2022年5月26日木曜日

日本は、世界的に見れば、まだまだ大幅「物価安」!(永濱 利廣) | 現代新書 | 講談社(3/5)

日本は、世界的に見れば、まだまだ大幅「物価安」!(永濱 利廣) | 現代新書 | 講談社(3/5)

日本は、世界的に見れば、まだまだ大幅「物価安」!

「低物価」ニッポンを分析

物価が上がったもの、下がったもの

日本の過剰貯蓄については後で詳しく見るとして、もう少しこのグラフ(図表3-2)を読んでみましょう。2013年頃から緩やかに消費者物価指数が上がっており、これをもってデフレ脱却を主張する声もあります。果たしてこの楽観的な予測は正しいのでしょうか?

それを判断するために、物価が上がったもの、下がったものの内訳を詳しく見てみます(図表3-3)。

この20年で目立って物価が上がっているのが「光熱・水道」と「食料」です。エネルギー(光熱・水道)と食料は生活必需品の最たるものであり、化石燃料はもとより、食料自給率が4割を切る日本では、ともに輸入品の割合が高くなっています。つまりこれは、輸入品の物価が上がっているということです。端的に言えば「海外に日本の所得が流出している」ことを意味し、これは「悪い物価上昇」にあたります。

一方、下がっているのは「家具・家事用品」「教養娯楽」「教育」です。「家具・家事用品」では、逆に安い海外製品が入ってくることで国内産業を圧迫し、所得の海外流出が起こっていることを意味します。テレビやパソコンなどの「教養娯楽」も同様です。

「教育」はどうでしょうか。これは価格のメインが人件費になりますから、教育分野が下がっているということは、人件費が下がっていることを意味します

いずれにせよ、物価上昇の内訳を見ると、日本国内が恩恵を受けにくいところが上がり、日本国内の人の所得につながるところでは下がっていることが明らかです。

しかし、このグローバル時代、原油高騰や安い海外製品の輸入はどこの国でも同様のはずです。なぜ日本だけ「悪い物価上昇」が進むのでしょうか。そして「良い物価上昇」を果たせている海外とは何が違うのでしょうか?

それは、海外では「サービス」の値段が上がっていることによります。サービスとは「モノのやり取りをしない経済取り引き」です。財(モノ)の取り引きでは値段の大部分は製造コストが占めることになりますが、サービスの取り引きでは基本的に、サービスを行った人の人件費が価格になるので、賃金に直結するのです。物価上昇率をモノとサービスに分けて欧米圏と比較してみると、日本ではいかにサービス価格の上昇率が低いかがわかります(図表3-4)。

「良いインフレ」「悪いインフレ」

先ほども見たとおり、ひとえに「物価上昇(インフレ)」と言っても、「良いインフレ」と「悪いインフレ」があります。

景気が良くなることで企業が物価を上げることができ、企業は収益を上げ、そこで働く人の賃金も上がり購買力が増す……この好循環をもたらすのが「良いインフレ」です。これは、「需要が供給を上回ることによる物価上昇(demand-pull inflation)」と言い換えることができます。

逆に、「悪いインフレ」とは、原料価格の値上がりなど、「生産コストの高騰による物価上昇(cost-push inflation)」を指します。

現在のように、原油や穀物の値段が上がってしまうと、企業は製造コストが上がるので価格を上げざるを得ません。しかし、単に損を減らすために上げているだけなので、企業が儲かることはなく、働く人の賃金も増えません。生活必需品ですので消費者は高い値段でも買わざるを得ませんが、それはただ所得が海外へ流出しているだけで、国内には恩恵がありません。こういう物価上昇が「悪いインフレ」なのです。

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