2023年6月21日水曜日

「エレファント・カーブ」

3頭のゾウとSDGsの話 - オルタナ

3頭のゾウとSDGsの話

編集長コラム

今日は「ゾウとSDGs」の話です。

といっても、「野生のアフリカゾウは、この100年で3%にまで減少した」とか「象牙の取引が禁止されたのにも関わらず、まだ売られている」というリアルの話ではなく(それはそれで重要ですが)、「架空のゾウ」の話です。

「1頭目」は、世界銀行の主任エコノミストを20年間務めた経済学者のブランコ・ミラノヴィッチ・ニューヨーク市立大学大学院客員教授が2012年に発表した「エレファント・カーブ」のゾウです。(オルタナ編集長=森 摂)

ミラノヴィッチ氏のエレファント・カーブ オルタナ森作成 

このグラフでは、1988年から2008年までの20年間で、先進国の高所得者層(A)と、中国など新興国の中間層の所得(B)が急増した一方で、先進国の中所得者層(C)は減っていることを表したものです。

(A)が高く上げたゾウの鼻を、(B)がゾウの背中を、そして(C)はゾウの口元に見えるため、「エレファント・カーブ」の名前が付きました。

この20年間、日本や米国、欧州の中間層はほとんど伸びなかったのです。これが米国社会の分断や、英国のEU離脱を招きました。日本でも所得格差の問題が年ごとに問題になっています。

所得格差の問題は、グローバル化の波を受けた新興国にも及びます。特にコーヒーやカカオ、バナナ、パーム油、ゴムなど熱帯で採れる農作物の収穫従事で、児童労働や強制労働が指摘されていました。エレファント・カーブに記述はありませんが、さしずめ、ダラリと下がったゾウの尻尾でしょう。

こうした状況は看過できないとして、国連のコフィ・アナン事務総長(当時)が1999年1月、世界経済フォーラム(ダボス会議)で、SDGsの前身であるMDGs(ミレニアム開発目標)を提案したのです。MDGsは2000年に始動し、2015年を目標年にしました。その後継がSDGsなのです。

アナンさんはダボス会議で、グローバル企業の経営者にこう呼び掛けました。「皆さんにお願いしたいのは、皆さんの企業やネットワークを使って、気候変動や人権(特に途上国の児童労働)など世界の社会課題解決に取り組み、支援し、それを皆さんのコア・バリューにして欲しいのです」。

アナンさんは企業やビジネスの力を使って、グローバル規模の社会・環境課題を解決しようとしました。しかし、現時点で、格差問題は解決したとは言えません。

環境問題ではその後、2015年のパリ協定で今世紀後半の脱炭素が明示されました。今年10月、日本も菅首相が遅ればせながら「2050年カーボン実質ゼロ」を表明しましたが、実行はこれからです。

「2頭目のゾウ」は「黒いゾウ」(ブラックエレファント)で、米国のジャーナリストであるトーマス・フリードマン氏が2016年の著書「遅刻してくれて、有難う」で使った言葉です。

ゾウがゆっくりとやって来るように、「いつかは起きるのが明白な問題を放置し、大きな被害が起こること」を指します。事前予測が困難な「ブラックスワン」とは別の形の、大きなリスクです。

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