物的景気循環理論】

キドランド/プレスコット


貨幣観の根本的対立

マルクス

シュンペーター カレツキ

【オールド・ケインジアン】

サミュエルソン/トービン

主流派

【ニュー・ケインジアン】

マンキュー/ローマー/

スティグリッツ


直接的影響━━━→

間接的影響・・・→

クナップ (表券主義)

チェル=イネス ( 債権貨幣論)

ケインズ

【ポスト・ケインジアン】

ロビンソン / カルドア/

ラーナー/ミンスキー

【MMT(新表券主義)】

レイ/ミッチェル/

ケルトン




直接的影響━━━→

間接的影響・・・→


【古典派 】     ⇦貨幣観の根本的対立⇨   クナップ (表券主義)

スミス/リカード/セイ↘︎              ミッチェル=イネス ( 債権貨幣論)

   ↓       ↘︎                ・      ・  ┃

【新古典派 】      マルクス・・・・・・・・・・↘︎ ↓      ・  ┃

ジェヴォンス/ワルラス ・・┓・    ・        ケインズ    ・  ┃

/メンガー/マーシャル   ↓↓      ↘︎        ┃      ・  ┃

   ┃    ↘︎  シュンペーター  カレツキ↘︎↙︎   ┃      ・  ┃

………↓……………↘︎………………………………… ↙︎↘︎  ↓      ↓  ┃

【マネタリスト】   【オールド・ケインジアン】 【ポスト・ケインジアン】 ┃

フリードマン      サミュエルソン/トービン  ロビンソン / カルドア/   ┃

【新しい古典派】          ┃      ラーナー/ミンスキー    ┃

ルーカス/サージェント↘︎(主流派)  ↓          ↓        ┃

   ↓       ↘︎【ニュー・ケインジアン】  【MMT(新表券主義)】 ←┛

【実物的景気循環理論】  マンキュー/ローマー/    レイ/ミッチェル/

キドランド/プレスコット  スティグリッツ       ケルトン

………………………………………………………………


https://book.asahi.com/jinbun/article/14634442

MMT(現代貨幣理論)とは何か 経済政策のパラダイム・シフト[前篇]

現代経済をラディカルに捉え直すために! 島倉原著『MMT講義ノート 貨幣の起源、主権国家の原点とは何か』(白水社刊)は、人気講座の待望の書籍化。長期停滞を解明する、新しい経済学への入門書。
現代経済をラディカルに捉え直すために! 島倉原著『MMT講義ノート 貨幣の起源、主権国家の原点とは何か』(白水社刊)は、人気講座の待望の書籍化。長期停滞を解明する、新しい経済学への入門書。

はじめに

 MMTとは、Modern Money Theory または Modern Monetary Theoryの略称で、日本語に訳すと「現代貨幣理論」となります。MMTは、米国を中心に提唱されている、1990年代に登場した比較的新しいマクロ経済理論です。貨幣や経済政策に関するその独特な主張によって、特に2019年あたりから、世界的に注目が高まっています。

 今、「MMTは経済理論である」と述べました。ところが、国内外を問わず、著名な経済学者や政府関係者の多くがMMTを「極論」あるいは「暴論」と言って批判し、メディアの記事なども概ねそれに同調しています。MMT主唱者の多くは「ポスト・ケインジアン」という学派に属する海外の経済学者ですが、経済理論としては「異端の中の異端」という扱いを受けています。ただし、そうした批判の多くはMMTを正確に理解せずに行われており、賛成派と反対派の議論がほとんどかみ合っていないこともしばしばです。

Macroeconomics word cloud[original photo: ibreakstock – stock.adobe.com]
Macroeconomics word cloud[original photo: ibreakstock – stock.adobe.com]

