2-2-1.貨幣需要(ケインズ派)
(学習の目的)
ケインズ派の貨幣需要に対する考え方である「流動性選好説」をまなびます。
(→ 古典派の貨幣需要はこちら)
ケインズ派の貨幣需要(マクロ2貨幣市場)5 [7:15]
ケインズ派の貨幣需要
- ケインズ派は、貨幣需要の動機として、「取引動機」、「予備的動機」、「投機的動機」の3つを考えます。
- 「投機的動機」を考慮に入れる点が古典派との違いです。
ケインズ派の「流動性選好説」
- ケインズ派の貨幣需要に対する考え方は、「流動性選好説」とよばれます。
- 「流動性」とは「貨幣」のことです。
- 「債券」と異なって貨幣は現金として持っていても利息はつきません。
- でも、財と交換しやすいという便利さがあります。
- この交換の「しやすさ」が「流動性」ということばの意味です。
- この便利さを犠牲にして、債券を購入すると、代わりに得られるものがあります。
- それが「利子率」です。
かんたんにいうと、流動性選好説とは「資産を貨幣で持つか、債券で持つかは、利子率によって決まる」という考え方です。
取引動機と予備的動機
- 取引動機と予備的動機については、ケインズ派と古典派は考え方が共通しております。
- この2つについては、貨幣需要は「国民所得の増加関数」と仮定します。
- これは、国民所得が増えれば、取引も増えるので、それに使われる貨幣に対する需要も増えるということです。
投機的動機
ケインズ派は、投機的動機の貨幣需要は「利子率の減少関数」と仮定します。
- この利子率は「市場利子率」です。
- かんたんにいえば、金融機関でお金を貸し借りするときの利子率です。
- 「減少関数」とは、反比例のことです。
- つまり、利子率が下がると貨幣需要は増加し、利子率が上ると貨幣需要が減少するということを表しています。
なぜそう考えるかについては、「債券価格」について説明する必要があります。
債券価格と利子率の関係
- 「債券」には利息がつきます。
- この利息が高いか低いかは、「貨幣」をやりとりする場合の「利子率」と比較する必要があります。
- つまり、債券の価値(債券価格)は、利子率によって決まるということです。
この「債券価格」は「利子率の減少関数」になります。
【再掲】債券価格と利子率(マクロ2貨幣市場)2 [5:47]
- このことを正確に説明するには、「割引現在価値」という考え方と数列の知識をつかう必要があるので少々やっかいです。
- ここではかんたんに次のように考えましょう。
- 利子率が高い状態とは、貨幣に人気がある状態です。
- 一方で、債券の人気は下がります。
- よって債券価格も低下することになります。
利子率の動きと債券価格の動きが反対になっているので「減少関数」ということになります。
貨幣需要と利子率の関係
- この「債券価格と利子率」の関係を、さきほどの「貨幣需要」にあてはめてみましょう。
- 利子率が下落した場合を考えます。
- 「債券価格は利子率の減少関数」ですので、この場合、債券価格は上昇します。
- 債券価格が上昇すると、債券を欲しがるように思えますが、そうではありません。
- 債券価格が上昇したのをみて人々は、こう考えます。
- 「債券価格がこんなに上ってしまったら、今更買っても、儲けは見込めないな。資産は貨幣で持っていよう。」
- つまり、利子率が下落すると、貨幣需要が増加することになるのです。
利子率の動きと貨幣需要の動きが反対になっているので「減少関数」ということになります。
(学習の目的)
貨幣が貨幣を生み出すプロセスをまなびます。
信用創造
- 「貨幣」にはまず、コインやお札などの「現金」があります。
- この他に、金融機関に預けた「預金」も貨幣に含まれます。
- この預金は新たに貸し出されて世の中に出回ります。これが繰り返されます。
よって、初めに受け入れた「預金」の何倍もの「派生的預金」が、世の中に発生することになります。
- これを「信用創造」といいます。
- 金融システムは信用によって成り立っています。
- われわれが銀行にお金を預けるのは、「いつでも引き出せる」からです。
- いつでも引き出せるから、今は預けておくのです。
- この信用が崩れてしまったら、金融システムは瞬く間に崩壊するでしょう。
支払準備率
- 金融機関は、支払いに備えて、預金の一部を手もとに置いておきます。
- これを「準備金」といいます。
- 金融システムを守るために、政府や中央銀行などの金融当局は「支払準備率」を定めます。
「支払準備率」とは、金融機関が「預金」のうち支払の準備として残しておくべき比率を示しております(法定準備率、預金準備率ともいいます)。
- 中央銀行はこの「支払準備率」を上げ下げすることによって、貨幣の供給量(マネー・サプライ)を操作することができます。
預金総額
- 初めに受け入れた預金(Deposit)を「本源的預金」といいます。
- ここでは「d」であらわすことにします。
- 「支払準備率」(reserve requirement ratio)を「r」とします。
「預金総額」(D)は次の形になります。
D = d/r
続いて、「中央銀行」が貨幣供給量をコントロールするプロセスをみていきましょう。
ハイパワード・マネー
- 中央銀行は、すべてのお金をコントロールできるわけではありません。
- 自分たちがコントロールできるものを通して、金融市場を調整しようとするのです。
このように中央銀行が直接コントロールできる貨幣量のことを「ハイパワード・マネー」(H)とよびます。
ハイパワード・マネーを式であらわすと次の形になります。
H = 現金通貨(C) + 準備金(R)
- 「現金通貨」はお札などの現金です。
- これは中央銀行以外が発行すると偽札になってしまいますので、中央銀行が直接コントロールできるお金です。
- これに対して「預金」は、「信用創造」のプロセスがありますので、全部をコントロールすることはできません。
- 「支払準備率」を通じて、「準備金」の量を調整することでコントロールしていきます。
マネー・サプライ
世の中全体に出回っているお金は「マネー・サプライ」(M)としてあらわします。式で表すと次の形になります。
M = 現金通貨(C) + 預金通貨(D)
- 「現金通貨」は「ハイパワード・マネー」のときと同じです。
- これに、世の中に出回っている「預金」を足したものが「マネー・サプライ」(M)になります。
- この「預金」も「お金」(マネー)なので「預金通貨」と表現します。
貨幣乗数
- 中央銀行は、「ハイパワード・マネー」(H)を変化させて、「マネー・サプライ」(M)全体を変化させようとします。
- このとき、「どれだけ変化するか」を表したものが「貨幣乗数」になります。
「貨幣乗数」とは、「ハイパワード・マネー」(H)を1単位増加させたときの「マネー・サプライ」(M)の増加分のことです。
「貨幣乗数」を「m」で表すと式は次の形になります。
M = mH
- この式に、さきほどの「H=C+R」と「M=C+D」を代入して、いろいろと変形させると、いくつかの金融政策について説明できます(ここでは保留しておきます)。
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