2023年12月21日木曜日

資本主義は私たちをなぜ幸せにしないのか (ちくま新書) 電子書籍: ナンシー・フレイザー, 江口泰子: Kindleストア


2023年10月15日に日本でレビュー済み
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「経済システムとしての資本主義は、実は資本主義システムが自ら生み出すことができず、消費してしまえば補填することもできないものに、全面的に依存している。それをフレーザーは資本主義的な「生産をなり立たせる可能性の条件」(第1章『マルクスによる資本主義を規定する特徴』)と呼び、価値増殖を目的とする資本主義経済活動とその外部にありながらそれを支える『可能性の条件』をひっくるめて『制度化された社会秩序』と見なし、その全体を『資本主義社会」と定義する。
『可能性の条件』の具体的な内容は次の四つのものとされる。(1)すなわち、『搾取』ですらなく『収奪』される、その多くがグローバルサウスに住む人々。また、周知のように、そうした人々が、『北半球』の国々で、その国の国民の誰も従事しようとしない低賃金で劣悪な仕事に従事することも多い。いずれの場合でも、極端な低賃金や危険が『容認される/容認されない』の線引きは、人種差別的なものと言うほかない(2)次に、市場に労働力を供給するというきわめて重大な役割を担っているにもかかわらず、その対価を不十分にしか、あるいはまったく支払われない再生産労働に従事する人々。この立場を割り振られてきたのは圧倒的に女性が多いことは、フェミニズムが明らかにしてきた通りだ。(3)そして、自然環境である。自然は資本の価値増殖運動のためにそこから天然資源を容赦なく掘り出す対象であると同時に、経済活動によって生じた大量の廃物を捨てる場所となる。(4)最後に、国家・公的権力である。標準的経済学のそうていはそれを捨象してしまうのだが、資本主義経済活動は公的権力による治安の維持、法の執行、そして制度の整備なしには成り立たない。言い換えれば、資本主義は自律的ではない。
この四つの『生産を成り立たせる可能性の条件を、資本主義のシステムは自前で揃えることができない。言い換えれば、資本主義はこれらの条件の上で、これらの条件から一方的な収奪を行うことによってのみ、価値増殖の運動を続けることが出来るのだ。つまり、資本主義は『つねに私たちの存在の基盤を喰い荒ら』ししている。」

上記はこの評論を読んだ、解説の白井さんの文章ですが、この評論の簡にして要を得た内容だと思いました。

人々の労働力が搾取、収奪され本来は支払わなければならないケア労働やその他の仕事がロハになっていたり、森林の伐採によってコロナ菌をもっていたコウモリが人のいる所に出てきた性でパンデミックになったりと、資本主義の行き詰まりや資本主義以降の新しい社会主義を模索した内容になっていると思いました。

よく立法の仕事の人が、全員平等に幸福を追求するとなると、共産主義になる性か、「最大多数の幸福を目指す」と仰いますが、多数の人が幸福になると、皺寄せで不幸になる人が出てるというのが資本主義の前提だったそうで、20世紀が共産主義と資本主義の実験で、どちらもあまり巧くいかなかった様な印象をうけました。

卑小な体験ですが、学生時代給食で菓子パンが出ると、誰かがガメて、皺寄せで食えない事がありまして、後になってそれが資本主義の本質だと理解しました(かといって、共産主義を信奉している訳でもないですが)。

中にも少し出てきますがギリシャの経済破綻で、緊縮財政を押し付けられた事に関しては、その頃ギリシャで蔵相をしていたバルファキスという方が「黒い匣」という蔵相時代の回顧録に詳述されているので、一読をお奨めしておきます。

資本主義の本質に迫った評論。必読。

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