 一方、かく言う私は、いわゆる経済学者ではありません。査読付き論文が経済学の専門誌に掲載された実績も一応あるので、カタカナの「エコノミスト」ぐらいは名乗ってもバチは当たらないかもしれませんが、大学では法律を勉強する法学部に在籍していました。経済学は、企業人として業界動向やマクロ経済を分析したり、個人投資家として経済や金融市場を分析したり、一評論家として経済政策をテーマとした言論活動を行ったりするために、ほとんど社会人になってから独学で身に付けたものです。

 そんな私が、MMTの包括的な入門書である『MMT現代貨幣理論入門』略して『MMT入門』を監訳し、解説書である『MMTとは何か』を執筆し、さらにはこうして大学の公開講座でMMTの講義をしている。このことを不思議に思う方もおられるかもしれません。

 しかしながら、20世紀米国の科学哲学者トーマス・クーンによれば、自然科学の歴史では、「パラダイム」と呼ばれる思考の枠組みが従来とは大きく異なる新しい理論が登場・普及する際に、従来の学問体系に縛られていない若手や、実務家も含めた新参の研究者が大きな役割を果たすのはごくありふれた現象です。このように、パラダイムが新たなものへと移り変わる現象は、「科学革命」あるいは「パラダイム・シフト」と呼ばれています。

Attractive business woman pressing a virtual button paradigm shift[original photo: Samo Trebizan – stock.adobe.com]
Attractive business woman pressing a virtual button paradigm shift[original photo: Samo Trebizan – stock.adobe.com]

 この点、その著書『富国と強兵』を通じて日本にMMTを紹介した先駆者で、主流派経済学とは一線を画した思想である「経済ナショナリズム」を専門とし、国家官僚を務めながら評論家としても活躍している中野剛志氏は、MMTの登場を、16世紀以降のヨーロッパで天動説から地動説が徐々に主流となった現象にも似た、経済学におけるパラダイム・シフトになぞらえています。また、MMT派の経済学者も、カール・マルクスやジョン・メイナード・ケインズを経済学における科学革命の先駆者としつつ、自らをその継承者と任じている節があります。

 もちろん、MMTが科学革命か否かの評価は、後世に委ねられるべきでしょう。とはいえ、私自身は、16世紀前半にコペルニクスによって提唱された地動説がケプラー、ガリレオと受け継がれて発展し、17世紀後半にニュートン力学として実を結んだように、後述する「有効需要の原理」を掲げたケインズ理論こそが科学革命の出発点であり、その中継ぎの役割を果たしているのがMMTではないかと考えています。また、仮にMMTが科学革命ではないとしても、現在の主流派経済学の前提である「古典派」「新古典派」といった非現実的な理論に代わる、経済学の新たな基礎となり得る理論であることは間違いないと思います。

 ただし、それは、MMTの主張がすべて正しいということではありません。むしろ、比較的新しい理論ということもあり、改善や発展の余地は決して少なくないでしょうし、私自身、違和感のある部分も決してないわけではありません。

 この講義では、私自身のこれまでの研究に基づいて、できる限り正確にかつ分かりやすく、MMTを解説していきたいと思います。また、MMTを私なりに改善・発展させた、いわば「MMTバージョンアップ試案」についても述べてみたいと思っています。

経済学界におけるMMTの立ち位置

 では、MMTとは、一体どのような理論なのでしょうか。まずは、経済学界におけるその立ち位置を確認しておきましょう。

 図表1-1は、経済学派のおおまかな流れを主要人物の名前とともに示しつつ、その中にMMTを位置付けたものです。ただし、説明の便宜上、すべての経済学派を網羅しているわけではありません。

 実線の矢印は直接的な影響、点線の矢印は間接的な影響を示しています。MMTと特に関係の深い人物は、太字で強調しています。

図表1-1 経済学の系譜とMMTの立ち位置
図表1-1 経済学の系譜とMMTの立ち位置

 MMTを代表する経済学者としては、『MMT入門』の著者である米国のランダル・レイ、そして2019年に日本に来日したオーストラリアのビル・ミッチェルと米国のステファニー・ケルトンを挙げています。ケルトンの著書も、『財政赤字の神話』というタイトルで、2020年に日本で翻訳出版されています。

