2022年2月10日木曜日

2021/05 危機説VS楽観論、「国の借金」1200兆円でバトル【けいざい百景】:時事ドットコム

危機説VS楽観論、「国の借金」1200兆円でバトル【けいざい百景】:時事ドットコム

危機説VS楽観論、「国の借金」1200兆円でバトル【けいざい百景】

債務増でも「健全」主張

 02年に米国の大手格付け会社が日本国債の格付けを引き下げた際、財務省は黒田東彦財務官(現日銀総裁)の名前で書簡を出し、「先進国の自国通貨建て国債のデフォルト(債務不履行)は考えられない」と反論。当時、書簡を携えて格付け会社への説明に回ったのが、財務省からニューヨーク総領事館に出向していた本田悦朗元内閣官房参与だ。

 本田氏は積極的な金融緩和で緩やかな物価上昇を目指す「リフレ派」の論客で、経済政策のブレーンとして安倍晋三前首相を支えた。本田氏は経済成長率が金利より高い状態を維持すれば、PBが黒字化しなくても債務対GDP比の上昇を回避できると主張。超低金利が続く今は「財政出動の最大のチャンスだ」として、企業の存続支援やデジタル化推進、防災対策などへの積極支出を唱えている。

 かつて年10兆円を超えていた国の利払い費は、近年8兆円前後で推移している。本田氏は「債務残高が増えても利払いの負担は増えていない。財政は健全に運営されている」と説明。PB黒字化のため財政を引き締めれば、「名目GDPや税収が上がらず、かえってマイナスになる恐れもある」と説く。消費税増税には「成長を阻害する」と強く反対する。

 「日本に財政問題は存在しない」と明言するのは、税理士でもある自民党の西田昌司参院議員。西田氏は、近年注目を集める学説「現代貨幣理論(MMT)」を支持している。MMTの主張によると、日本のように自国通貨建ての国債を発行している国は、通貨を自由に発行して返済に充てることができる。財政破綻の懸念はなく、過度なインフレが起きない限り財政出動が可能だとする。

 西田氏は「均衡財政が正しく、税収以上にお金を使うのは悪いというのは思い込みだ」と財務省を批判。「かつてもっと財政出動をしていれば日本はデフレ化しなかった」と語る。日本では戦後にハイパーインフレが起こったが、原因は国債の乱発ではなく、戦災による供給能力低下だと指摘する。「今は考えようによってはコロナとの戦争だ。勝ち抜くために徹底して財政出動をしなくてはいけない」と力説し、「企業の倒産・廃業で経済が縮小しないよう、国が率先して需要をつくるべきだ」と訴えている。

 危機説と楽観論の隔たりは大きい。債務の膨張により、日本の財政は金利変動に対して脆弱(ぜいじゃく)な構造になっているが、持続可能性に関する国民的な議論も盛り上がっているとは言い難い。こうした中、22年度からは団塊の世代が75歳以上の後期高齢者になり始め、歳出の3割を占める社会保障費の増加が加速する見込み。自民党財政再建推進本部の小委員会(小渕優子委員長)は5月の中間報告で「構造的な課題が最も深刻化するのはこれからだ」と危機感を示し、社会保障の歳出改革を急ぐよう求めた。

 同友会の試算を担当したリコー経済社会研究所の神津多可思所長は「いろいろな世代が(財政を)わがこととして理解することが大事だ」と話す。将来にわたり債務と直面する若い世代や、社会保障改革で負担が増す高齢世代、納税して国を支える現役世代。それぞれの利害は食い違い、着地点を見いだすのは難しいが、幅広い層を巻き込んだ議論が必要な時期が来ている。

 【略歴】

 赤間央 経済部編集委員。日銀、首相官邸、経済産業省、自動車業界などの取材を経て2020年7月から財務省担当。(2021年5月19日掲載)

0 件のコメント:

コメントを投稿