 図表1-1の点線で囲まれている左下の一群が、20世紀半ば以降の「主流派」に属する諸学派で、いずれも19世紀後半に成立した新古典派経済学を基礎としているのが特徴です。新古典派経済学とは、すべての市場で同時に需要と供給が一致して均衡が成立する「一般均衡」を前提とした経済理論です。そして、学派によってややスタンスは異なるものの、「経済全体の活動水準は、少なくとも長期的には供給側、すなわち財やサービスを生産する者の総供給能力によって決定される」という認識に基づいて、経済政策論では総供給能力の拡大を重視する傾向があるのも主流派の特徴です。

 なお、「長期的な経済活動水準は総供給能力によって決定される」という認識は、非主流派のマルクス経済学にも共通するようです。私自身はマルクス経済学の知識が十分ではないため、ここから先はあくまで推測ですが、マルクス経済学者をはじめとしたいわゆる左派系の知識人が経済政策について語る際に、もっぱら分配の議論に終始して経済成長への関心が総じて乏しく、場合によっては成長に否定的な傾向すら見られるのは、そうした認識が根底にあるからかもしれません。

 対して、MMTが属しているのは、非主流派の一角をなす、「ポスト・ケインジアン」と呼ばれる学派です。ポスト・ケインジアンは主流派とは異なり、経済全体の活動水準を決めるのは短期的にも長期的にも需要側の「有効需要」、すなわち実際に貨幣を支払ってモノやサービスを購入する意思の大きさであると考えます。これは、20世紀前半にケインズが『雇用・利子および貨幣の一般理論』で提示した「有効需要の原理」、あるいはその前提にある「一般均衡は極めて特殊な場合にしか成立せず、新古典派経済学は非現実的である」という認識に基づいています。

 したがって、ポスト・ケインジアンは、経済政策論においても有効需要のコントロールを重視します。ポスト・ケインジアンと主流派の違いは、ケインズの『一般理論』を長期的にも成り立つ真理と見るか、全否定あるいは短期的にのみ成り立つ理論と見るかの違いといっても良いかもしれません。

ラリー・ランダル・レイ(Larry Randall Wray 1953─)[original photo: Marta Jara]
ラリー・ランダル・レイ(Larry Randall Wray 1953─)[original photo: Marta Jara]

 そして、ポスト・ケインジアンの中でも、そうしたケインズの認識の根底に存在した主流派とは異なる貨幣に対する見方、すなわち貨幣観を特に重視しているのがMMTです。MMTは、ケインズの貨幣観に強い影響を与えたゲオルグ・フリードリッヒ・クナップやアルフレッド・ミッチェル=イネスの業績にも立ち返り、「新表券主義(neo-chartalism)」と呼ばれる新たな貨幣観を打ち出しています。クナップはドイツ歴史学派に属する経済学者、イネスは英国の外交官を務めながら独自に貨幣の歴史を研究した在野の研究者です。いずれも、18世紀のアダム・スミスを源流とする主流派の貨幣観とは根本的に異なる、独自の貨幣理論を20世紀初頭に提唱した人物です。

 ところが、そんなMMTの貨幣観や、それに基づく独自の経済政策論に対しては、ポスト・ケインジアンの間でも少なからず批判があり、そのことがMMTの独自性をさらに際立たせています。冒頭で、MMTは「異端の中の異端」といった扱いを受けている、と述べたのはそのためです。

[後篇につづく]

【『MMT講義ノート──貨幣の起源、主権国家の原点とは何か』(白水社)所収「第1章 イントロダクション──なぜ、今MMTなのか」より】

島倉原『MMT講義ノート 貨幣の起源、主権国家の原点とは何か』(白水社)目次
島倉原『MMT講義ノート 貨幣の起源、主権国家の原点とは何か』(白水社)目次

16 件のコメント:



  1. 日本語で債権貨幣と言うと債券と思われるので商品貨幣と対抗できないと思います。システムとしての信用貨幣が認識されるべきです。
    単純に言葉の響きの問題です。書き言葉あるいは債権債務とセットの文脈ならいいのですが。
    そもそもMoneyはギリシアの女神なのでMoneyを貨幣と訳する時点で齟齬が生じています。西欧でMoneyは無意識裡に崇高なニュアンスを持ちます。卑近な物質ではないのです。

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  2. 日本語で債権貨幣と言うと債券と思われるので商品貨幣と対抗できないと思います。システムとしての信用貨幣が認識されるべきです。
    書き言葉あるいは債権債務とセットの文脈ならいいのですが。
    そもそもMoneyはギリシアの女神なのでMoneyを貨幣と訳する時点で齟齬が生じています。西欧でMoneyは無意識裡に崇高なニュアンスを持ちます。卑近な物質ではないのです。

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  3. 日本語で債権貨幣と言うと債券と思われるのではないでしょうか?商品貨幣の一種と受け取られるでしょう。
    そもそもMoneyはギリシアの女神なのでMoneyを貨幣と訳する時点で齟齬が生じています。
    西欧でMoneyは無意識裡に崇高なニュアンスを持ちます。卑近な物質ではないのです。

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  4. 日本語で債権貨幣と言うと債券と思われるのではないでしょうか?商品貨幣の一種と受け取られるでしょう。
    そもそもMoneyはギリシアの女神なのでMoneyを貨幣と訳する時点で齟齬が生じています。
    西欧でMoneyは無意識裡に崇高なニュアンスを持ちます。

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  5. ▽モネータとは 「マネー」の語源となった女神: 日本経済新聞
    https://www.nikkei.com/article/DGXZZO23546570W7A111C1000000/

    ▽モネータとは 「マネー」の語源となった女神
    2017年11月14日 1:30

    ローマ神話の女神「ユーノー・モネータ」をまつる神殿には貨幣鋳造所が併設、マネーの語源となった(古代ローマの貨幣)
    ▼モネータ(moneta) 英語のマネー(money)の語源となったラテン語。紀元前ローマで女神「ユーノー・モネータ」を祭る神殿に貨幣鋳造所が併設されていたのに由来する。「警告する者」「忠告する者」の意味があるとされる。
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  6. モネータ - Wikipedia
    https://ja.m.wikipedia.org/wiki/%E3%83%A2%E3%83%8D%E3%83%BC%E3%82%BF

    モネータ
    モネータ(ラテン語: Moneta)は、ローマにおけるユーノーの添え名[1]。

    モネータは「忠告する」という意味の「ラテン語: monere」が語源である[1]。

    逸話

    ユーノー・モネータ神殿は、元々ローマの強敵であったウェイイにあり、紀元前396年、英雄マルクス・フリウス・カミッルスがウェイイを陥落させた際、他の財産と共にローマへと移転させた。移転作業の際、最初は皆その神聖な神体に手を触れることを恐れたが、ある一人の若者が冗談まじりに「ユーノー様、ローマへ行きたいのではありませんか?」と語りかけ、それを聞いた他の者たちは「肯定された」「行きたいと言われた」と口々に言い合い、運び出されたという。神像は独裁官カミッルスがユーノー神の座所と定めたアウェンティーヌスの丘に置かれ、神殿が築かれた[2]。

    紀元前390年にガリア人セノネス族がローマを包囲した際には、人々はカピトーリウムの丘に立て籠もっていた。ある夜、ガリア人がカピトーリウムに夜襲をかけようと潜入してきた。歩哨も犬も気が付かなかったが、ただユーノー・モネータの神殿で飼われていた聖なるガチョウだけが敵の襲来を告げた。食料の不足する中、ローマ人はこのガチョウには手を出していなかった。このガチョウの声に、紀元前392年にユーノー神殿を完成させたマルクス・マンリウス・カピトリヌスが飛び起き、敵を撃退してローマを守り抜いたという[3]。この時の逸話が名称の起源となったとする説もある[1]。

    紀元前345年、アウルンキ人との戦争の際、時の独裁官ルキウス・フリウス・カミッルスが、戦勝祈願としてユーノー神殿の建立を誓約し、カピトーリウムにあったマンリウス・カピトリヌスの屋敷跡[注釈 1]に建設された[4]。ここには公文書が保管された[5]。

    また、その神殿内に貨幣鋳造所が置かれたため、この名は「マネー(Money)」という英語の語源となった[1]。

    注釈・出典

    注釈

    彼は後に処刑され財産も没収された
    出典

    ^ a b c d 高津春繁 『ギリシア・ローマ神話辞典』 岩波書店 1960年、290-291頁。
    リウィウス, 5.22.
    リウィウス, 5.47.1-5.
    リウィウス, 7.28.1-5.
    リウィウス, 第2巻 p.171 脚注(3).
    参考文献

    ティトゥス・リウィウス 著、岩谷智 訳 『ローマ建国以来の歴史 2』京都大学学術出版会、2016年。none
    ティトゥス・リウィウス 著、毛利晶 訳 『ローマ建国以来の歴史 3』京都大学学術出版会、2008年。
    執筆の途中です この項目は、神話に関連した書きかけの項目です。この項目を加筆・訂正などしてくださる協力者を求めています(PJ:神話/P:神話伝承)。
    「https://ja.wikipedia.org/w/index.php?title=モネータ&oldid=84361707」から取得


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  7. ・「与信する」が中国語だと「信用」になるらしいので信用という言葉を捨てるのが早すぎるのもどうかと考えます。
    ・自己雇用という概念に繋がるので「完全雇用」も捨てがたい。
    ・債権貨幣も債券と混同されると危惧します。
    ・そもそもMoneyもローマの女神の名前なので貨幣、通貨と語感がズレます。

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  8. ・「与信する」が中国語だと「信用」になるらしいので信用という言葉を捨てるのが早すぎるのもどうかと考えます。
    ・自己雇用という概念に繋がるので「完全雇用」も捨てがたい。
    ・債権貨幣も債券と混同されると危惧します。
    ・そもそもMoneyがローマの女神の名前なので貨幣、通貨と語感がズレます。

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  9. ・「与信する」が中国語だと「信用」になるらしいので信用という言葉を捨てるのが早すぎるのもどうかと考えます。
    ・自己雇用という概念に繋がるので「完全雇用」も捨てがたい。
    ・「債権貨幣」も債券と混同されると危惧します。
    ・そもそもMoneyもローマの女神由来なので貨幣、通貨と語感がズレます。

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  10. ・「与信する」が中国語だと「信用」になるらしいので信用という言葉を捨てるのが早すぎるのもどうかと考えます。
    ・自己雇用という概念に繋がるので「完全雇用」も捨てがたい。
    ・「債権貨幣」も債券と混同されると危惧します。
    ・そもそもMoneyがローマの女神由来なので貨幣、通貨と語感がズレます。

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  11. 以下箇条書き。
    ・「自己雇用」という概念に繋がるので「完全雇用」も捨てがたい。
    ・「与信」など「信用」という言葉の活用は捨てがたい。
    ・「債権貨幣」も債券と混同されると危惧される。「債務貨幣」の方が良い。
    ・そもそもMoneyがローマの女神の名前なので貨幣、通貨と語感がズレる。
    ・ポトラッチ=呪術は国家、宗教に先立つ(ただしニーチェ的懐疑より国家は自由のためにあるというスピノザ的肯定がMMTに相応しい)。
    ・島倉氏のJGPへの懐疑は地域主体性を無視していてリフレ派的一元論に堕している。

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  12. 以下箇条書き。
    ・「自己雇用」という概念に繋がるので「完全雇用」という用語も捨てがたい。
    ・「与信」など「信用」という言葉の活用も捨てがたい。
    ・「債権貨幣」も債券と混同されると危惧される。「債務貨幣」の方が良い。
    ・そもそもMoneyがローマの女神の名前なので貨幣、通貨と語感がズレる。
    ・ポトラッチ=呪術は国家、宗教に先立つ(ただしニーチェ的懐疑より国家は自由のためにあるというスピノザ的肯定がMMTに相応しい)。
    ・島倉氏のJGPへの懐疑は地域主体性を無視していてリフレ派的一元論に堕している。

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  13. 以下箇条書き。
    ・「自己雇用」という概念に繋がるので「完全雇用」という用語は捨てがたい。
    ・「与信」など「信用」という言葉の活用も捨てがたい。
    ・「債権貨幣」も債券と混同されると危惧される。「債務貨幣」の方が良い。
    ・そもそもMoneyがローマの女神の名前なので貨幣、通貨と語感がズレる。
    ・ポトラッチ=呪術は国家、宗教に先立つ(ただしニーチェ的懐疑より国家は自由のためにあるというスピノザ的肯定がMMTに相応しい)。
    ・島倉氏のJGPへの懐疑は地域主体性を無視していてリフレ派的一元論に堕している。

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  14. 以下箇条書き。
    ・「自己雇用」という概念に繋がるので「完全雇用」も捨てがたい。
    ・「与信」など「信用」という言葉の活用は捨てがたい。
    ・「債権貨幣」も債券と混同されると危惧される。「債務貨幣」の方が良い。
    ・そもそもMoneyがローマの女神の名前なので貨幣、通貨と語感がズレる。
    ・ポトラッチ=呪術は国家、宗教に先立つ(ただしニーチェ的懐疑より国家は自由のためにあるというスピノザ的肯定がMMTに相応しい)。
    ・島倉氏のJGPへの懐疑は地域主体性を無視していてリフレ派的一元論に堕している。
    ・少数が多数を支配する。マネタリーベースがマネーストックを支配する。
    債務ピラミッドは量的には正しいが質を表現していない。結果、日銀当座預金を市民が使っていると思わせてしまう。

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  15. 以下箇条書き。
    ・「自己雇用」という概念に繋がるので「完全雇用」は捨てがたい。
    ・「与信」など「信用」という言葉の活用は捨てがたい。
    ・「債権貨幣」も債券と混同されると危惧される。「債務貨幣」の方が良い。
    ・そもそもMoneyがローマの女神の名前なので貨幣、通貨と語感がズレる。
    ・ポトラッチ=呪術は国家、宗教に先立つ(ただしニーチェ的懐疑より国家は自由のためにあるというスピノザ的肯定がMMTに相応しい)。
    ・島倉氏のJGPへの懐疑は地域主体性を無視していてリフレ派的一元論に堕している。
    ・少数が多数を支配する。マネタリーベースがマネーストックを支配する。
    債務ピラミッドは量的には正しいが質を表現していない。結果、日銀当座預金を市民が使っていると思わせてしまう。

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  16. 以下箇条書き。
    ・「自己雇用」という概念に繋がるので「完全雇用」は捨てがたい。
    ・「与信」など「信用」という言葉の活用も捨てがたい。
    ・「債権貨幣」も債券と混同されると危惧される。「債務貨幣」の方が良い。
    ・そもそもMoneyがローマの女神の名前なので貨幣、通貨と語感がズレる。
    ・ポトラッチ=呪術は国家、宗教に先立つ(ただしニーチェより国家は自由のためにあるというスピノザ的肯定がMMTに相応しい)。
    ・島倉氏のJGPへの懐疑は地域主体性を無視していてリフレ派的一元論に堕している。
    ・少数が多数を支配する。マネタリーベースがマネーストックを支配する。
    債務ピラミッドは量的には正しいが質を表現していない。結果、日銀当座預金を市民が使っていると思わせてしまう。

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